2019年9-11月 ILO駐日事務所インターンシップ修了者の声

Name:YT
Career direction:International Development focusing on Industrial development,  TVET and skill development.
Internship period:September 2019 - November 2019 (Three months)


インターンシップを始めたきっかけ

大学卒業後、開発途上国の発展に寄与すべく電機メーカーでの海外営業に携わりましたが、より最終裨益者の顔が見える活動がしたいと感じ、数年の勤務後に退職し青年海外協力隊(JOCV)としてアフリカでのボランティア活動に参加しました。

同地では主に小型農機具職人さんの技術・生計向上支援を行うプロジェクトに携わりました。この経験から民間セクターで働く人々のスキルアップや職業訓練の重要性を知り、雇用創出や労働政策を通した新興国の開発に興味を持つようになりました。

帰国後に大学院に進学し、貧困という定義やそのために行われる様々な施策とその効果の測定方法等を学んだ後に、インフォーマル経済に従事し不完全雇用の状態に苦しむ人々に対するプロジェクトの成功要因を分析する論文を執筆しました。

その執筆過程でILOのプロジェクトレポートや研究論文を参照することが多々あり、「ILOという組織についてもっと理解を深め、将来的にはILOで働いて途上国の労働者を応援できる仕事がしたい!」と考え、インターンシップに応募しました。


インターンシップでの業務内容

インターンシップでは主に三つの活動に従事しました。まず一つ目は広報活動です。SNSやブログ、メーリングリスト等を通して、ILO駐日事務所が行っているイベントの告知/概要報告やILOが出版している書籍のブリーフレポート、自分が興味のある分野におけるトピック紹介、インターン募集の宣伝等々を行いました。特にSNSでの広報については、FACEBOOKページ設立や職員の方々のインタビューシリーズの執筆等の企画・実行を行いました。前者においては詳細な記載項目作成や運営方法決定、後者においては代表や職員の方々への企画説明から記事執筆までを実施させていただきました。

また、Twitterやブログ記事を使った広報活動に関しても、日々自らILOの活動や条約を調べ、興味のあるトピックに関して情報発信を実施しました。
加えて、インターンによるSNS広報活動が多角化したことで運用方法を再確認し、長期的に運用できるように一定のルールを設けるべきだと考え、それらの使い分けや決裁取得コミュニケーションルート等を記載した「ILOインターン広報媒体運用規則」を作成も行いました。

二つ目はイベントの運営補助です。私の在籍期間ではTICAD関連イベントは終わっていたものの、日本協同組合連携機構(JCA)とのスタディーツアー報告会イベント、オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会とのサステナビリティフォーラム、OECD・EUとのResponsible Supply Chains in Asia(RSCA)関連イベントなど全部で計5つのイベントの準備・開催の補助をさせて頂くことが出来ました。準備期間においては配布資料の翻訳や準備、時にはリサーチとドラフト作成まで携わらせていただきました。また、開催日当日は来場者案内や写真撮影等を主に行いました。
[ILO駐日事務所正式刊行物に写真が採用されることも!] 


最後に、逐次依頼される資料作成や翻訳、リサーチ業務などがあります。例えば、日本政府のSDGs実施指針改定案(骨子)に対するパブリックコメントをILOとして出すドラフト作成を担当させて頂いた際には、改定案内容を確認しILOとしてプレゼンスを出すためにどのようにコメントが出来るかなどを考えました。同件はSDGsの内容を再確認し、日本政府の方針やILOのそれに対するスタンスを確認し、文書化するいい機会となりました。
また、資料翻訳ではILO本部から英語で出された様々な出版物・資料を日本語で出版し日本国民の皆様へ届けるために翻訳素案を作成しました。翻訳作業を通してILOの最新の活動や報告書を理解することが出来る機会となりますし、リサーチを行い資料作成する業務、ILOの扱うトピックを詳細に勉強できる有意義な時間でした。

