G20大阪サミット

ディーセント・ワークがなくては社会正義は達成されない

 G20大阪サミット(2019年6月28~29日)における発言で、ガイ・ライダーILO事務局長は世界の労働者の不平等問題に取り組む必要性を指摘しました。

声明 | 2019/06/29

 「格差への対処、包摂的かつ持続可能な世界」と題するG20大阪サミット2日目の第3セッションで発言したガイ・ライダーILO事務局長は、以下のように世界の労働者の不平等問題に取り組む必要性を指摘しました。

* * *

G20大阪サミットにおける安倍晋三内閣総理大臣とガイ・ライダーILO事務局長 © Brendan Smialowski / AFP

 明らかに現在の取り組みは、均衡の取れた持続可能な成長の目標に釣り合う形で世界の労働者の収入の上向きの収斂をもたらしていません。

 ILOに得られる証拠は分配面での相当の失敗を指し示しています。

  • 富はますます集中し、
  • 国内における最富裕層と最貧困層の間の格差は広がり続け、
  • 労働分配率は先進国では低下し、途上国では世界平均を遙かに下回ったままであり、
  • 男女間の不平等は解消されず、
  • 世代間の不平等は累積し、
  • 世界の労働者の大きな割合が賃金の低迷を経験しています。

 では、どうすれば良いでしょうか。

 何よりもまず、全ての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を達成することです。ディーセント・ワークには公平性を高めると共に、より多くの社会正義を提供できる強力な分配効果があります。私たちは労働市場に注意を払う必要があります。なぜならば、労働市場は世界中で主たる収入源の機会を提供しているものの、無規制のままで放置するとしばしば不平等を生み、悪化させるからです。

 ほんの2例ほど挙げてみましょう。第1に、失業のリスクは女性と低所得労働者の方が高くなっています。第2に、低賃金職との相関性がしばしばより高いものとして、不規則な労働時間、危険有害労働、社会的保護の欠如が挙げられます。

 だからこそ、ディーセント・ワークを提供する上で適切な規制が非常に重要なのです。

 加えて、不平等対策としては、普遍的社会的保護制度が非常に大きな役割を演じています。欧州の所得不平等が比較的小さいのは、租税と所得移転を通じて所得格差を縮小しようとの諸国政府の積極的な努力の結果であるところが大きいと言えます。所得移転と課税前の欧州の労働市場における不平等は例えば中南米など、他の地域と極めて似通っています。しかし、租税と所得移転が欧州の不平等には大きな違いをもたらしているのに対し、中南米における影響は比較的小さくなっています。

 したがって、所得不平等に対処するには、持続可能な社会的保護制度を支える租税・所得移転制度と健全な労使関係制度を通じて再分配を達成する制度・機構に投資する必要があるのです。

 そして最後に、経済及び労働市場の現在の構造は男女平等に結びついていません。労働力率と賃金における男女間格差を縮小するには、多様な側面において対象を定めた行動が必要です。この第一歩は育児や介護といった無償のケア労働の男女間における配分を再均衡させることから始まります。なぜならば男女平等は正に、まず家庭内から始まるものだからです。そして、差別と闘い、固定観念の撤廃に引き続き努める必要があります。

 先週閉幕したILOの創立100周年記念総会では、平等な地位を求める女性の戦いにおけるまた一つの重要な手段を提供する画期的な法律文書として、仕事の世界における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)に取り組む条約が採択されました。G20諸国が率先してこの新しい条約の批准と実施に乗り出してくださることへの期待を述べて結びに代えたいと思います。

 ご清聴有り難うございました。