国際障害者デー

ILO事務局長声明:持続可能な開発に向けて科学技術が提示する有望な前途

声明 | 2014/12/03

 2014年の国際障害者デー(12月3日)は「持続可能な開発に向けて科学技術が提示する有望な前途」をテーマに掲げています。実際、科学技術は世界全体で10億人を超えると見られる、何らかの障害を抱える人々にかつてないほどの独立性と柔軟性を与える可能性があります。10月末に開かれたILOの「ビジネスと障害グローバル・ネットワーク」の会合でも障害者の職場への包摂を示す事例が様々な企業から発表されましたが、その多くで情報通信技術(ICT)が重要な役割を演じていました。国際デーに際して発表した以下の英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は、デジタル・デバイド(情報格差)の解消は障害者の経済・社会参画において重要な役割を演じると説き、科学技術が提示する有望な前途がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を希望する障害者の願いを実現させるものとなるよう取り組むことに向けたILOの公約を改めて示しました。

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 何らかの形態の障害がある人は今日、世界全体で10億人を超えています。冷厳な現実として、障害を有する人の割合は上昇こそすれ、下がってはいません。しかし、とりわけ仕事の世界において障害を打破し、障害者に得られる機会と選択肢を増す上で科学技術は非常に有望な前途を提示しています。こういった理由から、今年のテーマである「持続可能な開発に向けて科学技術が提示する有望な前途」は非常に時宜を得たものと言えます。

 情報通信技術(ICT)は目もくらむようなスピードで進歩しており、私たちの働き方、暮らし方、コミュニケーションの方法を変化させています。ICTはより速い情報交換、作業の自動化、より高い接続性を可能にします。今では人々は場所を移動することなしに地球上のあらゆる場所から共同で同時に働くことができます。ICTは私たちの地平を広げ、暮らしを楽にしました。

 しかし、障害者にとって科学技術が提示する有望な前途は単なる便利以上のものがあります。これは障害者が労働市場で前進し、より大きな機会が与えられるために必要なかつてなかったほどの独立性と柔軟性を与える可能性があります。

 しかしながら、この進歩の利益を得る機会の点では、依然として低所得国・高所得国間、そして国内でも様々な集団間におけるデジタル・デバイド(情報格差)が残っています。障害者はとりわけ途上国では、ICTが提示する解決策が包摂的な形で設計されていないか、あるいはまた、一部の人々が必要とする支援装置が手に入らないか高すぎて手が出ないためにしばしば置き去りにされています。

 こういった科学技術を選好する積極的労働市場措置が包摂的で、障害者を対象とすることを確実にしなくてはなりません。デジタル・デバイドの解消は障害者の経済及び社会への参画を可能にする上で重要な役割を演じることでしょう。これは何よりもまず人権の問題ですが、障害者の労働市場からの排除は私たちの経済にとって高くつくため、経済問題でもあります。

 包摂が可能であることを私たちは知っています。ILOの「ビジネスと障害グローバル・ネットワーク」が最近開いた会議では、企業の多くの好例に光が当てられ、障害者を実効的に労働力に組み込む方法が示されました。この戦略の多くでICTが重要な役割を演じていました。このような包摂を企業の普通の慣行とし、企業の持続可能性を構成する重要な要素の一つにしなくてはなりません。

 障害問題はまた、地球全体の開発を構成する要素の一つにする必要があります。2015年以降の開発課題の準備過程で、障害者についてのものを含み、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が中心的な関心事項として登場しました。これは2015年以降に誰も置き去りにしないことを目指すならば、すべての人について就労とディーセント・ワークの機会を促進することが必要不可欠となることを思い起こさせる重要な点です。私たちはこの努力を支えるできる限りのことを行う用意があります。

 私たち自身も障害問題の前進に向けた公約を新たにし、新しい障害者包摂戦略と行動計画を間もなく発表する予定です。これは障害が確実に、平等促進に向けた私たちの広報唱道活動と横断的政策の重要な構成要素となることを目指して作られています。

 ILOはまた、模範として、障害者を包摂する組織内慣行を促進することによってこの分野を率いていくつもりです。国連諸機関内におけるこの種のものとしては初めて、2013年に実施された障害者の包摂に関する職員調査から見出された事項は、私たちが障害者の模範的な雇い主となるよう努めることを可能にするものです。

 私たちの加盟国政労使、国連諸機関、市民社会と連携し、ILOは科学技術が約束する前途がディーセント・ワークを求める障害者の願いを満足させるものとなるよう努力することを約束します。