労働安全衛生世界デー(4月28日)

ILO事務局長声明:予防的労働安全衛生文化の構築を

声明 | 2015/04/28

 4月28日の労働安全衛生世界デーに際して発表した以下の英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は基本的人権と認められている労働安全衛生を世界中の労働者の現実にしようと呼びかけ、予防的な労働安全衛生文化を共に構築しようと訴えています。

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 世界の注目を集める胸のつぶれるような劇的な物語の一斉報道が定期的にニュースに差し挟められます。これには、命に関わる病の患者を看護中に自らが感染してしまった保健医療労働者の話、閉じ込められた鉱山労働者が再び姿を現したとか現さなかった話、工場建物の倒壊、飛行機の墜落、石油掘削装置の爆発、原子力事故などがあります。

 マスコミはやがて別の話題に移りますが、危険で有害な条件下での労働は実際のところ、多くの労働者が日々、定例的に行っている目に入らない活動なのです。この数字は驚くべきものです。非死亡労働災害に遭う労働者の数は毎年世界全体で3億1,300万人を超えていますが、これは1日当たりに直すと86万人が仕事で怪我をしていることに相当します。業務上の事故または疾病で亡くなる人の数は世界全体で1日当たり6,400人、1年間で230万人に上ります。業務に関連した事故や疾病は世界中すべての健康問題の中でも確実に高負荷問題に分類することができます。

 景気後退や利潤極大化に向けたプレッシャーを職場の安全性を切り下げる言い訳に使うことはできません。

 実際、安全対策を講じなかった場合の対価は高くつきます。2.8兆ドルという肝をつぶすような金額に相当する世界全体の国内総生産(GDP)の4%が毎年、労働損失時間、生産中断、業務上の負傷や疾病の治療、リハビリテーション、補償金に関連した経費に吸い出されているのです。

 古くからのILOの優先事項である労働安全衛生は2008年に出された労働安全衛生ソウル宣言で基本的人権の一つとして認められました。今こそこの人権を世界中の労働者にとって現実のものとすべき時です。

 労働安全衛生に関する良い統治(ガバナンス)から示されるのは、予防は報われるということです。労働安全衛生世界デーの本日、ILOは予防的な労働安全衛生文化の構築に向けた緊急の行動を呼びかけるものです。

 各国の予防的な労働安全衛生文化には何が含まれるでしょう。

  • あらゆるレベルにおける安全で健康的な作業環境に対する権利の尊重
  • 規定の権利、責任、義務の体系を通じた安全で健康的な作業環境の確保にあらゆる利害関係者が積極的に参加すること
  • 予防原則を最優先事項とすること

 予防文化はどう構築し、維持していけば良いでしょうか。

 これは政府、労使、労使団体、専門家といった多くのパートナーの関与の上に打ち立てられなくてはなりません。

 このようなグループ間での建設的な対話は仕事の世界に極めて重要な利害関係を有する人々の民主的な関与と合意形成を促進することになります。

 今こそ労働安全衛生分野で達成された予防に関する成果の地固めに向かう時です。好事例を共有・促進し、可能な場合には手本とし、全世界的な予防文化の構築に向けた進歩を加速させるためにパートナーシップを構築すべきです。

 この過程で鍵を握るのが、業務上の危害やリスク、そしてそれを予防・管理する方法についての意識と知識を高めることです。良い統治は国の能力を強化すると同時に国内外の資金の動員を円滑化します。この資金を賢く使うには、零細・小企業やインフォーマル経済、農業などを含むあらゆる部門への拡張を目指した、実効性のある労働安全衛生国家戦略の策定・実行が求められます。

 私たちは一人一人が労働災害による死亡、負傷、疾病の予防に寄与することができます。これに関する意識を高め、人々のより大きな関与を確保し、利害関係者を支援するためにILOが開始した新しいILO安全デー・キャンペーンに参加していただけませんか。私たちは一緒に予防的な労働安全衛生文化を築くことができるのです。