協同組合の国際デー

協同組合を選択し、平等を選べ

声明 | 2015/07/04

 7月第1土曜日(今年は7月4日)に設定されている協同組合の国際デーに際して発表したメッセージにおいて、ガイ・ライダーILO事務局長は、平等促進における長い歴史を有する協同組合が、すべての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会正義の促進に向けた効果的な戦略の中でその場所を見いだせるよう確保しようと呼びかけています。また、2015年の国際デーのテーマである平等に合わせて作成された広報記事は、ニューヨークのある団体の活動を通じて不平等を縮小できる協同組合の潜在力を示しています。

2015年協同組合の国際デー:ガイ・ライダーILO事務局長メッセージ

 「協同組合を選択し、平等を選べ」のテーマに焦点を当てた2015年の「協同組合の国際デー」を国際社会と共に祝うことができ、喜ばしく思います。

 人を中心に据え、価値に導かれる、組合員が所有する事業として、協同組合には平等を促進してきた長い伝統があります。協同組合の「平等と公平」の価値は組合員の平等な投票権や協同組合の生産物・サービスに対する平等な機会、そして剰余金の公平な分配といった形で表現されています。協同組合は生産性と収入を生む将来性のある企業モデルを形成しているだけでなく、性、年齢、人種、民族性、性的指向、差違ある能力に基づく社会的不平等、差別、排除に取り組むことを手助けする格好の位置に存在しています。

 驚くことではありませんが、協同組合はまた、すべての人のディーセント・ワークの実現に効果的な手段であることも証明されています。協同組合のこの役割はほぼ100年に及ぶILOの歴史の中でも長く認められてきました。これは2002年に採択された協同組合の促進に関する第193号勧告に反映されています。2015年6月のILO総会で採択されたインフォーマル(非公式)からフォーマル(公式)経済への移行に関する勧告はこの移行を円滑化する総合的な政策枠組みの中で協同組合その他の社会的経済・連帯経済の事業単位を促進するよう加盟国に呼びかけています。

 縁辺に追いやられている女性労働者が労働者所有型のグリーン企業を経営しているカリフォルニアに拠点を置く事業から、障害者を雇用するフィリピンの家具製造協同組合、さらには相当額の生産物販売収益で孤児や脆弱な立場にある子どもたちの教育費を支援しているタンザニアの協同組合に至るまで、私たちは農村経済やインフォーマル経済において、女性や若者、先住民の人々が協同組合の活動方式を用いて所得や生活水準をいかに高めてきたか直接目にしてきました。

 労働者協同組合や複数利害関係者協同組合の数は急激に増加してきており、倒産しそうな企業の労働者、若者失業者、一時解雇された公的労働者がより良い未来の展望を享受できる手段を提供してきました。

 低所得コミュニティーでは住宅、観光、再生可能エネルギー分野の協同組合が経済収益の公平な分配の達成を手助けすることができます。ILOは協同組合方式のケアサービスの提供がケア労働者、ケアの受け手、コミュニティー全体の安寧をいかに改善できるか調査を進めています。さらに、仕事の世界の進化に伴い、人々、知識、科学技術、資金・資源を集め、経済と社会の不平等を永続させているギャップを埋めることによって、科学技術、社会、組織に変革をもたらすために協同組合モデルを活用できる可能性があります。

 ILOは協同組合型企業ともっと密接に協働することによって、協同組合の理想が促進され、ディーセント・ワーク達成の機会が拡大されることを期待しています。この目標は2015年6月30日にILOと国際協同組合同盟(ICA)の間で調印された新しいパートナーシップ協定や、協同組合と男女平等に関する最近の調査のようなILOとICAの共同活動に反映されています。

 国際社会が2015年以降の地球規模の開発枠組みの採択に向かいつつある今、社会正義とすべての人のディーセント・ワークの促進に効果的な戦略の中に協同組合が自らの場所を確実に見つけられるようにしようではありませんか。

仕事が単なる職以上のものになる時:ニューヨークの協同組合運動

シ・セ・プエデ!女性協同組合の組合員

 ニューヨーク市ブルックリン区のサンセット・パーク近隣住区は伝統的に世界各地から米国にやって来る移民が最初に目指す地になっており、住民の多くが英語力も教育も限られた低所得地域です。きちんとした安全な環境で暮らせるだけの賃金が支払われる仕事を見つけることはほとんどの住民にとって困難で、搾取や劣悪な労働条件の被害者も多く見られます。伝統的な求職方法が必ずしも機能しないのは、語学の壁に加え、労働者としての権利に関する知識が不足していることも関連しています。人間らしく働きがいのある有意義な仕事を創出する効率的な方法は協同組合モデルであることが明らかになるのに時間はかかりませんでした。

 そこで、地域住民に家庭関係の社会的サービスを提供してきた家庭生活センターは2006年に労働者協同組合育成計画を開始しました。担当チームは英語とスペイン語でビジネス相談に乗り、包括的な支援サービスを提供することによって協同組合の設立と運営の調整を手助けしています。

 センターの支援を受けて2006年に誕生した最初の協同組合「シ・セ・プエデ!女性協同組合-できる私たち」は、ニューヨーク市全域でハウスクリーニングのサービスを提供しています。当初15人だった組合員は9年の間に67人に増加しました。ほとんどが中南米圏の出身者です。3人の子供の母であるクリスチナさんは、2010年にメキシコからわたってきた当初はまともな仕事を見つけられませんでしたが、組合に加入してからは時給20ドルの仕事を毎週定期的に続けています。別の組合員のルスさんも組合員になって人生が変わったとして、こう語っています。「独りで住宅清掃を請け負っていた頃は時給は8ドルで、全額支払ってもらえない懸念や安全性に絶えず不安を感じていました。今では平均時給は約20ドルで、安全で協同組合のみんなに支えられていると実感しています」。

ブルックリンにある家庭生活センターのバネッサ・ブランスブルグ協同組合運動部長

 2008年から家庭生活センターで移民が運営する協同組合に技術支援を提供し、相談に応じてきたバネッサ・ブランスブルグ協同組合運動部長はこのような成果に誇りを感じ、自分の仕事の社会的な価値を強調しています。協同組合に加入することによって、組合員の労働時間や賃金、作業環境は改善され、賃金労働者から事業の共同所有者に転身することによってリーダーシップをとる機会ももたらされます。チームの一員となり、それぞれが仕事に対する説明責任を負い、「単なる職であることを越え、仕事が人材開発の機会と化しています」とブランスブルグ部長は説明しています。組合員の大半を占める女性にとっては、家庭内での自信や権威を高めるきっかけにもなっています。

 シメル・エシムILO協同組合班長は、「協同組合は人々に力を付け、尊厳ある持続可能な形で生計を立てる手段を提供することによって不平等を縮小する助けになり、貧困削減において大きな役割を演じることができる」と説き、「サンセット・パークで達成されたことは、移民その他の脆弱な集団に関して同じような困難に直面している他の多くの場所でも実行できると思う」と語っています。

 協同組合に係わるILOの活動は協同組合の促進勧告(第193号)に導かれています。ILO協同組合班は、1)啓発活動、2)協同組合の競争力確保、3)国のあらゆるレベルの教育・訓練制度における協同組合原則・実務教育の促進、4)法・政策に関する助言提供の四つの優先分野を通じてILO加盟国政労使及び協同組合組織にサービスを提供しています。

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 以上は2015年の協同組合の国際デーに際して発表されたガイ・ライダーILO事務局長の英文メッセージの全訳と7月2日付のブルックリン発英文広報記事の抄訳です。