インターンシップを通して有意義だったこと

本当に様々なことを経験させていただきましたが、特に以下点について本インターンシップは有意義であったと感じます。

まず、ILOの活動についてより多角的に幅広い視点からの理解を深められたことです。Twitterやブログを通した広報活動や翻訳・リサーチ業務を行うことで、ILOの活動やポリシーを勉強する必要がありますし、国際動向などの周辺情報も調査する必要があります。故に、ILOの活動とその活動が行われている意義やコンテクストも理解することができて、より俯瞰・包括的にILOについて理解することが出来ました。
また、イベントの運営補助を通して関係者のみの会議からパブリックセミナーまで国際的な会合に参加し、ほかの国際機関や政府、企業の方々の意見や議論を伺うことが出来たことも、インターンならではの非常に貴重な機会であったと感じます。現場や政府の声を生で聴くことで、そのトピックに対する関係者の熱量を感じることが出来ました。

加えて、国際会議やパブリックセミナーを主催する際のロジスティクスや抑えておくべきポイントなど、将来の業務に近々で役立つだろう実践的なノウハウを知ることもできました。関係者の様々な意向によって直前まで流動的な会議の場合、会場や物品の準備を前広に予測して行う必要があり、現場でフレキシブルに対応されている職員の方から計画性をもちつつ柔軟に運営することの大切さを学ぶことが出来ました。[運営補助をした国際会議の一幕]

さらに、ILO駐日事務所の職員の方々をはじめ、本部や他地方事務所からいらっしゃった職員の方々、そしてセミナーや会議に参加された関係者の方々とコネクションを作ることが出来たことは他の民間企業や国内行政機関のインターンシップでは経験することが出来ない、今後のキャリアにおける大きな財産となる貴重なものでした。例えば、あるILO職員の方はたまたま出身大学院と指導教官が同じであり、そこから話が盛り上がってご連絡先をいただくことが出来ました。すべてのコネクションが今後のキャリアに通じるかというとそれは不明瞭ですが、少なくともこのインターン期間にコネクションを増やすことのできる機会は多くいただけました。また、国連大学ビル内の他国際機関職員の方々や同じような志を持つインターン生とつながりを持つことが出来たのもうれしいことでした。

所感

何よりも、ILO駐日事務所の方々はインターン生の自主性を重視して下さり、活動に対して寛容です。故に、「こういうことがやりたい」「この分野について何かあればやらせてください」と申し出れば、少人数の事務所ということもありフレキシブルに活動をさせて頂き、かつ多くのことを任せて頂けます。自分としてはインターンという立場ながら職員の方と話し合いながら様々なことをさせて頂くことができ、とても楽しかったです。

また、インターンシップの業務を通してだけでなく、ILO職員や関係者の方々からお話を伺い、時には議論をさせて頂くことで、ILOやそのほか労働・福祉に関して活動されている方々のマインドセットやお仕事に対する姿勢、プロジェクトに対して考えられていること等を知ることが出来たことも貴重な経験でした。

自分が大学院での勉学を通して知り、開発途上国が発展し貧困をなくすためには必要であろうと考えたディーセント・ワークというものを、世界中で実現すべく様々なことに取り組んでいる方々にお会いし、お仕事の一端にでも関わらせて頂けたこの経験は自分の将来の方向性を位置づける有意義な機会でした。
[インターンのデスクと同期の様子]

ILO駐日事務所におけるインターンシップは、ILOの活動をさらに理解するということだけでなく広報におけるノウハウ習得や国際機関へのエントリーポイント、様々なレベルのコネクション形成等という観点からも非常に有意義なものでありました。社会人であろうと学生であろうと、国際機関やILOでの業務を経験していない人にとって、ILOの活動の一端を担いディーセント・ワークや人間中心の仕事の未来の実現に貢献しながら、今後のキャリアを方向付ける上でとても有用な機会かと思料しますので、チャンスがあれば多くの方々にぜひ参加していただきたいと感じています。

最後になりましたが、自己都合により週3日、3ヶ月間という短い期間にもかかわらずインターンシップ期間中に業務や人脈形成等における様々なご支援をいただき、多くのご指導ご鞭撻を賜りましたILO駐日事務所職員の方々にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。