ILO-日本協同組合連携機構 (JCA)共催 公開セミナー

「フランス語圏アフリカにおける協同組合活動」セミナー報告


2018年10月23日、渋谷のコーププラザにおいてILO-JCA共催の「フランス語圏アフリカにおける協同組合活動」と題した公開セミナーが実施された。このセミナーはILOとJCAが2010年から毎年実施するアフリカの協同組合リーダー向け視察研修の一環であり、例年研修の最終日に開催されている。日本での研修視察を終えた参加者が、自国の協同組合活動の現状について紹介し、日本で学んだことを今後自国でどのように活かしていくかについて発表した。

今回は初めてフランス語圏アフリカから参加者を募り、カメルーン、コートジボワール、チュニジアから3名のリーダーが研修に参加した。そのため、公開セミナーを含め今年の研修では日仏通訳が常時提供されたが、日本側にとってもフランス語圏アフリカ参加国の国民性や直面している課題、協同組合活動の特徴などを知る貴重な機会になった。

セミナーには、参加国の大使3名をはじめとするアフリカ関係者、協同組合組織から多くの参加者が集い、50名の定員を越えるほどの盛況振りであった。冒頭の日本生活協同組合連合会(JCCU) 会長の本田氏の挨拶では、これまでの要望に応え今年から環境問題に関する視察を研修に含めたことが言及された。またILO協同組合ユニット専門家のギー・チャミからはビデオメッセージが届き、関係者への感謝、研修生へのメッセージと共に、本研修事業の成果としてJCCU職員が今年6月にジュネーブで開催された協同組合間交易に関する国際会議に参加したことを挙げた。続いてコートジボワール、チュニジア、カメルーンの各国大使からの挨拶があった。フランス語での研修実施を評価すると共に、日本のビジネスにおける重要な概念であるKaizen(改善)について触れ、自国で一層普及していきたい等の発言があった。また日本の協同組合関係者によるアフリカ訪問を実現させて、さらなる交流と技術移転を進めたいとの意見もあった。その後JCCU国際部長の天野氏から、日本の協同組合の特徴である多様性 (多目的協同組合) を学ぶ研修内容についての説明があった。

参加者による各国の協同組合活動の概況説明では、まずコートジボワールの参加者であるコフィ氏が発表を行った。コートジボワールの協同組合活動の概念や法的枠組みの発展について触れた後、自身の所属する綿花セクターの協同組合について組織編制や活動内容および今後の展望について説明した。コフィ氏の組合は、生産資材等の供給、協同設備の購入、生産者の教育等による能力強化、生産活動の向上のための統計データの活用などの支援を行っている。今後の展望としては、生産者にとって好ましいプロジェクトの開発、活動の多様化及び生産者の収入向上のための関連穀物の栽培等も行っていく予定との説明があった。綿花はその性質上、個人の農家が大量に栽培、生産して販売することが難しいため、カカオなどの他の作物を作る農家に比べて、協同組合の果たす役割が大きく、参加率も98%に達しているとのことであった。

次にチュニジアからの参加者であるシュイヒー氏が登壇した。チュニジアの協同組合運動の歴史、現在の組織構成、そして所属する今年設立したばかりのざくろ農業協同組合について紹介した。原産地名称保護制度に基づいた、品質を証明するラベルづけや、農業設備の供給、輸出を実現するための展示会への出展などの取り組みについても説明した。ざくろ=すっぱいというイメージを持っている人が多いが、チュニジアのざくろはとても大きくて甘く、試食した人はとても驚いてくれるのでぜひ一度食べてみてほしい、とのメッセージが印象的だった。

最後にカメルーンの参加者であるエッガ・ビンガン氏の発表があった。彼はカメルーンの協同組合運動の歴史について語り、国家主導の協同組合の導入が失敗した経緯として、意思決定及び統制に生産者が積極的に参加できないような運営方法であったことを指摘し、自発的な参加の重要性を説いた。2010年に制定されたアフリカ地域におけるOHADA統一法が重要な役割を果たしたことについても触れ、国の撤退後に協同組合を地域立法の下に置いたことで、協同組合の旧来の慣行を打破して組合員の利益及び組合の持続可能性を促進したと説明した。また、コミュニティーレベルにおける協同組合のネットワーク構築、若者に対する支援、経済本位ではなく社会性も重視した「社会連帯経済」の実現などの重要性を強調した。

その後の活発な質疑応答では、参加者に対して日本で具体的に学んだことを自国でどう活かすのかについての質問、他機関との連携の提案、営業やマーケティング研修の要望などの発言があった。カメルーンの大使からは改めて日本の農家や協同組合員のアフリカ訪問の要望が挙げられ、JCCUからもできる限り実現したいと回答するなど、今後のさらなる連携強化に向けて前向きな意見交換があった。今回の研修やセミナーを機にILO、JCCU、そして参加したアフリカ各国の協同組合間で、より一層の交流や情報共有が促進されることが期待される。

ILO駐日事務所インターン 著