産業別フォーラム

電子産業における企業の需要変動に対する適応性と臨時雇用その他の雇用形態の発生に関する世界対話フォーラム

 ものづくり産業としては最も高い収益を生み出している電子産業は、最大の産業部門の一つです。世界全体の就業者数について正確な数値を導くのは難しいものの、ILOが2010年に行った研究では1,800万人、2011年のある研究では1,500万人と推定されています。この産業は非常に競争が熾烈で、イノベーションに富み、変化が激しく、製品寿命は短く、生産サイクルの波に対応する一般的な慣行として臨時労働者の活用や労働時間の調整が見られます。電子産業における企業の需要変動に対する適応性と臨時雇用その他の雇用形態の発生について論じたこの産業別フォーラムには、18カ国の政府代表及び顧問、労働者側グループの調整役を務めた全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)の八木孝幸書記次長を含む労働者側参加者10人、使用者側参加者7人の計49人が参加し、企業が臨時雇用その他の雇用形態を選択する理由やこれらの雇用形態が企業及び労働者に与える影響について評価しました。

 話し合いの結果、17項目の合意点が採択されました。これには、需要変動に適応するために企業が講じる措置の一つとして臨時雇用その他の雇用形態が用いられていること、臨時雇用その他の雇用形態の活発な使用が企業に与え得る影響としては、人員規模を需要にピッタリ合わせられるなどの利点の反面、生産性の低下や企業秘密流出の可能性などのリスクが存在すること、労働者に与える影響としては、柔軟性や労働市場に加わる機会、技能構築の機会を求職者に提供する反面、雇用保障やワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の保護の欠如など多数の課題があることなどが含まれています。ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、より持続可能な産業に寄与する措置についても合意に達し、この措置には社会的保護や労働安全衛生、再訓練などを含むべきこと、電子産業を需要変動に適応させることを目的とする措置は産業の懸念事項である持続可能性と労働者のニーズを調和させるよう努めるべきことやディーセント・ワーク促進などのための最高の手段は社会対話であることなどが合意されました。そして、今後の行動として、ILOに対しては、1994年のパートタイム労働条約(第175号)などの関連する国際労働基準の批准と効果的な実施を促進すること、電子産業のニーズに合わせた就労に係わる基本的な原則・権利に関する訓練を策定すべきことなど、政府に対しては、この産業部門の労働者及び企業のニーズをより良く満たすために労働法制や労働政策の改善に社会的パートナーを関与させるべきこと、必要な場合、需要変動の影響を受けている労働者の社会的保護を改善すべきことなど、そして電子産業の労使団体に対しては、雇用上の地位と無関係に全ての労働者の公平な処遇を促進すべきこと、可能な場合、長期的な雇用関係を促進すべきことなどが提案されています。

 討議のたたき台として準備された論点文書『Ups and downs in the electronics industry : Fluctuating production and the use of temporary and other forms of employment(電子産業における上昇と下降:生産変動と臨時雇用その他の雇用形態の利用・英語)』は、業務外注・下請け構造が顕著なこの産業の現況を概説した上で、日本、中国、マレーシア、メキシコ、ハンガリーの簡単な事例紹介も含めてアルバイトや派遣労働者といった非標準的な雇用形態を幅広く活用して生産変動に対応しているこの産業の世界的な状況を記した後、雇用創出、労働者自身の選好、企業のコストや品質に対する影響、雇用保障とワークライフバランス、賃金、就労に係わる権利・団体交渉・社会対話の六つの視点から非標準的な雇用形態の利用に係わる機会と課題をまとめています。


詳しくはフォーラムのウェブサイト(英語)へ---->
電子産業における企業の需要変動に対する適応性と臨時雇用その他の雇用形態の発生に関する世界対話フォーラム