労働統計

第20回国際労働統計家会議専門家準備会合

 2018年10月に開かれる第20回国際労働統計家会議には各国から労働統計の専門家が出席し、労働統計に関する国際基準について勧告を行うことを目指して話し合いを行うと共に2013年に開かれた第19回会議以降に生じた統計分野の主な展開を検討します。

 議題の一つとして、1993年に採択された「従業上の地位国際分類(ICSE-93)」を含む労働関係に関する統計の改定が予定されています。これについては主として各国の統計局と労使団体の代表で構成される作業部会を設けて2014年から検討が続けられてきましたが、この専門家会合には、チリ、インドネシア、スイス、ヨルダン、南アフリカなど12カ国の政府側専門家と労使各側6人の専門家が出席し、事務局の準備した討議資料をたたき台に、会議で検討される決議案の起草を目指して話し合いを行います。

 第19回会議では、労働市場の最新の動きをより良く考慮に入れるよう、現行の「従業上の地位国際分類」を改正する必要性について合意が達成され、全会一致でその検討が支持されました。

 従業上の地位とは業務遂行に係わる契約上の取り決めを反映するものであるため、従業上の地位が不明確な従属労働者についてのものを中心に、多くの国で起こりつつある変化を追う重要な手段の一つとなります。今回の改定は、新たに登場しつつある非標準的な就労形態も考慮に入れたものとなる予定です。

 従業上の地位で労働者を分類しようとの最初の国際的な一歩を踏み出したのは、1938年に開かれた国際連盟の統計専門家委員会で、就業人口を「使用者」、「雇用者のいない自営業主(いわゆる個人事業主)」、「無給の家族従業者」、「有給雇用者」の四つの従業上の地位に分類することが提案されました。その後、1947年の第6回国際労働統計家会議と1954年の第8回国際労働統計家会議でも同じ四つのカテゴリー分類が提案されました。1950年に国連人口委員会はこれらのカテゴリーについて標準的な定義を採択しました。その後、1958年に国連統計委員会の承認した人口センサスに関する勧告においてさらなるグループとして「生産者協同組合の組合員」が追加されました。

 1993年に開かれた第15回国際労働統計家会議は、ICSE-93として知られる従業上の地位国際分類(ICSE)に関する決議を採択しました。これは、統計調査で測定する際または他の官庁ファイルに登録する際に「特定の仕事を遂行する際にある人が他の人または団体と結ぶ契約の種類」による分類を可能にするものです。契約の種類は、仕事の課題及び業務遂行時の経済的なリスクとそれに伴う権限の種類によって決定されます。ICSE-93は以下の六つのグループで構成されています。

  • 雇用者(employees):使用者の収入に直接左右されない基本的な報酬を受ける人々。この中で、正規職員・従業員を含む安定した契約を有する雇用者を区別する必要があるかもしれません。
  • 使用者(employers):自営の仕事を有し(つまり、自らの報酬が生産された商品及びサービスから派生する(期待される)利潤に直接左右される人々)、一人または複数の雇用者を継続的に雇う人々。
  • 個人事業主として働く人々(own-account workers):雇用者を継続的に雇っていない自営業主。
  • 生産者協同組合の組合員(members of producers' cooperatives):商品及びサービスを生産し、構成員が平等な立場で主な決定を行う協同組合において自営業主として働く人々。
  • 寄与的家族従業者(contributing family workers):縁者が経営する事業所で自営業主として働いているが、パートナーと考えられるには経営への関与度合いがあまりにも限定的な人々。
  • 地位による分類が不能な労働者(workers not classifiable by status):得られる情報が不十分であるか、先のどのカテゴリーにも当てはまらないか、その両方である人々。

 このISCE-93の分類方法では、多くの国で起こりつつある就労取り決めにおける変化を監視するのに十分な情報が提供されず、派遣や請負、呼び出し労働など、様々な非標準的な就労形態をモニタリングできるほどに詳細でないことなどが指摘されています。また、労働市場における柔軟性を高める目的で生じている様々な新しい非標準的な取り決めは、多くが企業から労働者への経済的なリスクの移転を伴い、自営と給与・賃金労働との境を曖昧にする方向に向かっていますが、こういった取り決めが労働者や労働市場の機能に与える影響を監視する統計情報の必要性も生まれています。

 そこで、非標準的な就労形態の成長に関する、より包括的で国際比較可能な統計の提供を支えるような提案をまとめることを主眼として、ISCE-93の改正が検討されます。提案されている決議案は、幅広い懸念事項に対処するため、ICSE-93を一連の統計基準・分類で置き換えることを提案しています。この中心となるのは、従業上の地位国際分類の改定であり、「従属的な労使関係の一部をなす、期間の定めのない、フルタイムで公式の仕事」に関する標準的な就労取り決めの枠外にある非標準的な就労取り決めの下で働く人をより良く特定でき、自営業と賃金・給与労働との境界の曖昧化及び従属的な自営業の増加という懸念に対処できるよう、権限の種類によって独立労働者と従属労働者、経済的リスクの種類によって、報酬が従業する経済単位の損益に直接左右される従業者と労働時間や生産物に応じた報酬を受け取る従業者にそれぞれ大別した上で、法人使用者や個人事業主、従属請負労働者、有給研修生など10種類に分類することが提案されています。さらに、就労上の地位国際分類として、無給労働やボランティア労働なども含み、あらゆる労働形態のあらゆる職務、勤労活動を網羅する統計の整備も提案されています。

 『労働関係統計』と題する討議資料(英語)は、第1章で背景情報をまとめた上で、第2章で提案されている分類・統計変数を下支えする概念枠組みとモデル、第3章で従業上の地位国際分類の改正案、第4章で新たに提案されている就労上の地位国際分類、第5章で横断的な変数、第6章でデータ源と今後の活動と、5章にわたって提案されている決議案の内容を詳しく説明しています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
第20回国際労働統計家会議専門家準備会合