第106回ILO総会

第106回ILO総会閉幕:危機、労働力移動、グリーン経済への移行がもたらす仕事の世界における課題に直面する用意ができたILO

2017年06月16日

ガイ・ライダーILO事務局長による第106回ILO総会閉会演説(英語)

 2017年6月5日からジュネーブのパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)で開かれていた第106回ILO総会は2週間の日程を終えて16日に閉幕しました。日本を含む187の加盟国から記録的な6,000人の政労使代表が参加したこのILOの年次総会では、紛争から立ち上がりつつある国々における平和と安定の促進や労働力移動の統治の強化、経済のグリーン化など、仕事の世界における重要な問題が審議されました。

 総会は、1944年に採択された「雇用(戦時より平時への過渡期)勧告(第71号)」の示す手引きを更新し、紛争及び災害からもたらされる現代の危機的状況に対する対応策を示し、基準の対象を従来の再建と回復より広げて予防と備えを含む形で同勧告を改正する新たな画期的勧告を、賛成378票、反対5票、棄権8票(日本は政労使共に賛成)で採択しました。今年は児童労働反対世界デー(6月12日)でも、紛争と災害が児童労働に与える影響に焦点を当てましたが、この「2017年の平和と強靱性のための雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関する勧告(第205号)」は、児童や年少者、女性や移動を強いられた人々などの脆弱な人口集団に特別の注意を払いつつ、紛争と災害が経済及び社会に与える壊滅的な影響を予防しそれに対応するための仕事の世界に関連した措置に焦点を当てた独特の規範的枠組みを提供するものとなっています。新たな基準の推進に向けた国際的なパートナーシップの強化を主導することをILO事務局長に求める付帯決議も同時に採択されました。

第106回ILO総会における第205号勧告の採択(英語)

 ガイ・ライダーILO事務局長は、閉会演説で、「新勧告の採択は複数のレベルで非常に重要」として、ILOには基準を頑健で妥当なものとするようそれを更新する用意があり、実際にそれができることを、疑う余地なく示したことや、危機や災害、強制移住の影響を受けた数百万の人々に対する仕事の世界からの貴重な答えであり、しかもこれらの人々の声に耳を傾けるだけでなく、これらの人々のためにこれらの人々と共に行動を起こしたことを重要な点に挙げました。

 総会は労働力移動に関する一般討議を行い、労働力移動の統治を強化する緊急性を認める結論と決議を採択しました。これは時宜を得た重要なテーマであるだけでなく、不可欠な事項でもあり、公正で効果的な労働力移動の統治は労働力移動の利益を最大化し、リスクと社会的費用を最小化する上でカギを握っています。各国の政策はそれぞれの国や移住回廊の現実に合わせて工夫される必要があるものの、社会対話に加えて、関連する政府機関同士のあらゆるレベルにおける協力が不可欠です。このような政労使間の対話は移民と自国労働者双方にディーセント・ワークの機会を確保しつつ、企業と労働者の変化するニーズに応える助けになります。採択された決議は、2018年に国連で予定されている「安全かつ秩序だった正規の移住のためのグローバル・コンパクト」の採択に至る過程を含み、労働力移動におけるディーセント・ワークの促進において主導的な役割を演じることなどをILOに求めています。

 労働力移動に関するILOの責任に総会の注意を喚起したライダー事務局長は、「あまりにもしばしば、移民と移住に対する政治的議論と公衆の態度の悪化や虐待の余地を許す幅広い統治不足」の存在を挙げた上で、「ILOの価値と基準に攻撃的な態度に一切譲歩せず、全ての関係当事者に移住の利益の実現を許す統治制度の構築において真の手引きとリーダーシップを提供すること」を国際社会に呼びかけました。

 今年の総会に討議資料として提出された事務局長報告は仕事と気候変動の問題を取り上げていますが、ライダー事務局長は、これに関する貴重な議論とパリ協定に対する多くの支持表明を歓迎しつつも、茶色の経済から緑の経済へと直線的に移行するわけではないことに注意を喚起して、政労使三者構成原則が実際に実りあるものであることを説き、この移行に際しての政労使間の社会対話の価値を強調しました。総会出席者はアラブ被占領地の労働者の状況を扱った事務局長報告付録についても意見を表明しました。

 1998年に採択された「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」と2008年に採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」のフォローアップ手続きに基づいて行われた、労働における基本的な原則と権利に関する討議の結果、世界中でILOの中核的労働基準をさらに推進する行動計画の準備をILO事務局長に求めることなどを内容とする決議と結論が採択されました。討議のたたき台となった報告書は2008年宣言の諸目標の達成と労働者の基本的な権利の推進のカギとして、政治的意思、労働市場の実効的な統治、政労使の包摂的な社会対話を挙げていますが、討議の結論はILOに対し、1998年宣言のフォローアップ及びILOの基準適用監視機構の活動と開発協力の相乗効果を追求することなどを求めています。

 基準適用委員会はILO加盟国によるILO条約・勧告の法及び実際面での適用状況を審査する権限を有する法律の専門家で構成される独立機関である条約勧告適用専門家委員会の報告書をもとに労働者の権利の実施に係わる問題を呈する24件の個別案件について審議を行い、それぞれについて結論を採択しました。また、総合調査をもとに労働安全衛生分野の基準について検討し、労働安全衛生の促進的枠組みの重要性を認め、2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)の批准と実施に向けたキャンペーンの展開などをILOに求めました。

 総会は名目ベースで現行予算を約2%下回る総額7億8,400万ドルの2018/19年度の事業計画/予算(賛成360票、反対なし、棄権2票)、4本の条約の廃止(1919年の夜業(婦人)条約(第4号)は賛成351票、反対3票、棄権8票、1921年の最低年齢(石炭夫及火夫)条約(第15号)は賛成352票、反対2票、棄権8票、1934年の夜業(婦人)条約(改正)(第41号)は賛成350票、反対4票、棄権8票、1939年の労働時間及び休息時間(路面運送)条約(第67号)は賛成348票、反対2票、棄権12票)、2本の条約の撤回(1929年の災害保護(仲仕)条約(第28号)は賛成348票、反対4票、棄権10票、1937年の最低年令(非工業的労務)条約(改正)(第60号)は賛成351票、反対3票、棄権8票)を採択し(日本はいずれについても政労使共に賛成)、2017~20年の理事を選出しました(日本からは日本経済団体連合会の松井博志労働法制本部参事が使用者側正理事、日本労働組合総連合会の郷野晶子参与が労働者側正理事に当選、日本政府は常任理事)。

 6月15日に開かれた仕事の世界サミットでは、働く女性により良い未来を形作る方法、そして仕事の世界に存在する女性に対する障害を克服するためには何が必要かについて意見交換が行われました。基調講演を行った、マルタ、モーリシャス、ネパールの3人の女性大統領は、仕事の世界における男女平等の前進に向けて取った具体的な行動を披露しました。総会初日にはウルグアイの大統領による特別演説も行われました。

 今年の総会の議長は、パナマのルイス・エルネスト・カルレス労働・労働力育成大臣、副議長は、ヨルダンのサジャ・S・マジャリ政府代表、スペインのホセ・マリア・ラカサ・アソ使用者代表、カナダのマリー・クラーク・ウォーカー労働者代表が務めました。

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 以上は次の2点の2017年6月16日付ジュネーブ発英文広報資料の抄訳です。