あきこの部屋第23回 「移民労働者の社会正義を達成するには」

2018年2月28日

平昌オリンピックが終了し、パラリンピックの開始まで後少しです。東京大会が開催される2020年まで後2年になりました。ILOが100周年を迎える2019年は、日本初の主要20カ国・地域(G20)首脳会議が大阪市、G20財務相・中央銀行総裁会議が福岡市、アフリカ開発会議(TICAD)が横浜市で開催されることが決まっており、同年に行われる、ほかの200首脳会議についても近々開催地が発表される予定です。

さて、節分の2月3日、大阪市で開催された第25回ワン・ワールド・フェスティバルという歴史ある国際協力イベントの中の「誰もおいてけぼりせぇへん~今、わたしにできること~SDGsを普段の生活から考える」というワークショップで「SDGsとILO-今わたしにできること」と題して発表させていただきました。ワークショップの開始前と終了時では参加者のSDGsについての理解度がおかげ様で大幅に上がった模様です。

2月の中旬には、日本からは清家篤慶応大学前塾長が委員として参加されている「仕事の未来世界委員会」の第2回大会がILO本部で開催され、個人と社会にとっての仕事など、6テーマについて検討が行われ、12の概況資料も作成されました。また、この世界委員会が4月30日まで一般市民に意見を募集しているインセプションレポートについて、皆様のご参考にしていただきたく、日本語版を作成いたしました。

ところで、2月20日は世界社会正義の日とされており、ガイ・ライダーILO事務局長が移民労働者に焦点を当てた声明を発表したので、今月はそれを紹介します。世界全体で移民労働者は1億5,000万人を数え、搾取や差別、暴力に直面し、最も基本的な保護さえも欠いている人も多いのが現状です。女性は移民労働者の44%を占めますが、特にそうなりやすいようです。

今日の移住のほとんどが直接または間接的にディーセント・ワーク(働きがいのある、人間らしい仕事)を求めていますが、多くは、非公式経済において、労働者としての権利その他の人権が尊重されず、低賃金で安全衛生面で問題がある仕事につかざるを得ない状況です。仕事を得るためには、賃金1年分を超える高額の斡旋手数料を支払わなくてはならない場合もしばしばあります。移民労働者の公正な待遇は、社会の基本構造を保ち、開発を持続可能にするカギを握ると言えます。

労働力移動が適正に統治され、公正で実効性があったならば、移民労働者やその家族、受入国社会に利益と機会がもたらされることでしょう。労働需給を均衡させ、あらゆる技能レベルにおいて技能の開発と移転を促進し、社会的保護制度に寄与し、事業の革新を育み、地域社会を文化的・社会的に豊かにすることにもつながります。

良い統治は移住経路や地域を横断する強い協力を育みます。これは国際労働基準、とりわけ就労に係わる基本的な原則と権利、そしてILO及び国連の関連する条約に導かれるべきです。ILOの「労働力移動に関する多国間枠組み」(日本語版)や「公正な募集・斡旋のための一般原則と運用指針」(英語)はさらなる手引きを提供しています。

ILOは、グローバル、地域、各国のあらゆるレベルにおいて、公正な労働力移動の統治の枠組みが採用されることを奨励しています。これには、労働事項担当省庁、企業と労使団体を関与させた、政府全体に及ぶ包括的かつ総合的な取り組みが含まれます。
国連総会は2016年に、移住の統治を改善し、課題に取り組み、持続可能な開発に対する移民の貢献を強めるため、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル ・コンパクト」を策定することを決定しました。

労働力移動は移民と受入国社会の双方に利益となるウィン・ウィンの状態にできるはずです。この協約を国際社会としてどのように策定し、加盟国による実施をいかに支援するかが、労働力移動の今後の道を決める助けになることでしょう。