ILO統治機構

第332回理事会

 年3回開かれる理事会の定期会合。政府側28人、労使各側14人の計56人の正理事と、政府側28人、労使各側19人の計66人の副理事で構成。議題は以下の分野別部会に分けて審議されます。

  • 結社の自由委員会報告や事務局長報告などの報告事項、憲章上の義務を含む国際労働機関及び事務局の機能に係わる事項、緊急の問題などを処理する制度機構部会
  • 雇用・社会的保護部門、多国籍企業部門、社会対話部門、開発協力部門の4分野から成る政策開発部会
  • 法務部門と国際労働基準・人権部門の2分野から成る法務・国際労働基準部会
  • 計画・財政・管理部門、人事部門、監査・監督部門の3分野から成る計画・財政・管理部会
  • 戦略的政策部門やグローバル化の社会的側面作業部会など、戦略的に重要な事項に関する話し合いの場として必要に応じて開催されるハイレベル部会
  • 2008年の総会で採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」に基づき理事会・総会の機能改善を検討する場として当面開催される理事会・総会機能作業部会

 第332回ILO理事会の主な達成事項は以下の通り。

 1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)及び1976年の三者の間の協議(国際労働基準)条約(第144号)の適用状況に関する苦情ILO憲章第26条に基づき申し立てられているベネズエラに関しては、この苦情を審議する審査委員会の設置を決定しました。この苦情は、同国の使用者団体であるベネズエラ商業会議所製造業者協会連盟(FEDECAMARAS)並びにその指導者及び加盟団体に対して評判をおとしめるキャンペーンや攻撃、嫌がらせなどが実施されていることを内容とするものです。ILOで最高位の調査手続きである審査委員会発動の決定に至るに際し、理事会は2017年11月の前会期で派遣が提案されていたハイレベル視察団が議題に対する政府の反対から実現しなかったことに遺憾の意を表し、理事会の過去の決定や勧告に関して何の進展もなかったこと、とりわけ全ての懸案事項の解決に向けて社会対話を醸成するために政労使のみならず、ILOの代表も加えた三者構成の円卓会議を設置する提案が受け入れられなかったことに対し、深い懸念を表明しました。

 3人の独立したメンバーで構成される審査委員会は、申立内容を徹底的に調査し、あらゆる事実を確認し、講じるべき措置に関する勧告を行うことを任務としています。2008年11月に設置され、ジンバブエの結社の自由と団体交渉権の問題を扱った委員会に続くILO史上13番目の委員会になります。

 同じく憲章第26条に基づき、2012年の第101回ILO総会の複数の労働者側代表から第87号条約の適用状況に関する苦情が申し立てられているグアテマラに関しては、2017年11月に達成された政労使の全国的な合意の実施における相当の前進とこの点で見られる努力に十分留意し、懸案事項の解決に向けた全国協約と合意された行程表の完全な実施の達成に必要なあらゆる努力と資源・資金を傾け続けることを全ての関係当事者に呼びかけました。理事会は2018年6月の次期会期においても進展状況のモニタリングを続ける予定です。

 3月19日にはアミナ・モハメド国連副事務総長の参加も得て、国連改革とそれがILOにとって持つ意味に関する話し合いがもたれ、3時間にわたる意見交換が行われました。

 また、仕事の未来世界委員会の活動に関する説明会も開かれ、仕事の世界に今後影響を与えるであろう主な事項について複数の委員から説明を受けました。

 ミャンマーの強制労働問題に関しては、相当の進歩が達成されたことに留意し、労働法改革プロセスへの従事と結社の自由の促進を政府に求めつつ、2017年11月の理事会前会期で決定された、理事会各会期で強制労働案件に関する報告を継続的に行う必要はもはやないとしました。

 さらに、2017年11月にブエノスアイレスで開かれた「第4回児童労働の持続的な撤廃世界会議」のフォローアップ討議を行い、2021年を児童労働撤廃国際年と宣言することを国連総会に働きかけることなどを決定しました

 2019年の100周年記念総会の議題に関しては、今年の総会で行われる仕事の世界における男女に対する暴力と嫌がらせに関する基準設定議題の第2次討議は行うものの、主として仕事の未来をはじめとした100周年記念イニシアチブに焦点を当てることとしました。

 この他に、ILOの南南・三角協力とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、促進活動や情報収集の仕組みなどからなる「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」のフォローアップの仕組みの点検2018~21年の成果主義評価戦略などの議題を検討し、本部建物改修プロジェクトなどに関する決定を下しました。

 理事会は最後の2日間、国際人事委員会(ICSC)の第85回会期で下されたジュネーブの任地調整指数に関する決定に従って適用された国連職員の給与引き下げをILOの専門職以上の職員にも適用すべきかどうかの話し合いを行いました。この手続きと指数決定の元となった2016年の生計費調査結果に対しては深刻な懸念が提起され、理事会は国連職員連合の全面的な関与の下、社会対話の基本原則を尊重しつつ、任地調整その他の給与調査方法論の改革を目指し、ICSCへの積極的な関与を続けるようILO事務局に要請しました。ILO及びその職員が国連の共通給与体系から離脱することには長期的なリスクがあるため、ICSCの決定に関連する懸念はあるものの、ジュネーブの国連事務局その他専門機関の専門職以上の職員に既に適用されている手取額で5.1%の減額がILOの職員についても適用されることになりました。このうち、3%は2018年4月1日から、残りの2.1%は2018年6月1日から適用されます。

 かかる状況からILOの職員組合がストを決行し、理事会が予定より早く閉会になったため、たばこ産業部門のディーセント・ワーク不足に取り組む戦略案やILOの国際労働基準適用監視機構強化のための作業計画など、複数の議題が先送りになりました。


詳しくは理事会のウェブサイト(英語)へ---->
第332回理事会の議題・討議資料