「あきこの部屋」第48回 コロナウイルスの影響で世界の約2,500万人が職を失う恐れ

新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)の感染者はますます増え、既に20万人を超えたと言われています。ILOはこの度、この大流行による経済・労働危機が失業者数を世界全体で約2,500万人増加させる可能性を示す仮推計を発表しましたので後ほど紹介します。

東京では3月14日に開花した桜は3月22日にすでに満開を迎えましたが、今年は、日本人の大好きな桜の下での宴会は禁止されています。ジュネーブのILO本部では3月理事会を中止し、職員は在宅勤務としましたが、ILO駐日事務所職員も当面、原則在宅勤務とさせていただくことになりました。ご不便をおかけしますが、用件は担当者あて(ご不明の場合はホームページ上の連絡先)メールでお願いいたします。

この中で、2020年度予算が成立しました。ILOに対する日本国政府の分担金(アメリカ、中国についで3位)及び任意拠出金が含まれています。また、日本国政府は、モザンビークのサイクロン被害に対する支援として、農村部の道路復旧に充てられる54万5454米ドルをILOに拠出しました。

ILOと全国社会保険労務士会連合会は3月23日にアジア諸国への社会保険労務士制度の導入に向けた技術協力などを内容とする覚書を締結しました。この地域の社会的保護の拡大への貢献が期待されます。さらに、駐日事務所では「公正な人材募集・斡旋に関する一般原則及び実務指針ならびに募集・斡旋手数料及び関連費用の定義」及びILO/UN Womenが発表した移民労働者に対する一般の人々の意識についてまとめた調査の概要について、日本語版を完成させました。また、今月は世界各地のILO専門職・空席募集のご案内が出されましたので、皆さんの応募をお待ちしています。

さて、新型肺炎コロナウイルスに関するILOの仮推計を紹介します。仮評価資料『コロナウイルスと仕事の世界:影響と対応(英語) 』は、同時に、2008~09年の世界金融危機時のような国際的に調整を図った政策対応が行われれば、世界的な失業に対する影響はずっと小さくなるだろうと、大規模な緊急措置の実施を提案しています。

緊急措置は、職場の労働者保護、景気・雇用刺激策、仕事・所得支援策の3本柱で構成され、社会的保護の拡大、雇用維持支援(短時間労働、有給休暇、その他の助成金)、零細・中小企業も対象とした財政援助・税額免除などを内容としています。加えて、財政・金融政策措置や特定経済部門を対象とした融資・金融支援も提案されています。

労働市場に対する影響は複数のシナリオをもとに推計し、失業者数は世界全体で2019年の基準値である1億8,800万人から、最も低い場合で530万人、最も高い場合で2,470万人増加すると見積もりました。ちなみに、2008~09年の世界金融危機時には失業者数は世界全体で2,200万人増加しました。

ウイルスの大流行が経済に与える影響は労働時間や賃金の減少という形で現われるため、大規模な不完全就業の増加も予想されます。途上国ではしばしば自営業者が変化の影響を吸収するクッションとして機能しますが、サービス提供者などの人の移動や物の移動に制限が課せられているため、今回は望めないかもしれません。就業者の減少は、2020年末までの労働者の大規模な収入減(推定8,600億ドル~3.4兆ドル)を意味します。これは消費の下落につながり、企業や経済の先行きにさらに影響を与えるでしょう。

経済活動の低下が所得に与える負担は貧困線の近辺あるいはその下の労働者に破壊的な影響を与えるため、働く貧困層の大幅な増加も予想されます。ILOは1月に発表した定期刊行物(WESO) で2020年には働く貧困層が世界全体で1,400万人減少すると予想していましたが、新たな推計では520万人の減少しか見込めず、当初の推計より880万~3,500万人増加する見通しを示しています。

雇用危機の影響は、一部の集団に対して不均等に大きく、不平等が拡大する可能性も指摘しています。とりわけ若者や高齢労働者といった保護の度合いが低く、低賃金の仕事に就く人々、社会的保護や権利の欠如によって弱い立場にある移民、影響が大きな産業部門や低賃金の仕事に過度に多く就く傾向がある女性などが含まれます。

ガイ・ライダーILO事務局長は、「今必要なのはリーダーシップと決意」であり、さらに、危機時に損害を緩和し、公衆の信頼を回復する助けになり得る二つの重要なツールとして、社会対話と国際労働基準を挙げています。

概説資料にはコロナウイルスが仕事の世界に与えている影響の推計に加え、政府による時差出勤やテレワークの推進、日本経済団体連合会(経団連)による会員企業の対策情報収集・提供、日本労働組合総連合会(連合)による緊急労働相談ホットライン開設など、日本の政労使の取り組みも含む世界各国の対応策の一例が紹介されています。