G20財務・労働雇用大臣会合
経済・雇用成長の押し上げ、不平等の縮小を優先事項とするG20会合の決定をILO歓迎/弱い経済成長と弱い雇用回復の悪循環に捕らえられたG20諸国
2015年09月04日
経済・雇用成長の増進、不平等の縮小を優先事項とするG20労働・雇用大臣会合の決定をILO歓迎
| G20諸国の労働・雇用大臣(アンカラ・2015年9月4日) |
トルコの首都アンカラで9月3~4日に開かれた主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合は、多くのG20諸国で見られる不平等拡大の長期的な傾向は現在のそして潜在的な成長にマイナスの影響を与えており、G20サミットが掲げる強固で持続可能かつ均衡のある成長の目標と一致していないことを確認し、この傾向が生産性の伸びと比較して低い賃金成長と一部G20諸国で見られる労働分配率の低下あるいは低迷に関連している場合が多いことを認め、「包摂的で力強い成長の促進に向けたすべての人のための良質の仕事の創出、技能への投資、不平等の縮小」と題する宣言を採択しました。会合に出席したガイ・ライダーILO事務局長は、労働・雇用大臣会合が「賃金設定の仕組み、社会対話機構、社会的保護制度、雇用サービス、積極的労働市場政策」を用いた政策集合の実行に合意した点を強調した上で、より良い仕事、より包摂的な社会、より力強い経済成長の創出と共に不平等問題への取り組みを強く公約した今回の決定を「意義深く時宜を得たもの」と評価しました。
労働・雇用大臣会合はまた、G20サミットに向けて、労働市場に永久に取り残されてしまう危険性が最も高い若者の割合を2025年までに15%減らすG20諸国の目標の採択を検討するよう提案しました。ライダー事務局長はこれについて、「人間らしく働きがいのある仕事を求める現在の若者世代の希望が満たされておらず、社会に大きな損害が発生していることに対する世界的な懸念に対処するもの」と歓迎しました。事務局長はまた、雇用を増大し、仕事の質を高める政策に関する議論も行われ、就労に係わる基本的な原則と権利を尊重し、収入の質の促進、労働市場における不安定性の縮小、良好な労働条件と健康的な職場の促進という三つの側面を通じて仕事の質を改善することへの合意が達成されたことについても歓迎を示しました。
今回は使用者と労働組合の国際団体に加え、複数の市民団体にもG20諸国大臣との社会対話の場が設けられましたが、使用者団体(B20)と労働者団体(L20)はここに、個別の声明に加え、包括的な共同提案も提出しました。労使合意による政策優先事項の提出について、ライダー事務局長は、「この非常に困難な時代における行動について政府が建設的なコンセンサスを見出す大きな助けになった」と評価しました。
弱い経済成長と弱い雇用回復の悪循環に捕らえられたG20諸国
ライダー事務局長は労働・雇用大臣会合に加え、4日に開かれた労働雇用・財務大臣合同会合にも出席しました。事務局長は会合において、「弱い景気回復が相変わらずG20諸国の労働市場に重くのしかかっており、一方で人間らしく働きがいのある仕事が依然として不足していることは回復を傷つけている」と指摘した上で、今回労働・雇用大臣と財務大臣の合同会合が開かれたことについて、「労働市場の需給両面に作用するように政策イニシアチブを統合し、それによってG20の掲げる2%成長の野望路線への復帰を助け、成長をより包摂的なものにするのに大いに役に立つ可能性がある」と評価しました。
G20の会合に向けてILOと経済協力開発機構(OECD)、世界銀行グループが共同で準備した報告書『G20 labour markets in 2015: Strengthening the link between growth and employment(2015年のG20諸国の労働市場:成長と雇用のつながりの強化・英語)』は、G20諸国で現在見られる弱い経済成長と不十分な雇用創出のパターンは、弱い賃金成長と弱い所得成長の自己補強的循環を反映するものであり、これは総需要の不足、景況感の悪化と企業投資の低下、労働市場の不十分な回復につながっていると警告しています。仕事不足と賃金成長の大幅な低迷の組み合わせはほとんどのG20諸国における不平等の拡大と労働分配率の低下を招いています。報告書は雇用創出低迷の主な原因を雇用弾性値の低下よりもむしろ経済成長自体の弱さに置いています。2000~07年に平均4.1%の経済成長を示したG20諸国の過去3年間の平均経済成長率は3.2%に留まり、2007~09年に5.1%から6.0%への上昇を示したG20諸国の平均失業率は2014年にも5.8%と高止まりを続けています。これは、G20諸国全体で雇用量が危機開始前よりも推定5,000万人分減ったことを意味します。
