専門家会議

2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)専門家会議

 1958年の船員の身分証明書条約(第108号)を改正し、これに代わるものとして2003年に採択された船員の身分証明書条約(改正)(第185号)は、船員が陸上の福利施設の利用や休暇のための上陸、船舶の運航に関連しての移動に関わり、一時的に外国の領域に入国する際の便宜を図るために、船員の身分証明書に関する統一した国際的要件を規定しています。条約は指紋を基礎とする生体認証(バイオメトリクス)テンプレートなどを含む身分証明書(ID)モデル、ID電子データベースの内容、ID発行の要件並びに推奨される手続き及び慣行といった詳細を定めています。

 ILO理事会は条約に従い、2004年(2005年に改訂)に証明書に含まれるべき生体認証テンプレートの技術規格を定めましたが、その後の技術の変化と国境の保安管理基準の発達から当時要件を満たすとされた製品のほとんどが現在は入手できなくなっています。また、これに関しては、2009年に国際標準化機構(ISO)と国際電気会議(IEC)によって「情報技術-相互運用性とデータ交換のためのバイオメトリック・プロファイル(ISO/IEC 24713-3: 2009)」の第3部として「バイオメトリクスに基づく船員の確認・認証プロファイル」が発行されています。この内容により良く対応する方法の検討などを目指して2010年9月に開かれた政労使三者協議会では、ISO/IEC規格で推奨されているわずかな技術的変更点の受け入れなどを提案する結論が採択されました。

 本会議には、政府側50人、船舶所有者側16人、船員側22人の海運及びビザの専門家に加え、国際海事機関(IMO)その他の国際機関、国際非政府組織の代表が出席し、以上のような経緯を踏まえ、第185号条約の実施において発生した問題を克服する費用効果的な技術的・事務管理的解決策について理事会に助言を提供し、この条約のさらなる批准、海事権益を有する全てのILO加盟国による条約実施への参加を奨励することを目指し、この条約の実施に関連した様々な問題に対処する各種選択肢の実現可能性を検討し、費用便益分析を行いました。会議の討議資料として作成された技術背景資料には各種選択肢に加え、ISO/IEC 24713-3: 2009規格の関連部分が掲載されています。

 討議の結果、身分証明書の様式や発給要件などを規定する第185号条約附属書の改正を提案する一般的な結論と、改正文書の発効や移行期間、留保規定を含む改正手続きの詳細を理事会に提案する勧告が採択されました。新たな身分証明書として、IC旅券で用いられている現行技術に合わせるよう、現行の二次元バーコードによる指紋テンプレートに代えて顔写真の生体認証データとデジタル署名を内蔵した非接触式チップを用いることが提案されています。

 専門家会議の討議結果を検討した2015年3月の第323回理事会は、第185号条約附属書の改正を2016年の第105回総会の議題に含むことを決定し、総会に提案する改正文書の内容を検討する特別三者構成海事委員会を設置して2016年にその会合を開くこととしました。また、IMOの「1965年の国際海上交通の簡易化に関する条約(その改正を含む)」の規定に従い、ビザを必要とせずに船員が上陸できるよう便宜を図ることについて同条約批准国の注意を喚起するためにIMOの支援を求めることを事務局長に要請しました。


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2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)専門家会議