協同組合の国際デー

ILO事務局長声明:包摂的な経済及び包摂的な社会の構築を手助けする協同組合

声明 | 2017/07/01

 7月第1土曜日(今年は7月1日)は協同組合の国際デーです。「誰も置き去りにされないことを協同組合は確保する」という今年の国際デーのテーマは、全ての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現することを目指すILOの目標が組み込まれた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の指導原則に根ざしています。国際デーに際して発表した以下の英文声明において、ガイ・ライダーILO事務局長は、2030アジェンダ実施のための努力を結集し、誰も置き去りにされないことを確保するに当たり、協同組合の力を活用しようと呼びかけています。

 また、国際デーに際して制作された写真スライドショーは、農山漁村に住む人々に対するサービスの提供、集団的な発言力や交渉力、規模の経済を生むことによって貧困から抜け出す手段、女性の就労促進、生計改善及び地域社会で大いに必要とされている基盤構造やサービスの提供などといった、協同組合の果たす役割をILOの開発協力プロジェクトなどの写真を用いて紹介しています。この分野におけるILOの活動は2002年に採択された「協同組合の促進勧告(第193号)」に導かれています。

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協同組合イメージ写真

 今年は7月1日に当たる7月第1土曜日の「協同組合の国際デー」を国際社会と共に祝えることは、ILOにとって喜びの至りであります。「誰も置き去りにされないことを協同組合は確保する」という今年のテーマは、誰も置き去りにしないという公約によって推進されている、国際連合の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の指導原則に根ざしています。

 人々を中心に据え、連帯と組合員共同所有の原則の上に打ち立てられている協同組合は、より包摂的な社会及び経済をもたらす手段となるに適した位置に存在しています。

 仕事、なかんずくディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)は、包摂と社会正義のための基本的な仕組みです。ディーセント・ワークを全ての人に実現する公約は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中に埋め込まれており、これは障害者や先住民、移民や難民などの、貧困と排除の危険にさらされている働く人々の状況に特に気を配ることを意味します。

 公平と包摂の推進に向けて協同組合が活動している証拠は既に多数得られます。例えば、先住民の生産協同組合及びサービス協同組合は、組合員が生計手段を確保し、人間らしく働きがいのある仕事を創出し、市場に参加することを可能にしてきました。協同組合は同時に、男女平等や女性のエンパワーメントを進めつつ、組合員による伝統的な知識の維持や環境の持続可能性の強化を可能にしてきました。

 仕事の世界への包摂、そして広く社会への統合を円滑化する協同組合の能力の恩恵は、移民や難民のみならず、障害者にも及んでいます。

 人を中心に据えた質の高い高齢者介護、そして障害者や長期療養者の在宅介護やデイケアの提供においても協同組合事業が果たす役割はますます大きくなってきています。非公式(インフォーマル)経済においては、協同組合は労働者が公式(フォーマル)の労働取り決めへと移行し、交渉力の強化を通じてより良い条件を確保するのを手助けしてきました。例えば、各地の家事労働者は協同組合組織を通じて状況改善に成功しています。

 しかしながら、協同組合の潜在力が完全に開花するにはまだ道のりは遠く、その能力がほとんど手つかずのままの分野も複数存在します。協同組合は例えば、児童労働や強制労働、就労に係わる差別の撤廃に向けた取り組みにおいて強力な役割を演じることができるでしょう。

 包摂という多次元の課題に取り組むには、協力と連携が必要になることでしょう。国際協同組合同盟(ICA)の呼びかけを心に留め、2030アジェンダ実施のための努力を結集し、誰も置き去りにされないことを確保するに当たり、協同組合の力を活用しようではありませんか。