雇用面の課題は量だけでなく、質についても見られ、データが得られるG20諸国の多くで2009~14年に創出された仕事のほとんどがパートタイム雇用となっています。パートタイムの仕事はフルタイムの仕事よりも一般に平均収入も安定度も低く、社会的保護の適用も弱いため、家計消費や総需要を支える力は弱くなっています。新興国では、総就業者に占める個人事業主と寄与的家族従業者の割合で示される脆弱な就業者の割合が2014年に2009年比3.9ポイント減の51%と、好ましい動勢を示してはいるものの、依然として多くの割合の労働者がこの就業形態に留まっていることは、インフォーマル性、低賃金、低生産性の問題はなかなか解消されない課題であり続けていることを示しています。
労働・雇用大臣会合の開会式で報告書の内容を紹介する演説を行ったライダー事務局長は、低成長→低雇用創出→賃金と所得の伸びの低迷→低投資の悪循環の反転に向けて、「複数の産業部門にわたる、包括的な取り組み」の必要性を訴え、不平等の拡大傾向を逆転させる政策は景気の回復を加速させ、より包摂的な成長を達成できる可能性を指摘しました。
ILO、OECD、世界銀行グループが会合に向けて準備した報告書には他に以下の2冊があります。
- Income inequality and labour income share in G20 countries: Trends, impacts and causes(G20諸国における所得不平等と労働分配率の趨勢、影響、原因・英語)
G20諸国では不平等の拡大と労働分配率低下の一般的な傾向が示されていますが、報告書はこの結果と成長に対する影響を分析し、この傾向の原因を探っています。所得の不平等は最先進国では相当に拡大したものの、新興国ではばらつきがあります。ほとんどのG20諸国で見られる近年の労働分配率の低下傾向は全体的な不平等の拡大に寄与していることが示されています。 - The contribution of labour mobility to economic growth(経済成長に寄与する労働力移動・英語)
G20諸国には世界の移民の55%に相当する1億2,800万人が住むと見られ、移民労働者が母国に送る送金額のほぼ8割がG20諸国を経由するとされています。このように国際的な人の移動はG20諸国にとって重要であり、送出国、受入国、そして移民労働者にとっての経済及び開発上の利益を最大化する上でG20諸国は重要な役割を演じられることが推測されます。報告書は労働力移動が経済成長にどのように寄与しているかに焦点を当て、注意点を論じています。
この報告書に言及して、事務局長は、「会合開催地から遠くない場所で起こりつつある劇的な出来事と周知の状況から引き起こされた人の移動」が労働市場に避けられない影響を与えるであろうことを指摘し、これは一国の問題ではなく、共同の国際的な問題であることに注意を喚起し、「遅かれ早かれ私たちはこれに取り組まなくてはならない」として、G20が、より良いより公正な労働力移動の管理がいかに送出国・受入国双方により力強い成長を生み出すことができるかに関する話し合いに加え、この問題を検討する決意をしたことを評価しました。
労働者・組合の権利改善方法についてILO事務局長がトルコの労働団体と懇談
| トルコの労働団体と懇談するライダーILO事務局長(アンカラ・2015年9月2日) |
現職ILO事務局長としては22年ぶりにトルコを訪れたライダー事務局長はまた、3日間にわたる滞在初日の2日にアンカラで複数の労働組合連合のトップと会談し、仕事の世界を巡る国内外の最近の動向に関して意見を交換しました。会合にはトルコ労働組合連盟(TÜRK-İŞ)、トルコ真正労働連盟(HAK-İŞ)、トルコ進歩労働組合連盟(DİSK)、公務員労働組合連盟(MEMUR-SEN)、トルコ公務員組合連盟(KAMU-SEN)、公務労働者組合連盟(KESK)の6労働者団体の会長が出席しました。
懇談では国際労働基準に沿って労働者及び組合の権利を効果的に改善する方法など、ILOと組合の共通の関心事項に焦点が当てられました。ライダー事務局長はG20会合の議題にも上がっている、仕事の世界に係わる世界の動向や政策の傾向に簡単に触れた上で、シリア難民の流入や労働災害、社会対話の必要性などの課題を含み、トルコの動向を常に見守っており、適宜対応を行っていることを紹介し、現在進行中の技術援助プロジェクトや検討段階にある新たなイニシアチブを通じてこのような問題への対処を支援していくつもりであると説明しました。さらに、「未来の仕事の世界が今日のものと大きく異なるであろうことは明白」として、変遷の型を最もうまく管理し、形作るためにはその理解が必要と説き、引き続きの協力と専門的な知見の提供を改めて約束した上で、ILOでも自らの活動ができる限り政労使の方々と乖離せず、その役に立つものになるよう確保するために絶えず活動の改善・強化を図る必要があることに気づいていると述べました。
