専門家会議:公務

救急公務におけるディーセント・ワーク指針採択専門家会議

 経済、社会、保安環境の変化は救急公務のサービスの向上を要請しています。十分な訓練を受けて適切な資金・資源が提供された労働者が質の高いサービス、すなわち、共同体の様々な部分のニーズに応える効果的なサービスで、提供者の側の高い倫理的行動基準を特徴とする業務を提供できるよう、救急公務には十分な財源が確保されるべきです。この不確実な時代においてますます高まる生命と財産に対する脅威に対応している最前線の救急公務労働者が果たす貴重な役割が認識される必要があります。

 そのためには、質の高いサービスの設計と提供を確保する助けになる質の高い労働条件が達成されるように、救急公務に携わる全ての労働者が1998年の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に従い、就労に係わる基本的な権利を実効的に行使できる必要があります。効果的なサービスのための条件を決定する上で効果的な発言力のカギを握るのは上記の宣言に基づいた社会対話の仕組みであり、救急公務に携わる人々と使用者の間にそのような仕組みが存在しない場合にはその構築が求められます。

 このような考えに基づき、ILOは2003年に合同会議を開いて救急公務の社会対話に関する指針を採択しました。しかし、非常事態の発生頻度と複雑さの増大はますます多様な救急公務労働者が困難な極限状態で人命や財産の救出に携わることを要請するようになってきています。そこで、このような環境の変化に加え、持続可能な開発目標や「2017年の平和と強靱性のための雇用とディーセント・ワーク勧告(第205号、仮称)」といった2003年以降に採択された文書を反映する形で2003年の指針を改定することが決定されました。

 この会議には日本を含む8カ国の政府側専門家、労使各側各8人の専門家が出席し、指針の改定に向けて話し合います。

 救急公務に携わる人々に、非常事態に効果的に応えることができるために十分な手段、ツール、財源を提供することを目指して事務局が準備した指針案は、適用範囲や定義などを含む導入部に続き、第2部で救急公務労働者にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保するための措置を、就労に係わる基本的な原則と権利、雇用と多様性、労働条件、労働安全衛生と負傷からの保護、業務に関連した傷病時の社会的保護措置の5分野に分けて提案し、第3部ではそのための行動手段として、社会対話、訓練、モニタリングと評価、危機対応に参加するボランティア活動者の特例、救急公務における調整と協力について規定しています。付録として、救急公務に関連したILO条約、勧告、実施基準の一覧が付されています。

 ここで救急サービスとは、「現場及び現場外で大規模災害とその結果を扱う任に当たる外部機関」と定義され、救急公務には、警察、消防、救急医療、捜索・救援、その他軍隊や保安・監視業務、不発弾処理班、地元自治体、死体安置・遺体処理業務、水道・電源供給回復担当業務といった非常事態時に通常対応を求められるサービス、そして個々のニーズや国の状況に応じてソーシャルワーカーのような関連する専門職業が含まれるとし、その範囲は各国に委ねるとしています。放射線からの保護やボランティア休暇、ストレスや暴力なども取り上げ、政府に対しては危機対応における労使団体の貴重な役割を認めることなどが提案されています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
救急公務におけるディーセント・ワーク指針採択専門家会議