基準適用監視機構

条約勧告適用専門家委員会

 ILOの条約・勧告の適用状況を審査する委員会の年次定期会合。任期3年の20人の委員は様々な国籍の高名な法律の専門家で構成されています。日本からは現在、立命館大学法学部の吾郷真一教授(前九州大学法学部教授)が2015年から委員を務めています。委員会では、各国政府、労使団体から寄せられた批准条約の適用、総会で採択された条約・勧告の権限ある機関への提出、理事会から要請された未批准条約・勧告、非本土地域への条約適用に関する報告・情報が検討され、その結論は翌年のILO総会に報告書として提出されます。下記の委員会のページからは、過去の全ての報告書電子版を閲覧できます。検索機能のついた国際労働基準データベースNORMLEXには過去約30年分の情報が収録されています。

 第106回ILO総会(ジュネーブ・2017年6月5~16日)の第3議題「条約・勧告の適用に関する情報と報告」の討議資料として提出された委員会の報告書は、「一般報告及び特定国に関する見解(1A部)」と労働安全衛生をテーマとする「総合調査報告(1B部)」の2部構成になっています。以上の報告書は総会の基準適用委員会で審議されます。

 1A部には条約批准国から寄せられた適用状況報告に対する専門家委員会の見解が記されていますが、今回、日本に関する言及はありません。

 『安全で健康的な労働環境の促進に向けて共に働く』と題する総合調査報告は、1988年の建設業における安全健康条約(第167号)と同時に採択された同名の補足的勧告(第175号)1995年の鉱山における安全及び健康条約(第176号)と同時に採択された同名の補足的勧告(第183号)2001年の農業における安全健康条約(第184号)と同時に採択された同名の補足的勧告(第192号)2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)と同時に採択された同名の補足的勧告(第197号)という労働安全衛生分野の条約・勧告各4本を対象に、加盟国から寄せられた報告などを元に、◇これらの文書の目的と内容、◇労働安全衛生に関する各国の政策と法的枠組み、◇この分野における労使の協力、責任、義務、権利、◇国内における安全衛生文化の育成、職業上のリスクの評価、具体的な防止・保護措置、◇労働安全衛生に関する国内法規の遵守を確保するために講じられた措置についてまとめ、批准の展望とそれを阻む困難に関する報告などを紹介した上で、これらの基準を実施してその潜在力を発揮する方法及びそのためのILOの活動、将来への道を提案しています。日本は第187号条約は批准していますが、それ以外に関しては国内法制との一般的な乖離を理由として批准の予定はないと回答しています。