漁業条約

ILO漁業労働条約が実効性を発揮:南アフリカで初の漁船抑留例

2018年07月17日

 2017年11月6日に発効したILOの漁業労働条約(第188号)は、世界全体で3,800万人に及ぶ商業的漁業の従事者に漁船上で人間らしく働きがいのある労働条件を確保することを目指しており、批准国が自国の港に寄港した外国船舶(未批准国の船舶も含む)を立ち入り検査できるポートステートコントロールの規定を含んでいます。先般、ケープタウンに寄港していた380総トンの外国漁船の船員から労働条件に関する苦情の申し立てを受けた南アフリカ当局は同船を抑留して検査を行いました。その後、問題点を是正する措置を船舶所有者が講じたため、同船の抑留は6月末に解かれました。これは第188号条約に基づく寄港船舶の初の抑留例です。

 第188号条約は、勤務条件、居住設備と食料、労働安全衛生、医療、社会保障などについての規定を含んでいます。条約はすべての漁業者は漁船所有者または漁船所有者の代表者との間で、漁業者が理解できるような形で書かれており、報酬支払い方法や本国送還の権利などの勤務条件について規定する契約文書を締結していることを求めています。

 南アフリカ海上保安庁(SAMSA)が抑留後に行った検査からは、書類の不備、劣悪な居住設備、不十分な食料、船上の劣悪な安全衛生条件など、様々な問題が判明しました。労働契約が結ばれていた船員は2人に過ぎず、船員リストさえありませんでした。救命ブイは腐っていて交換の必要があり、錨は1個が行方不明で機能せず、安全衛生状態は一般的に非常に劣悪でした。船員らは捕獲した魚を手で引っ張り、重い荷物を魚の貯蔵設備まで運ばなくてはならないといった厳しい労働条件を申し立て、船を下りたいとさえ言っていました。特に懸念されたのは船舶の安定性であり、航海不適と宣言され、第一次検査の後にすべての船員は避難させられました。船舶の安定性の回復、修繕、その他の問題への対処を経て、船の抑留は解かれました。船舶所有者はまた、1万2,365ランド(約10万5,000円)の抑留手数料を支払いました。

 法律遵守の第一義的な責任は漁船の所有者と旗国にあるものの、寄港国における検査は漁船員の労働条件が人間らしく働きがいのあるものであるか否かを点検し、そのような条件を確保する船舶所有者を確保していない所有者との不当競争から守る働きがあります。

 ILO部門別政策局のブラント・ワグナー運輸・海事ユニット長は、「南アフリカの行動は、第188号条約は多くの漁船、多くの漁場で発生している漁業者酷使の問題に対処する手段として用いられ得る可能性を例示したもの」と評価し、「漁場の真の持続可能性を達成する取り組みの一環としてますます多くの加盟国がこの条約を批准し実行するようになれば条約の影響力と有効性は高まり、第188号条約の幅広い実施はやがて、魚の漁獲、販売、消費に係わるすべての人々の懸念事項であるところの船員の酷使をますます困難にすることでしょう」との期待を述べています。

 漁船員の多くが、危険、きつい、汚いの3K職場で働いており、これは船員の安全性、そして時には命を脅かすものとなっています。このような状況への取り組みはまた、強制労働や人身取引のような極端な問題の撤廃に向けた推進力を助けることと思われます。今回の船舶の検査に従事した南アフリカの検査官は第188号条約の教育効果を強調し、「漁船の代理人や船長、船員の教育に極めて有用なツール」と評価しています。

 以上はケープタウン発英文記者発表の抄訳です。

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