専門家会議

ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的責任ある観光業指針採択専門家会議

 過去数十年にわたって大きく成長してきた観光業は今日、世界的に最も力強く最も急速に発展している経済部門の一つとなり、世界の国内総生産(GDP)の約1割が旅行・観光業から生み出されています。その労働集約的な性格から観光業は雇用の大きな受け皿であり、関連部門の間接的な雇用も含むと2015年に旅行・観光業で創出された雇用は2億8,400万人になり、2026年には3億7,000万人に達すると期待されています。

 このように企業と仕事の創出を刺激する相当の潜在力を秘めた観光業は包摂的な社会・経済開発の重要な推進力の一つであり、基盤構造や公共サービスの発展を促しています。その重要性を反映するものとして、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる17の持続可能な開発目標(SDGs)中三つ(ディーセント・ワークと経済成長に関する目標8、持続可能な消費に関する目標12、海洋に関する目標14)の進捗状況を測るターゲットに観光業に関するものが含まれています。主要20カ国・地域(G20)も雇用創出、経済成長、開発の手段としての観光業の役割は認めており、国連の持続可能な開発会議(リオ+20)の成果文書「我々の求める未来」でも観光業は持続可能な開発に相当に寄与する産業とされ、国連環境計画(UNEP)もこの産業をグリーン経済への移行を主導できる産業の一つに挙げています。

 しかしながら、雇用創出や企業開発におけるこの産業の役割は過小評価されることが多く、その上、経済開発や雇用創出におけるその潜在力を十分に活用するにはこの産業が直面しているディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の課題に取り組む必要があります。

 そこで、政労使各側8人ずつの専門家が出席したこの会議では、SDGsと2030アジェンダに沿って、観光業とその利害関係者及び社会的パートナーである労使による社会的責任の育成及びディーセント・ワークの強化を奨励するような指針の採択を目指して話し合いが行われました。

 採択された指針は、このテーマに関する初の国際文書として、ILO加盟国政労使及び観光業のその他の利害関係者に、この産業部門の持続可能な開発に向けて労働に関連した課題と機会に取り組む努力を支える参考文書として用いてもらうことが意図されています。3章構成の指針は、第1章で対象範囲を示し、第2章で観光業の雇用分野における動向と展開を概説した上で、第3章で、生産的な完全雇用の促進、持続可能な企業の促進(若者の人間らしく働きがいのある雇用の促進、フォーマル経済への移行の円滑化、非標準的な雇用形態)、人材開発への投資、国際労働基準の実施と法規遵守(平等・非差別の促進、強制・児童労働の撤廃、結社の自由と団体交渉の権利の確保)、労働者保護の強化(社会保障、母性保護、労働条件)、実効的な社会対話の促進といった分野別に、持続可能な観光業政策を設計し実施する方法を具体的に示しています。付録として観光業に対する介入活動を設計・実施する際に考慮に入れるべき国際労働基準や宣言、その他の文書の一覧も添付されています。指針が対象とする観光業には、宿泊、飲食・娯楽、旅行、観光施設が含まれています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的責任ある観光業指針採択専門家会議