公正な人材募集・斡旋
募集・斡旋手数料及び関連費用の確定専門家会議
ILOの推計では、労働の強要によって関係者が不当に得ている利益は、210億ドル近くに達しているとされます。このうち、所定の賃金額の不払分が196億ドルで、残りの14億ドルは募集・斡旋手数料の違法請求によるものと見られます。ILOの基準は労働者による職業紹介その他の雇用関連サービスの無料利用を原則としていますが、何が募集・斡旋手数料及び関連費用を構成するかに関しては明確ではありません。
持続可能な開発目標(SDG)のターゲット10.7は、計画に基づきよく管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進することを目指しています。この進捗状況を測定する指標として、募集・斡旋手数料及び関連費用に関する合意が緊急に求められています。さらに、2018年12月に国連で採択されると見込まれる「安全かつ規則的で秩序ある移住のためのグローバル・コンパクト」にも、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保する条件の保護や、移民労働者に対する募集・斡旋手数料及び関連費用の請求や負担転嫁の禁止を求める規定が盛り込まれる予定です。
また、2016年9月に開かれたILOの公正な人材募集・斡旋に関する手引きの策定三者構成専門家会議は「公正な募集・斡旋のための一般原則と実務指針」を採択しましたが、議論の過程で手数料・費用の定義に関する国際的な合意が存在しないことが指摘され、ILOは今後、その正確化を図る活動を行うこととされました。2017年6月のILO総会で行われた労働力移動に関する一般討議の結論でも、これを受けて、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のターゲット10.7に基づき、募集・斡旋関連費用を測定する方法論の策定・試験に向けた取り組みを行い、募集・斡旋手数料及び関連費用の定義に関する作業を進めることをILO事務局に対して求めています。
今回の会議には政労使各側8人の専門家が出席し、募集・斡旋手数料及び関連費用の定義に関して合意に至ることを目指して話し合いを行います。会議の背景資料として、国際比較研究をもとにまとめた報告書が準備されています。報告書は国際労働基準や各国の法・政策、企業、労働組合、その他の関係者によるイニシアチブ、二国間協定で募集・斡旋手数料及び関連費用が扱われている状況と定義を記した上で、定義案を示しています。提案されている定義は、それが課されるあるいは徴収される方法、時期、場所を問わず、そしてまた、賃金からの控除、賃金あるいは利権付与による払い戻し、募集・斡旋に関連した送金、使用者あるいは第三者(代理人、人材募集・斡旋業者、人材企業、使用者の子会社・関連会社、以上のような主体の何らかの代理人あるいは従業員を含むがこれに限定されない。)による徴収のいずれの手段をとろうと無関係に、労働者が雇用を確保するために募集・斡旋過程で負担するあらゆる料金、手数料、費用、金融債務を指すものとしています。
詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
◎募集・斡旋手数料及び関連費用の確定専門家会議