カナダ、中国、ドイツ、インド、インドネシア、シンガポールとタイにおける情報通信技術(ICT)分野のスキル不足と国際的な労働力移動について

情報通信技術(ICT)は、経済部門において鍵を握る産業であり、雇用創出の源でもあるとともに、デジタル経済のバックボーンといえる。しかし、現在、多くの国が高度なICT スキルを有する人材の不足に直面しており、経済成長にも影響を与える恐れがある。しかしながら、適切な政策が実施され、的を絞った教育訓練への投資が行われ、労働力移動のガバナンスが改善された場合には、デジタル経済は、世界、地域及び国レベルでの、包摂的なデジタル経済におけるディーセント・ワークの促進に、大きく貢献するものと考える。
ILO のプロジェクト「ICT における仕事の未来」では、高度ICT 人材に対するニーズ予測、ICT 教育訓練への投資拡大などのスキル不足への取組、国際的な労働力移動のより適切な管理について詳細な調査を実施した。
本報告書は、プロジェクトの報告書3 部シリーズの最終報告書となる。本報告書は、前2冊の報告書を要約したものであり、カナダ、中国、ドイツ、インド、インドネシア、シンガポール、タイの高度ICT 人材のスキル不足、能力開発、労働力移動に焦点を置いている。この2 つの報告書は、広範囲に及ぶ文献レビューと調査対象となった7 カ国の各国政府、訓練機関、大学、研究機関、労使団体、人材紹介会社、ICT 部門の民間企業の代表者の協力の下に実施したインタビュー調査に基づいて作成されている。本報告書は、それら2 つの報告書に示された分析結果に基づいて作成した(ILO、2019 / ILO、2020)。
本報告書は、(a)ICT セクター、ICT 労働市場及びICT 労働者の労働力移動の動向、(b)スキルを有する労働者への需要予測と現在及び予想されるデジタル経済におけるスキルのミスマッチ、(c)ICT の教育訓練の改善に向けた戦略の3 点について概観している。該当する公式データが入手できない場合があったことや、統計当局が使用する定義が国によって異なっていたことから、調査対象となった7 カ国におけるICT セクターの動向や雇用状況を比較分析することは困難であった点に留意する必要がある。
また、本報告書では、これまでの調査から得た重要な知見を盛り込み、デジタル経済においてディーセント・ワークの機会を促進していくために、現行の取組や政策をどのように発展させていけばよいのかに関して、今後取り得る政策対応も示している。