アフリカ開発会議
ILO事務局長挨拶-人間を中心に据えた取り組みはアフリカの若者に人間らしく働きがいのある仕事を創出できる
ガイ・ライダーILO事務局長は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)においてILOが主催したサイドイベントにおける開会の挨拶で、人間を中心に据えた取り組みがいかにアフリカの若者に人間らしく働きがいのある仕事を創出し、生産性を押し上げる助けになる可能性があるかを紹介しました。
ガイ・ライダーILO事務局長は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)においてILOが主催したサイドイベントにおける開会の挨拶(英語)で、人間を中心に据えた取り組みがいかにアフリカの若者に人間らしく働きがいのある仕事を創出し、生産性を押し上げる助けになる可能性があるかを以下のように紹介しました。
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お集まりの皆様、
ILOを代表してこのハイレベルダイアローグに皆様を歓迎することをお許し下さい。
まず最初に、阿部俊子外務副大臣のご参列をお知らせすると共に、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)及びこのサイドイベントの開催に当たっての日本政府の素晴らしいお取りはからいに感謝申し上げたいと思います。
また、本日ここにお集まりの多くの良き友人の方々のお名前を挙げたいと思います。
南アフリカのパテル大臣、
ガンビアのジョベ大臣、
アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)計画調整庁のマヤキ長官、
CODEMのジャメ代表取締役、
アフリカ連合のモハメッド社会委員、
そして、G5サヘルのシディコウ常駐代表にご参加いただいているということは、G5サヘルの国々にとってのこのイベントの重要性を示し、説明するものであります。
皆様、TICAD7が開かれた本年、ILOは創立100周年を迎えました。私たちはこの100周年の焦点を主として仕事の未来の議論に当てています。そして、その頂点を飾るものとして、つい2カ月前に開かれたILO総会で「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」が採択されました。この宣言の中心は、本日の対話のテーマでもありますが、人間を中心に据えた仕事の未来に向けた取り組みです。ここで私たちが焦点を当てているアフリカについて思い出していただきたいことは、毎年1,000万~1,200万人の若者が雇用市場に加わり、6,500万人が働いていても貧しい状態に陥っているという点です。そこで、本日の注目の焦点を、若者のための仕事、そしてここで強調しておきたいのですが、つまり若者のための人間らしく働きがいのある仕事に当てることは極めて適切で正しいことなのです。
では、これをどう達成するかと言いますと、私どもでは三つの種類の投資を提案しています。
- 一つ目は、人に対する投資。人々が変わりゆく仕事の世界から利益を得るための投資です。
- 二つ目は、仕事に関連した制度・機構への投資です。これはとりわけ公式(フォーマル)経済への移行に際し、あらゆる労働者に適切な保護を確保するためのものです。
- そして三つ目は、持続的かつ包摂的で持続可能な経済成長、そして未来の仕事への投資です。
この勧告の全てに優先するメッセージの一つとして、基盤構造、そして仕事の世界における変革的な変化を推進している要素に対処するために戦略的な産業部門へ投資する必要性が挙げられています。それは良質で持続可能な基盤構造は、包摂的で生産的な成長につながる可能性がある、そしてつながるべきである経済、社会、環境の諸面における利益を提供するからです。
基盤構造投資を促進するに当たっては確かに民間の資金動員がカギを握りますが、政府もまた、バランスの取れた包摂的な成長と持続可能な開発を促進するに当たって重要な役割を演じています。これは例えば、つい数カ月前に、日本政府のイニシアチブによって大阪サミットで採択された「質の高いインフラ投資に関するG20原則」で認められています。
基盤構造への投資、とりわけ農業、環境、社会、運輸の各部門への投資は仕事を創出し、事業を可能にする環境を育みます。これは結果として、生産性や労働条件、収入の向上をもたらす一方で、若者の失業問題に取り組む助けになり得ます。これは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標達成、そしてアフリカ連合の「アジェンダ2063:私たちの望むアフリカ」の実現にも貢献することを意味します。包摂的なフォーマル経済への構造転換を迅速化するような形で、ニーズを有する集団を対象に定めることによって若者の需要を満たすように工夫されていたとしたら、それはより一層効果的になることでしょう。
では皆様、この人間を中心に据えた取り組みですが、とりわけ若者のための仕事を論じるに当たって、アフリカの開発にどう関わっているでしょうか。
2000年以降のアフリカの急速な経済成長を支えるものとして公共インフラ投資があります。アフリカ諸国の政府はアフリカ全体の国内総生産(GDP)の7.2%に相当する計450億ドルを投資しています。これは相当の金額ではありますが、世界銀行が基盤構造改善の需要を満たすために必要な金額としているGDPの15%相当分に当たる推計930億ドルをはるかに下回っています。
そして、常にそうであるように、GDPは全体像を示していません。この数字を人間中心のレンズを通してみるならば、基盤構造への過少投資はより少ない雇用機会、基本的なサービスが十分に得られない農山漁村人口、そして包摂的な経済成長のための生産的な機会が不足している農業を意味することが分かります。これら全ては、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)やSDGsの達成にとって害になります。
一方、ILOでは雇用集約型投資計画を通じてアフリカの若者の技能を育み、仕事を創出するために、多くの開発パートナー及び現地パートナーとの協働によって、そのような投資に公的資金を注入してきました。ガンビアとモーリタニアでは日本政府と緊密に協力し、南アフリカ政府とは拡大公共事業計画を通じて協力し合っています。高まる需要を満たすために、このパートナーシップ関係をさらに強化することを望むものです。この点で明らかに南南協力は重要な役割を演じることができますし、そうでなくてはならないと私は思います。
ILOはさらに、このような相互学習のプロセスをアフリカのパートナー諸国が制度化するのを手助けしてきました。隔年で開かれる労働基盤型実務者地域セミナーでアフリカのパートナーの方々から示される関心の高まりによって明らかなように、より強力で、より体系立った学習空間を求める勢いが増してきているのが見られます。
日本政府のような活発な開発協力の提供者との三角協力を通じた科学技術の移転は、現在の私たちの取り組みに相当の価値を付加するものとなり得ると思いますが、そのような新しい機会を探求させていただけますと誠に幸いです。
皆様、以上をご紹介の言葉とし、本日のパネリストの方々の見解と経験をお聞きするのを楽しみに思います。討議テーマは仕事の未来に非常に関連しています。それはまた、アフリカの未来、そしてその未来を中心となって構築する若者にとっても非常に関連していることに皆様全員にもご同意いただけるのではないかと思います。
ご清聴有り難うございました。