第108回ILO総会テーマ別フォーラム

第108回ILO総会テーマ別フォーラム:ディーセント・ワークを促進するように科学技術の変化を形作る方法を検討

2019年06月17日

 現在ジュネーブで開かれている第108回ILO総会では七つのテーマ別フォーラムが開催されています。6月17日に開かれた「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に向けた科学技術の道」と題するフォーラムでは、デジタル技術が仕事の世界を変える方法を管理してディーセント・ワークの創出につなげる方法について検討が行われました。デジタル労働がディーセント・ワークになるよう確保する方法、科学技術が発展する方向を形作るために政府や労使団体がすべきことなどといった事項が論じられました。新たな就労形態を規制する必要性やオンライン・プラットフォームなどで集められた労働者に関するデータを誰が所有するかの問題に絞って発言した参加者もいれば、正しい政策が策定されたとすれば未来は明るいとの楽観的な考えを示す参加者もいました。

 開会挨拶を行ったムサ・ウマルILO現地業務・パートナーシップ担当副事務局長は、データ保護やアルゴリズムによる人事管理など、科学技術を作り出したのは人間であるため、制御すべきなのも人間であると強調しました。その上で、「生産性向上、労働時間の短縮や骨折り仕事の削減、労働市場参加機会の拡大」に科学技術を用い得る可能性を指摘しました。

 基調講演を行ったインド・バンガロール市の非政府組織(NGO)「ITフォア・チェンジ」のパーミンダー・ジート・シン事務局長は、「振り子があまりにもデジタル資本の所有者に有利な方向に振れているのは否定しようのない事実です。労働者その他のデジタル経済で疎外されている行動主体の方向に引き戻す必要があります」と説いて、労働者が自分自身及び自分の仕事について集められたデータを制御できるべきことを強調しました。もう1人の基調講演者を務めたスペインのエルカノ王立研究所のアンドレス・オルテガ・クレイン上級研究員は、キャリア展望の点での分断は新たな種類の保護と安全保障を必要とするとして、現在進行中の移行期を管理する必要性を指摘して、社会契約を改革する必要を説きました。

 パネル討議には5人のパネリストが参加しました。仕事の未来世界委員会の委員を務めたカルロス・ロペス・ケープタウン大学名誉教授は、私たちが今目撃している状況を、「押し寄せて来ている膨大な量の変化に規制が対処できていないという事実を先着者らが利用しているという状況」と表現し、その結果、「眼前で展開している世界に対応していない形で生産を考えている」現状を指摘しました。ルワンダ中央労働組合(CESTRAR)のエリック・マンジ書記長は、労働組合の観点に立ち、「私たちが欲しているのはただ、技術変化が進む方向が、規制機関がなくてもいいといった方向、政府と使用者がもはや自分たちの義務を果たさなくてもいいといった方向を意味すべきではないということ」と説いて、「ディーセント・ワークの概念によって定められた道」を進むことを訴えました。国連のデジタル協力ハイレベルパネル事務局のアマンディープ・シン・ギル事務局長は、「事の心髄にあるのは政治経済学」として、政策環境が正しければ移行はより容易になり、公正な移行が見られるであろうものの、政治的に動かなければ、困難が生じる可能性を挙げました。開発のためのアラブNGOネットワーク(ANND)のメイ・マッキ調査研究・プログラム担当官は、「デジタル職業が人間らしく働きがいのある仕事になるという保障はありません。だから、デジタル経済を持続可能な開発に合わせたいと思うならば、科学技術のより良い統治が必要なのです」と唱えました。中国企業連合会のシュ・ホンレン事務局長は、「労働力は訓練や技能向上などを通じて、新たな趨勢に適応する能力を高めることができます。使用者も変化に適応するために態度を変える必要があります」として、変化への適応は態度の変化を意味するとした上で、全体的な楽観性を示しました。

 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。