世界社会正義の日

ILO事務局長声明-不可避なことでもないし、言い訳の余地もない:強制労働は止めることができる

声明 | 2015/02/20

 2015年の世界社会正義の日(2月20日)に際して、国連は人身取引と現代の奴隷制に光を当てています。昨年のILO総会で採択された強制労働条約(第29号)の議定書は、取り得る予防的な措置を示し、被害者が実効的な救済措置を得られるよう確保することを政府に求めています。ガイ・ライダーILO事務局長はこの日に発表した以下の英文声明で、世界全体で約2,100万人が非人間的な状態で強制的に働かされている事実を指摘し、献身的な努力並びに正しい政策及び制度を伴えば強制労働は止めることができるとして、これを現実のものとするために手を組もうと呼びかけています。

* * *

 世界社会正義の日は貧困及び社会的排除に対する行動を活気づかせるべきでしょう。自由、公平、安全保障、人間の尊厳が確保された条件の下で行われる仕事、つまりディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)は、包摂のカギを握り、社会正義を導くものと言えます。けれども世界の状況は深刻な懸念を抱かせるものとなっています。  経済格差の拡大は続き、所得上位層1割の収入は世界の合計所得の3~4割に達するのに対し、最貧困層1割の収入は全体の2~7%に過ぎません。

 2013年においてもなお、就業者全体の26.7%に当たる9億3,900万人が1日2ドル以下で暮らしをやりくりしています。失業と働く貧困層(ワーキング・プア)の未来に直面し、数百万人の若者が経済・社会進歩の約束に対する希望を失いかけています。

 この状況を悪化させるものとして、基礎的な社会的保護の欠如も幅広く見られます。数百万の人々が許容できない労働条件に服し、基本的な権利の否定を受けています。

 国連は今年、人身取引と現代の奴隷制、つまり、基本的な権利と自由の否定に光を当てています。

 今日でも約2,100万人の男性、女性、子どもが農場や搾取工場の中、漁船の上、性産業や個人の家庭内で非人間的な状況下で働くことを強いられています。彼らが流した汗は年間1,500万ドルの違法利益を生み出しています。

 暴力的な紛争時には、とりわけ女性や子どもには誘拐されて奴隷として売られる危険があります。強制労働が一家あるいは一つの地域社会全体を数世代にわたって絶望的な貧困状態に留めている場合もあります。

 この状況を変えなくてはいけないという認識が高まってきており、強制労働の事例を文書に記録し、この問題に取り組む優れた経験の蓄積が進んでいます。

 強制労働をなくすには総合的な取り組みが求められます。政府、個々の使用者と使用者団体、労働組合、市民団体のそれぞれが、脆弱な人々の保護、権利擁護、地位向上において、そしてすべての人にディーセント・ワークの機会を形成する上で果たすべき役割があります。

 ILOの強制労働条約(第29号)の2014年の議定書は、講じ得る予防措置を定めると共に強制労働の被害者が補償などの実効的な救済策を利用できるよう確保することを政府に求めています。

 不可避なことでもなく、言い訳の余地もありません。献身的な努力並びに正しい政策及び制度を伴えば強制労働は止めることができます。これを現実のものとするために手を組みましょう。

 世界社会正義の日に当たり、ILOは仕事の世界を通じて社会正義に向けて働き続けることをここに改めて公約します。