児童労働反対世界デー

ILO事務局長声明:紛争や災害における児童労働から子どもを守ろう

声明 | 2017/06/12

 被災地や戦災地の子どもは特に弱い状態にあり、児童労働に陥るリスクも高くなっています。6月12日の児童労働反対世界デーに際して発表した以下の英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は、児童労働の根絶を目指す「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のターゲット8.7の達成に向けて結成された8.7連合の存在や今年11月に開かれる第4回児童労働の持続的な撤廃世界会議などにも触れた上で、そのような子どもたちも置き去りにせずに活動を強めることを呼びかけています。

* * *

 2017年の児童労働反対世界デーに際して私たちが強調するのは、紛争や災害に捕らえられ、児童労働の特別のリスクに瀕している子どもたちの苦境です。

 戦災地や被災地ではしばしば自宅や学校は破壊され、多くの家族が生計手段を失い、家族制度や社会的保護制度が破綻して児童労働のリスクが高まります。子どもの難民や移民は、家族と離れて移動中の者たちを中心に特に弱く、人身取引や児童労働の餌食になりやすい状態にあります。

 後に残った子どもあるいは残された子どもは、戦災地における金属や鉱物の採掘・くず漁り、瓦礫の除去、街頭での労働など、最悪の形態の児童労働に特に弱く、最も極端な場合には戦闘員として大人の戦争に参加していることもあります。武装集団や武装勢力にスパイや手伝い、荷物運びとして利用される子どもや性的搾取と虐待の被害者となる子どももいます。

 すべての子どもに児童労働から保護される権利があります。しかしながら、世界中でなおも1億6,800万人の子どもが児童労働に従事し、このうち8,500万人は危険で有害な労働に従事しています。

 今日の私たちは過去数十年で最大の難民危機に直面しています。近隣の難民受入国は子どもとその家族に避難所と支援を提供するという世界の責任の相当部分を負担しています。難民の保護責任を公平に分担し、被災地域の最前線にある国々が大人の難民には労働市場に加わる機会を子どもたちには教育の機会を提供できるようこれらの国々を支援するためにもっと多くのことを行う必要があります。

 国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のターゲット8.7の下、全ての国が2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすことを約しました。置き去りにされる子どもが一人もいない状態で初めてこのターゲットは達成できます。その環境がどんなに困難で課題が多いものであろうともです。この課題に対する国際社会の注目は高まってきたものの、まだ多くのことが必要です。

 ILOはその構成員たる政府と労使だけでなく、他の国際機関や市民社会、報道機関とも緊密に協力して紛争地や被災地において児童労働の影響を受けている子どもを支援しています。ハイチからミャンマー、ネパールからコンゴ民主共和国に至る様々な国の子どもたちが児童労働から引き離され、良質の教育に代替的な機会を見出しました。

 今や169カ国がILOの「1973年の最低年齢条約(第138号)」を、180カ国が「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」を批准しています。明日、私はインドから両条約の批准書の寄託を受ける栄誉を得ます。187の全加盟国による批准に向けたこの大きな前進は、世界中ほぼ全ての子どもに第182号条約が適用され、第138号条約の適用割合が6割から8割に急上昇することを意味します。国連の「児童の権利に関する条約」がほぼ全加盟国による批准を達成しているとの事実と共に、これは私たち共通の大義、そして私たち共通の子どもの人権を守る基準についてのメッセージを世界中に響き渡らせるものです。

 ILOは2016年9月に複数のパートナーと共に、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のターゲット8.7に定められているように、具体的な行動によって児童労働、強制労働、現代の奴隷制、人身取引を終結させるための地球規模のパートナーシップとして「8.7連合」を立ち上げました。ILOの旗艦的事業計画の一つである拡大児童労働撤廃国際計画(IPEC+)は、加盟国及び社会的パートナー(労使)によるこの課題に立ち向かう取り組みを支援しています。2017年9月にILOは他の複数のパートナーと協力して準備している児童労働の世界的な規模に関する新たな推計値と世界報告を発表します。ILOはまた、今年11月に「第4回児童労働の持続的な撤廃世界会議」の開催国となるアルゼンチンに感謝を表明し、その準備を積極的に支援するものであります。

 それでは、世界中どこにいようとも、「児童労働反対世界デー」を共に記念しようではありませんか。無駄にできる時間などありません。あらゆる形態の児童労働の終結に向けた歩みを加速させる行動を強める時は今なのです。