労働団体側は労働・雇用問題に関する見解や懸念、労働組合の権利行使に関わり直面している課題を紹介し、労働安全衛生やシリア難民危機が労働市場に与える影響について懸念していることを明らかにしました。
不平等問題に対するG20の取り組み開始を歓迎するポラスキーILO副事務局長
| サンドラ・ポラスキーILO副事務局長 |
G20労働・雇用大臣会合は、各国の環境に適した政策の組み合わせを実行することによって拡大しつつある不平等問題、そして必要な場合には低下しつつある労働分配率に取り組むことに合意する最終宣言を採択しましたが、サンドラ・ポラスキーILO政策担当副事務局長は、このような成長・雇用の後押し、不平等縮小に向けたG20諸国労働・雇用大臣の強い公約を「正しい選択」と評価し、不平等問題に取り組み、より良い仕事を創出することは、より包摂的な社会の構築、より力強い経済成長の助けになると説いています。
会合で承認された優先的に検討されるべき政策リストには、最低賃金や団体交渉の強化などといった適切な賃金設定の仕組みの積極的な活用、社会的保護制度、不平等問題に対処する効果的な租税政策、脆弱なまたは排除されている集団をより良い仕事と結びつける積極的労働市場政策及び雇用サービスの効果的な活用などが含まれています。宣言とそれに付属する詳細な提案を11月にアンタリヤで開かれるG20サミットに検討を求めて提出することによって、G20諸国の労働・雇用大臣は域内諸国のほとんどで見られる弱い総需要の底流にある雇用不振や賃金低迷などの一連の要素に取り組むことを通じて仕事を豊かに生む成長を優先させることを提案しています。
不平等は私たちの時代を特徴付ける課題です。例えば、米国では1979~2007年の約30年間にわたり、合計国民配当所得のほぼ半分が所得階層上位1%の最富裕層に集中しており、欧州では賃金と資本を合わせた所得分布上位10%が国民所得の35%を握っているといったように、一部の国では不平等が驚くほど拡大しています。欧州における不平等の拡大が近年の同地域の経済成長のほぼ5%をそぎ落としたと推定する最近の経済協力開発機構(OECD)の調査結果をはじめ、ILOのものを含む複数の調査研究が不平等は社会の不正義や分断を生み出すだけでなく、経済成長にも害を及ぼすことを示しています。
不平等拡大の主な原因として、国内総生産(GDP)全体に占める勤労者の勤労収入比率、つまり労働分配率の低下を挙げることができます。失業や不完全就業に加え、ほとんどのG20諸国でこの原因として賃金成長の大幅鈍化が指摘されています。不平等の根源は複雑で、ある程度世界的な力に左右されますが、選択された政策を反映するものでもあり、私たちは一つ一つの原因に対処できる政策手段を備えています。
今年のG20サミット主催国であるトルコは、労働大臣だけでは不平等問題に対処し、包摂を促進し、雇用と成長のつながりを強化することは不可能と認め、財務、経済、その他の省庁による補完的な取り組みが必要として、財務大臣との合同会合も開催しました。合同会合で発言の機会を与えられた労働組合及び使用者の国際団体はどちらも不平等の拡大に注意を喚起しました。
近年G20諸国における役割を拡大しているILOは、不平等を抑制し、より包摂的な社会を醸成し、人々により良い仕事を創出できる可能性がある実証的証拠、政策選択肢、実践的な手段の提供において引き続き積極的な役割を演じていく所存です。
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以上は次の3点のアンカラ発英文記者発表及び論評の抄訳です。
- コミュニケーション・広報局による2015年9月4日付記者発表-経済・雇用成長の押し上げ、不平等の縮小を優先事項とするG20会合の決定をILO歓迎
- コミュニケーション・広報局による2015年9月4日付記者発表-弱い経済成長と弱い雇用回復の悪循環に捕らえられたG20諸国
- ILO駐トルコ事務所による2015年9月3日付記者発表-労働者・組合の権利改善方法についてILO事務局長がトルコの労働団体と懇談
- 論評-不平等問題に取り組み始めたG20