ILO新刊:保健経済
ILO新刊:必要不可欠な保健医療の確保には世界全体で数百万の雇用が必要
2016年12月09日
このたび発表されたILOの報告書によれば、持続可能な開発目標の一部として掲げられているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(万民に対する保健医療の適用)を達成し、人間の安全保障を確保するには、2016年現在、世界全体で約5,000万人分の人間らしく働きがいのある雇用機会が不足しており、今後15年の人口の高齢化に鑑みると、保健分野におけるグローバル・サプライチェーン(世界的供給網)で必要となる就業者数は8,400万人と、さらに増えると見られます。日本を含む世界185カ国の保健経済の雇用効果に関する新たなデータを示す新刊書『Health workforce: A global supply chain approach(グローバル・サプライチェーンの手法による保健労働力・英語)』は、保健分野の国内外のグローバル・サプライチェーンを通じて保健医療・保健サービスの提供に寄与している幅広い経済内の全ての労働者を含むというかつてない手法を用いて、世界全体で5,700万人に及ぶ無償労働者が見えない巨大な労働力として高技能保健労働者の大幅な不足を補填していることを明らかにしました。この大半が家族内の高齢者介護などのために就労をあきらめた女性で構成されています。
保健部門の就業者は世界全体で現在、約2億3,400万人を数えますが、このうち、医師や看護師、その他の保健医療職従事者は7,100万人余りに過ぎず、残りの7割が非保健職であり、しばしば保守や清掃、事務支援、インフォーマル・ケアなど、人間らしく働きがいのある労働条件を欠く低賃金労働者が含まれています。現在の傾向が続けば、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するには、保健医療労働者2,700万人、そして無償家族労働者を含む非保健職労働者5,700万人が新たに必要になると見られます。
報告書を作成したILO社会的保護局のイサベル・オルティス局長は、第4次産業革命によって一部の仕事が時代遅れとなったり、置き換えられる可能性を指摘しつつ、数百万人の雇用創出潜在力を秘めた保健医療サービスにおける不足している仕事の創出は、低技能労働者の失業水準が高く、保健医療サービスが不足している国を中心に、生活水準の改善、経済成長、経済開発をもたらす見込みを述べています。報告書を執筆したクセニア・シャイル=アトルンクILO保健政策調整官は、これは、保健雇用潜在力の91%が現在、仕事が包摂的な経済成長を後押しし、完全雇用の達成に寄与するであろう、アフリカ及びアジアの下位中・低所得国に集中しているためとし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた十分な投資が行われたとしたら、アフリカでは2016年現在で公式経済における就業者約1,500万人、アジアでは保健医療及び非保健職合わせて約2,900万人の就業者を生む潜在力が秘められており、この数字は2030年までにアフリカではさらに2,700万人、アジアでは3,900万人増えるとの予測を示しています。
グローバル・サプライチェーンと保健経済の視点を適用すると、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの投資が雇用相乗効果を生むことが示され、医師または看護職1人分への投資は保健職以外に2.3人の雇用を生むと見られます。
報告書は保健ニーズを満足するには、無償労働者を中心に、保健経済に関与する保健労働者以外の多数の人々を十分に考慮に入れる必要性を唱え、国連の持続可能な開発目標に向けた進展と持続可能な結果を達成するには、十分な給与の支払いと社会的保護の適用を含み、保健医療分野のグローバル・サプライチェーンと国内保健経済の全ての労働者の人間らしく働きがいのある労働条件に焦点を当てることが決定的に重要と説いています。シャイル=アトルンク調整官は、人間らしく働きがいのある雇用の潜在力を解き放つことによってユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた現在の政策を再考する必要性を指摘した上で、報告書がその必要性に光を当てている、インフォーマルな無償のケアの提供を人間らしく働きがいのある労働条件が確保された十分な数の高技能労働者の雇用に変えることは、高技能ケア労働者不在を理由として高齢の家族の面倒を見るために公式の仕事をあきらめた数百万人の女性と経済に直接的な好影響を与えるであろうと訴えています。
* * *
以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。