2014年国際青少年デー(8月12日)

ILO事務局長声明:若者のメンタルヘルスは私たち皆にとって重要

声明 | 2014/08/12

 「メンタルヘルスは重要」をテーマとする2014年の国際青少年デー(8月12日)に際して発表した以下のような英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は、失業や働いていても貧しい状態など、若者にとってのストレス要因が多い現状でこのテーマは時宜を得たものと評価し、若者にアイデンティティーを意識させるには人間らしく働きがいのある安定した仕事が必要不可欠な役割を演じると説いています。

 また、国際デーに際して、ILOが事務局を務める若年者就業ネットワーク(YEN)がアフリカで展開している「若者から若者へ基金(Y2Y基金)」の活動を紹介する広報動画が作成されました。アフリカでは仕事のない若者が1,500万人を超え、働いている若者も多くが1日2ドル未満で暮らしています。この公募型助成基金は、ニッチ市場における若者の起業を支援することによって若者の就業機会の創出を目指す革新的なプロジェクトを実施する若者の率いる非営利団体(NPO)に資金協力を行っています。基金の活動を通じて既に2,000人以上に職場が提供されています。

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 仕事のない若者は今日、世界全体で約7,500万人に達し、インフォーマル経済で生存をかけて懸命に働き、なおも極度の貧困状態で暮らす若者は少なくとも2億2,000万人を数えると見られます。若者が仕事を失う確率はより年長の人々の平均3倍に達し、4倍や5倍になっているところもあります。この他に、労働市場とのつながりが切れてしまっている若者も多数存在します。

 若者の就業危機は多次元的な危機であり、疑いなく今は若者にとってはストレスの多い時代であり、若い女性にとっては時に一層そうであると言えます。したがって、今年の国際青少年デーのテーマである「メンタルヘルスは重要」は、時宜を得たものであります。

 失業または不完全就業が幅広く持続するとのシナリオは、若者がますます絶望感・無力感を募らせ、高度に脆弱な状態に取り残される事態をもたらす可能性があります。近年、若者の間でメンタルヘルスの問題が広がっている兆候があります。例えば、経済協力開発機構(OECD)加盟国の多くで、最大で若者の4人に1人が問題を抱えています。さらにまた、例えば(しばしば強要されて)武力紛争における兵士として活動したり、児童売春に従事するといった(危険で有害な)児童労働などの状況にある若者の中には精神衛生上の問題(心的外傷後ストレス障害PTSDなど)を抱えるようになる者もいます。

 メンタルヘルスの問題を抱える者を含み、不利な立場にある若者は雇用市場で特に困難に直面します。深刻なメンタルヘルス問題を抱える若者は他の若者よりも雇用される可能性が低く、非労働力化する可能性が高くなり、働いている場合には低賃金職に就く可能性が高くなります。高い転職率と自らの障害について雇い主に告げたがらないことから、こういった若者は情緒不安定になり、職業人生全体を通じて脆弱な状態に置かれるかもしれません。

 就労も就学もしていないニート状態の若者は、抑うつ状態その他の種類のメンタルヘルス問題に特に弱く、これは翻って学習能力やまともな仕事を見つける能力に悪影響を与えます。

 人間らしく働きがいのある安定した仕事は、若者にアイデンティティー意識、帰属感、方向感覚を与える上で必要不可欠な役割を演じます。メンタルヘルス問題を抱える若者を社会や労働市場に組み込むことは可能であり、生産的なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)のための機会拡充の努力の中でこういった人々を忘れてはなりません。加えて、若者に労働市場への移行における多くの課題を克服する適切な支援と手段が提供されたならば、多くのメンタルヘルス問題を防止または削減することができます。こういった理由からILOはこのような若者を対象とし、就労初期段階におけるコーチングや心理社会的カウンセリング、キャリア相談などの支援サービスを伴う労働市場措置の策定と実行を支持するものです。

 若者のメンタルヘルスは私たち皆にとって重要です。この点に留意して若者の就労のための政策や事業計画を構築しようではありませんか。