「あきこの部屋」第39回 創設100周年記念ILO総会閉幕

まだ、一部の地方は入梅していないようですが、東京は雨模様が続いています。

大変残念なお知らせです。ILO条約勧告適用専門家委員会の委員長を務めて頂くなど、長年にわたりILOの活動に貢献していただいた横田洋三先生が、6月12日にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。

5月31日に上智大学で開催した「外国人労働者のディーセント・ワークと人権をめぐる課題と労使の対応」と題するILO100周年記念 労働CSRセミナー には200人を超える方々に御参加いただき、この課題に対する感心の高さが明らかになりました。

6月26日、衆参両議院でそれぞれ「100周年を迎えたILOに対するわが国の一層の貢献に関する決議」が採択され、根本厚生労働大臣がご挨拶されました。御尽力いただいた議員の先生方に感謝いたします。

日本が関係するプロジェクトを2つウェブで紹介しています。1つはアフリカのサプライチェーンにおける児童労働撲滅の促進をめざすACCEL(アクセル)アフリカプロジェクトで、日本人担当者のエッセーも国連広報センター(UNIC) 『TICADリレーエッセー“国連・アフリカ・日本をつなぐ情熱”』に掲載されたところです。もう1つは、日本政府拠出による情報通信技術分野のスキル不足と国境を越える労働力移動についてのプロジェクトの最初の成果物の紹介です。また、私自身は神戸市立外国語大学で、「雇用の促進と人間の保護」をテーマに開催された日本大学英語模擬国連大会(JUEMUN 2019)で、基調講演をさせていただきました。国連の活動に関心を持つ学生の増加を期待します。

さて 今月は21日に閉幕した第108回ILO総会 について紹介します。創立100周年の記念すべき年に当たる今総会には、アントニオ・グテーレス国連事務総長、労働者グループ代表のバロウITUC書記長、使用者グループ代表のサントスIOE事務局長、国家元首・政府首脳級など40人あまりのハイレベルゲストの講演が行われました。

総会では、昨年の第107回ILO総会で第一次討議が行われた、「仕事における暴力・ハラスメント条約(第190号)」及び同名の付属する勧告(第206号)が採択されました。条約は賛成439票、反対7票、棄権30票、勧告は賛成397票、反対12票、棄権44票でした。ILOで新しい基準が採択されると、加盟国は12カ月以内に権限ある機関に提出しなければならないことになっており、日本では政府が仮訳を作成して国会に提出します。

条約・勧告の内容はまた詳しく説明する機会があると思いますが、条約は、「暴力とハラスメント」について、「人権侵害または虐待となり得、平等な機会に対する脅威であり、許容できず、ディーセント・ワークと相容れない」ものであり、「身体的、精神的、性的または経済的に危害を与えることを目的とするか、そのような危害を引き起こす、あるいは引き起こす可能性が高い」行動様式及び行為またはその脅威と定義しています。

基準は、対象とされる労働者(雇用関係にない者や働いていない者も含む)、暴力やハラスメントの発生場所(職場のみではない)に関して非常に広く定義し、また、被害者または加害者として第三者が関連する場合もあることを認めています。

総会は「2019年の仕事の未来に向けたILO創立100周年記念宣言 」も採択しました。

この宣言は、変化する仕事の世界の中でILOに付託された任務の重要性と妥当性を再確認するものです。仕事の未来を人間中心のレンズを通して見るこの宣言は、全ての労働者の十分な保護の確保を目的とした仕事に係わる制度機構の強化、そして包摂的かつ持続的な経済成長並びに生産的な完全雇用の促進を通じて、人々が仕事の世界における変化から利益を得られるようにすることに力点を置いています。

宣言には以下のような行動分野が含まれています。◇機会及び待遇における実効性のある男女平等の実現、◇効果的な生涯学習と全ての人への良質な教育、◇全ての人に開かれた包括的で持続可能な社会的保護の機会、◇労働者の基本的な権利の尊重、◇十分な最低賃金、◇労働時間の上限、◇労働安全衛生、◇ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、生産性を高める政策、◇適切なプライバシーと個人データの保護を確保し、プラットフォーム労働など仕事のデジタル変容に関連した仕事の世界の機会と課題に対応する政策と措置。

さて、今月末には大阪でG20が開催され、ILO事務局長も参加いたします。