輸出加工区

輸出加工区労働者のディーセント・ワーク促進並びに就労に係わる基本的な権利及び原則の保護専門家会議

 外国からの直接投資と輸出を促進するために政策的に設けられた工業地帯である輸出加工区では、しばしば労働法の適用や課税が免除され、労働組合活動や団体交渉に制限が課されています。ILOが行った最も新しい包括的な調査は2006年のものですが、当時、世界全体でその数は3,500を数えました(バングラデシュの単一工場輸出加工区5,341を除く)。国連貿易開発会議(UNCTAD)は2015年の推定値として4,500超の数字を挙げています。輸出加工区の姿は均一でなく、その特徴は多岐にわたりますが、一般に長時間労働、残業の強制、賃金差別がよく見られます。

 2016年の第105回ILO総会で行われたグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を巡る一般討議では、グローバル・サプライチェーンに接合した相当数の輸出加工区でディーセント・ワークの欠如が顕著であることが指摘され、就労に係わる基本的な原則と権利は輸出加工区を含むすべての場所で適用されるべきと説く結論が採択されました。総会の議論をフォローアップするものとして、ILOは輸出加工区の労働者の就労に係わる基本的な原則と権利を保護し、ディーセント・ワークを促進するような行動計画の採択を検討するよう求められました。

 これを受けて開かれたこの会議には、任命された政労使各側8人の専門家のうち、政府側及び使用者側からは各7人、労働者側からは全員が参加し、事務局の準備した討議資料をたたき台に、輸出加工区の労働者のディーセント・ワークと就労に係わる基本的な権利及び原則を促進できる可能性がある行動について検討し、第105回総会の結論で求められたように輸出加工区に関する行動計画の内容と態様についての手引きを示すような結論を採択しました。

 採択された結論は、1998年の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」及び輸出加工区に関する過去の議論を土台とし、輸出加工区は機会と課題の両方を提示することを認めた上で、政府に対しては労働者の権利の保護が確保された輸出加工区政策や労働監督制度の強化を優先事項の上位に置くことなどを、使用者団体に対しては企業の国内法遵守の奨励・支援などを、労働者団体に対しては女性や若者、移民労働者、難民などといった対象を定めた輸出加工区労働者支援の提供、社会対話への従事などを提案しています。また、多国間制度には輸出加工区の統治を強化する助けを提供し、その発展に影響を与える分野における世界規模での政策整合を促進できる可能性があることを認め、国内外の行動主体間のより良い調整支援に焦点を当てるべきことを提案しています。ILOが支援を提供できる分野としては、知識基盤の改善や各国労働監督制度の能力強化などが提案されています。多国間制度との関わりでは、UNCTADなどの国際機関との協同活動・調整の強化やディーセント・ワークのさらなる促進などに向けた国際金融機関・地域銀行との協力などが提案されています

 『輸出加工区におけるディーセント・ワークの促進と就労に係わる基本的な権利及び原則の保護』と題する討議資料は、1)輸出加工区の目的、活動、推定数、2)輸出加工区が就労に係わる基本的な原則及び権利に与えている影響、3)輸出加工区におけるディーセント・ワークのその他の要素、4)結論と討議項目案の4章構成で、輸出加工区の労働条件を巡る問題を簡潔にまとめています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
輸出加工区労働者のディーセント・ワーク促進並びに就労に係わる基本的な権利及び原則の保護専門家会議