ILO新刊:中南米・カリブの雇用情勢

ILO新刊:中南米・カリブの失業率は2016年に上昇の見通し

2016年05月11日

 ILOと国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は共同刊行物『Employment situation in Latin America and the Caribbean(中南米・カリブの雇用情勢・英語)』を年2回発行していますが、5月11日に発表された最新号(2016年5月発行第14号)は、雇用創出の勢いの弱さを中心とした一部雇用指標の低迷と昨年よりも悪化が予想されている2016年のマクロ経済情勢・経済成長率を理由として、前年より0.5ポイント超上昇すると見られる都市失業率など中南米・カリブ地域の今年の労働市場は全般的に低迷するとの見通しを示しています。

 5月23~27日にメキシコ市で開催されるECLACの第36回会合では、このような労働市場の動向が分析され、包摂的な成長や人間らしく働きがいのある仕事に係わる目標を掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の地域レベルでのフォローアップに関する円卓会議が開かれ、ホセ・マヌエル・サラサールILO中南米・カリブ総局長も特別参加者として発表を行うことが予定されていますが、これに先立って発表された報告書は、「過去15年間の大半において地域に利益をもたらしてきた労働指標の継続的な向上の歩みが、より好ましくない世界のマクロ経済情勢の中で止まることになった」と記し、「これは短期的な危機の影響緩和措置のみならず、乏しい生産の多角化、生産性格差、高いインフォーマル性や不平等といったギャップや遅れに長期的に取り組む措置の重要性も強調している」と指摘しています。

 報告書は第1部で中南米・カリブ地域の2015年の労働市場の動向を概説し、第2部で2005~14年の農村部の動向分析を行っています。これは、この期間に労働市場全体で見られた改善が農村部でも記録されたかどうか、そして都市部と農村部の格差が縮小されたかどうか把握することを目的として行われました。

 2009年から下降を示してきた中南米・カリブ地域の平均失業率ですが、わずかながら縮小した地域の国内総生産(GDP)を主な理由として、2015年には上昇に転じ、前年を0.5ポイント上回る6.5%を記録しました。報告書は上昇の原因として求職者数の増加を挙げ、経済活動の勢いの弱さを反映するものとして給与労働の創出が弱く、必要な数の仕事が提供されなかったことを指摘しています。求人不足により、質の低さを一般的な特徴とする自営業者が増えたために、仕事の質は全地域的に低下しました。就業率は3年連続で0.4ポイントずつ低下しており、これは世帯当たりの賃金稼得者数の減少を意味します。この収入の減少は2015年に推定29.2%に達した地域の貧困率上昇において重要な役割を演じています。

 しかしながら、雇用・失業指標の悪化は地域全体に広がっている現象ではなく、2015年に失業率が上昇したのは中南米・カリブ19カ国中7カ国に過ぎず、9カ国では逆に低下し、3カ国で横ばいでした。一般に、経済活動やインフレ率に外部要素などの影響があった南米諸国よりもメキシコ、ドミニカ共和国といった中米・カリブ諸国の方で好ましい労働市場の動きがありました。

 農村地域について得られるデータからは、この地域も全体的な雇用の質と量の改善から利益を得ているものの、都市と農村の格差は縮小していないことが明らかになりました。報告書は農村部における人間らしく働きがいのある仕事の不足に対する取り組みを前進させるには、農業部門の生産性向上に加え、より大幅な近代化と生産の多角化が不可欠と結論づけ、加えて、農村就業のフォーマル化、社会的保護の改善、最低賃金その他の労働規則の遵守向上に寄与し、農村部出身の女性や若者の労働市場への参入を阻む障害を削減するために労働関連制度の強化を提案しています。

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 以上はILO南米南部ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所によるチリの首都サンティアゴ発英文記者発表の抄訳です。