児童労働反対世界デー

ILO事務局長声明-サプライチェーンにおける児童労働をなくそう:一人一人の務め

声明 | 2016/06/12

 6月12日の児童労働反対世界デーに際して発表した以下の英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は、サプライチェーンを通じた児童労働撤廃の可能性に注意を喚起して、仕事の未来を児童労働のない未来に変える手段は、共に行動する私たちの手の内にあると説いています。

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 正しく機能し、正しく規制された市場に児童労働が存在する場所がないということは明白です。しかし、現実には今日、児童労働は依然としてサプライチェーン(供給網)に幅広く存在しています。

 今でもなお1億6,800万人の子どもが児童労働に従事し、うち8,500万人は危険で有害な仕事に従事しているという事実は許容できません。児童労働は農業(9,900万人)から鉱業、製造業から観光業にまで見られ、毎日数百万人が消費する商品やサービスを生産しています。

 圧倒的に多くの児童労働が労働監督や労働者団体の保護、使用者団体・生産者団体の統治による利益が及ばない農山漁村経済やインフォーマル(非公式)経済で発生しています。

 サプライチェーンにおける児童労働のリスクを高めているのは農山漁村経済やインフォーマル経済における制度的な保護の欠如だけではありません。小規模な家族企業や農場では児童労働に代えて大人や若者を雇う経済的な余裕がないためにあるいは親の収入が不十分であるために、世帯内での生産活動や農家において子どもはしばしば非常に脆弱な立場に置かれています。出来高給による生産は、親が生活できるだけの賃金を得ていない場合に家族の生存を確保するためにあるいは割当数量を達成するために親を手伝う児童労働のリスクを高めます。

 グローバル・サプライチェーンは下請け供給業務に従事する企業や労働者、受入国に包摂的な発展の機会を提供する可能性がありますが、正しい成果を確保するには対象を定めた行動が必要です。

 世間の注目を集めがちなグローバルなサプライチェーンにおける児童労働以外にも多くの児童労働者が地元消費や国内消費用の生産活動に従事するサプライチェーンに見られますが、こういった子どもたちの存在を無視してはいけません。

 行動を起こして児童労働を防止する意思、そして関連法のより効果的な執行に加えてサプライチェーン全体にわたるより高い透明性と視認性を達成しようとの決意を示す元気づけられる兆候が見られます。

 ILOの「1973年の最低年齢条約(第138号)」は168加盟国、そして「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」は、187の全加盟国に近い180カ国によって批准されています。

 各国政府は児童労働に対する戦いには、良質の教育、社会的保護、親の人間らしく働きがいのある仕事といった、児童労働法制を支える一貫性のある政策集合が必要なことを認めるようになってきています。

 ますます多くの企業が自社サプライチェーンの全体を通じて企業の能力を強化することによって児童労働の撤廃に貢献できるかも知れない方法を探るようになってきています。これは政府、産業仲間、労使団体を巻き込んだパートナーシップを必要とする複雑な課題です。ILOの児童労働協議会のような話し合いの場は、企業が好事例を共有し、新たな協同モデルを育む機会を提供しています。

 国際労働組合連盟と多国籍企業の間の国際枠組み協約は社会対話を通じた世界規模の協力の一つの表現形態です。バリューチェーンの草の根レベルでも農山漁村労働者団体やインフォーマル労働者団体が集団的な代表性を強める革新的な取り組みを広げつつあります。

 1977年に採択されたILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」は、児童労働撤廃における企業の役割を認めています。企業の能力と社会対話の育成及び強化に重点を置くこの宣言は、児童労働に対する行動を導く大きな潜在力を秘めています。

 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は児童労働をなくすという目標を再確認しています。共に行動することによって、仕事の未来を児童労働のない未来に変える手立ては私たちの手の内にあるのです。