論評:輸出加工区
輸出加工区でディーセント・ワークと労働者の権利を促進する方法
2017年11月20日
輸出加工区について統一した国際的な定義はありません。ILOでは、「外国からの投資を招く目的をもって設けられた、特別の奨励措置を伴う工業地区であり、輸入された材料にある程度の加工を施して再輸出する区域」と定義しています。様々な定義に共通の特徴を一つ挙げるとすれば、特別区外の経済と交流を保ちつつも、地理的にも規制や制度機構的に例外的な場所という意味でも「飛び地である点」と言うことができます。定義が多様であることは、輸出加工区に関する話し合いを妨げる要因にもなっています。
同じことから輸出加工区数の推定も困難で、ILOがその全世界的な数を数えたのは最も最近でも2006年に遡り、これ以降の包括的な調査は行われていませんが、当時の数は3,500地区に上りました。これには様々な名称で呼ばれ、タイプも異なる約20の類型が含まれているものの、バングラデシュの5,000以上に上る単一工場輸出加工区は除外されています。
輸出加工区とは、つまり、政府が外国からの直接投資と輸出を促進するために設けた飛び地であり、この地区に持ち込まれる投入財やここからの輸出には、国際市場における生産者の競争力を後押しするために、しばしば免税措置が施されています。さらに時には、労働分野に関するものも含み、適用される規制が異なる場合があります。
経済発展や社会開発の点では必ずしも成功と言えないものもありますが、輸出加工区は輸出主導型経済成長を目指す国の間でますます一般的に見られるようになってきています。最も普及している奨励措置には、事業税の減額や輸入原材料の免税措置などの税制上の特別扱いや、より効果的で効率的な行政体制などがあります。輸出加工区は時に開発対策に用いられ、失業者を減らすために不利な地域や町に設けられることもあります。したがって、輸出加工区が雇用を生み、労働者の収入が経済発展をさらに刺激する場合もあると言うことはできます。
しかしながら、一部の政府の間に、労働者の権利の保護を弱め、国内労働法の適用除外や特例扱いを通じて輸出加工区に投資を誘致しようとする傾向が見られます。最も一般的に除去される権利は、結社の自由と団体交渉、採用における差別や不当解雇から保護される権利です。
2016年の第105回ILO総会で行われたグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を巡る討議で採択された結論は、グローバル・サプライチェーンと結び付きのある多くの輸出加工区で顕著なディーセント・ワークの欠如が見られる事実に光を当てました。ILO理事会はこれを受けて、政府、労働者、使用者の三者が世界各地から参加する専門家会議を開催し、輸出加工区で働く労働者の就労に係わる基本的な原則及び権利並びにディーセント・ワークを促進する可能な行動、そしてその基盤となる好事例の特定を試みることをILO事務局に求めました。
このようにして2017年11月21~23日にジュネーブのILO本部で開かれる「輸出加工区労働者のディーセント・ワーク促進並びに就労に係わる基本的な権利及び原則の保護専門家会議」は、輸出加工区におけるディーセント・ワークの促進に関連した課題と機会について話し合い、輸出加工区でILOの社会的な課題をさらに促進するために政府、労使団体が講じるべきさらなる行動に関する新たな手引きを示すことが期待されます。このような取り組みをILOをはじめとする多国間機関が支え得る方法に関する議論も行われる予定です。
輸出加工区におけるディーセント・ワークの欠如に対処する際にカギを握る一つの要素は政府と企業を納得させることです。輸出加工区の企業がディーセント・ワークに好影響を与えると期待することは妥当です。輸出加工区とそれを取り巻く国内経済の両方で労働者の権利侵害が一般的に見られる国では、より大きな市場改革の培養施設として輸出加工区を魅力的に見せているその隔絶性から得られる論理的帰結として、この地はまた労働法や司法を改革する際の最初の一歩ともなり得ます。
会議の討議資料として準備された報告書には、輸出加工区における就労に係わる基本的な権利の促進に向けて既に講じられている幾つかの国の行動の例が示されています。例えば、輸出加工区における結社の自由と団体交渉に関する苦情に応えて政府が団体交渉の便宜を図る輸出加工区政労使労働委員会を設けたニカラグアでは、既に全国で約5万人の労働者に適用される計20の労働協約が締結されています。西アフリカのトーゴでも輸出加工区における社会対話を後押しする取り組みが効を奏し、今では労働組合と使用者団体の間で真の団体交渉が行われています。
会議を主催するILO企業局のビック・バン・ブーレン局長は、2017年11月20日付の英文論評で21日から始まる会議について要旨以上のように説明しています。