部門別会議

保健業務の雇用・労働条件改善三者構成会議

 保健医療部門及びソーシャルセクターの就業者は世界全体で1億700万人余りに上ると見られます。無償で家族介護に従事する人などを含むと保健医療に関与する人は世界全体で現在、約2億3,400万人を数えますが、世界人口の4割ほどには保健医療の権利が法的に保護されていません。持続可能な開発目標の一部として掲げられているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(万民に対する保健医療の適用)を達成し、人間の安全保障を確保するには、低・下位中所得国を中心に、2030年までに1,800万人の保健医療労働者不足が発生すると見られます。

 ILOは、包摂的な経済成長を前進させる手段の一つとして、保健医療部門及びソーシャルセクターにおける仕事の創出を刺激する活動を提案することを任務として、2016年3月に潘基文前国連事務総長によって設置された「保健医療部門の雇用と経済成長に関するハイレベル委員会」の共同副議長を務めていますが、委員会は2016年9月に最終報告を発表して、持続可能な開発目標に向けて前進するために必要な保健医療労働力への投資に関する10項目の提案を行いました。

 労使代表各8人に加え、46カ国の政府代表が参加したこの会議では、急速に変化しつつある保健部門の課題と機会について話し合いが行われ、雇用創出と包摂的な経済成長にとっての保健部門の重要性、そして「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の諸目標の達成に相当に寄与する可能性があるその潜在力を強調する結論文書が採択されました。

 限られた公的財源、労働力不足、労働安全衛生上のリスク、十分な社会的保護の確保、保健労働者の移住の影響など、保健医療制度は様々な課題に直面しています。その結果、若い労働力を引き寄せ、全ての人に保健サービスの機会とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保するのに苦労しています。会議では、「仕事の未来」の文脈、とりわけ保健労働者に対する需要を押し上げている人口構造の趨勢、公衆衛生上の非常事態に対する準備と対応を含む国民の保健ニーズの急成長といった文脈で保健労働者のディーセント・ワークを検討すべきことで合意が達成されました。また、保健部門における科学技術の役割、人の移動とジェンダーを巡る動きの進化、非標準的な雇用形態の普及を含む労働関係の変化に取り組む必要性も指摘され、このためのカギを握る戦略は労働者の権利を保護・促進する手段を伴った社会対話であることが認められました。

 結論文書は技能開発と訓練、評価と結びついた継続教育、労働安全衛生基準の執行、報酬など労働条件の改善が保健サービス職の魅力を高め、生産性の向上に結びつく可能性を指摘しています。また、既存の労働基準や世界保健機関(WHO)の手引きツールに沿って、国際的なイニシアチブやパートナーシップと政策の整合性を確保する必要性も強調しています。さらに、「保健医療部門の雇用と経済成長に関するハイレベル委員会」による、持続可能な開発目標に向けて前進するために必要な労働力投資に関する提案に従い、保健労働力に投資し、関連する国内戦略を実行するよう加盟国政労使に呼びかけています。

 ILOに対しては、ILO及びWHOの現行の事業計画や活動、文書が保健部門の全ての人に人間らしく働きがいのある就労を促進する十分な枠組みをILO加盟国政労使に提供しているか否かを評価するために加盟国の保健部門における国内法と実務の包括的な研究を行うよう求めています。この過程で、とりわけ在宅介護労働者及び地域社会を基盤とする保健労働者に関する新たな政策手引きの必要性も検討される予定です。また、加盟国政労使、WHO、経済協力開発機構(OECD)、他の専門機関と共同で保健労働力に関する研究課題をまとめることも提案されています。

 討議のたたき台として準備された報告書は、持続可能な開発目標などの保健部門を取り巻く国際情勢や、保健医療サービス利用機会における不平等性、財源、需要の変化などといった課題、保健労働者の移住、保健部門の国際労働基準といったこの部門の動向、機会、課題をグローバルな観点から概説した上で、雇用、技能開発と教育訓練、労働条件、社会対話と労働関係の4章に分けて、この部門のディーセント・ワークに係わる状況を紹介しています。


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保健業務の雇用・労働条件改善三者構成会議