ILO新刊:中南米・カリブの労働情勢

ILO新刊:中南米・カリブの労働関連指標の悪化が続く/農村部就労者は5,200万人

2016年10月19日

 ILO中南米・カリブ総局はこのたび、中南米・カリブの労働市場に関する新刊書を相次いで発表しました。

◎地域経済が縮小する中、中南米・カリブの労働関連指標の悪化が続く

 2016年10月19日に発表された国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)との共同刊行物『Coyuntura laboral en América Latina y el Caribe(中南米・カリブの労働情勢・西語)』の最新号(2016年10月発行第15号)は、2016年上半期の中南米・カリブの労働市場は引き続き地域経済縮小の影響を受け、失業率は大幅に上昇し、労働関連指標は総体的に悪化したことを示しています。

 本書は年2回発行されていますが、今年前半の中南米・カリブ地域の労働市場の動向を分析した最新号は、最新の予測では2016年にマイナス0.9%と、下落が予想されている地域の国内総生産(GDP)縮小の影響を受けて2016年上半期の都市部就業率は前年同期比0.6ポイント減を示し、労働力率の伸びと合わさって、地域の失業率は前年同期比1.6ポイント増と大きく上昇したと記しています。2016年後半にも地域レベルでの雇用情勢の大幅な改善は見込めず、地域GDPの縮小と労働需要に対するその影響によって前年より低い就業率が維持される可能性が高く、2014年に平均7.0%、2015年に7.4%を記録した都市部の顕在失業率は上昇を続け、2016年に8.6%に達すると予想されています。一方で、独立労働の形態を中心とした、非公式(インフォーマル)な仕事の拡大は数字上の影響緩和をもたらすものの、これは雇用の質の悪化を反映するものともなります。

 この状況は加重平均で相当の重みを持つブラジルの状況に強く影響を受けているものの、情報が得られる南米諸国はどこも、ペルーを除き、失業率は上昇しています。対して、中米・カリブ諸国は、パナマとトリニダード・トバゴを除き、失業率が低下しています。このような小地域間の著しい多様性は、雇用の質や就業率の年変動、公式(フォーマル)雇用の実質賃金といった他の指標にも見られます。

 報告書は第1部で地域の労働情勢を分析した後、第2部で中南米・カリブ諸国のグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)参加の度合いと人間らしく働きがいのある雇用に対するその影響を取り上げ、この地域の経済統合の度合いは他の地域に比べて限定的であることを示し、これは製品多角化の度合いが低いことを反映していると指摘しています。この点で、輸出が雇用に与える影響は、直接雇用よりも鉱業や食品製造業などの部門における間接雇用に強く見られます。報告書はまた、グローバル・サプライチェーンへの経済的参加を向上させた国々の例を論じ、これは雇用創出増、賃金上昇、フォーマル就業の増加といった手段を通じて社会の改善につながる可能性があると指摘しつつも、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の点から見た結果は、この過程を支える他の経済・労働・教育政策にも左右されるため、自動的には達成されないとも記しています。

◎中南米・カリブの農村部就労者は5,200万人

 コロンビアの首都ボゴタで2016年10月14日に発表した新刊書『Trabajar en el campo en el siglo XXI. Realidad y perspectivas del empleo rural en América Latina y el Caribe(21世紀に農村で働く:中南米・カリブの地方就労に関する現実と展望・西語)』は、中南米・カリブ地域では労働者の5人に1人が暮らす田舎の労働市場は都市部よりも脆弱な就労形態にある人が多く、賃金雇用は少なく、貧困発生率は高く都市部の2倍に達することを明らかにしています。

 中南米・カリブ地域の農村部における就労の実態と展望を労働の観点から初めて概観したこの新刊書は、域内14カ国の世帯調査をもとにした国別統計情報を含み、農村地帯で見られる生産性の伸びにもかかわらず、都市部で27%を記録する脆弱な就労形態にある労働者が農村部では少なくとも約56%に相当する2,700万人に達するといったように、都市と農村の間には就労状況における大きな違いが残っていることに光を当てています。農村部の平均失業率が3.1%と、都市部(6.9%)よりも低いことについては、高い貧困率(都市部23.8%に対して農村部46.2%)を理由とする働く必要性と教育機会の少なさが一因になっていると説明しています。

 農村部の労働条件は2005~14年の期間に一連の改善を示したものの、依然として格差は残っています。例えば、社会保障分野では健康保険や年金の加入率が増したと感じられているものの、いまだに前者については都市部62%に対して農村部はわずか37%、後者については都市部56%に対して農村部はわずか26%に留まっています。勤労所得に関しても都市部より高い伸びにもかかわらず、農村部の2014年の平均所得は都市部の68%相当額になっています。

 ホセ・マヌエル・サラサールILO中南米・カリブ総局長は、都市化や若者の減少と高齢者の増加、農業就業者数の減少と農業外職業従事者の増加といったように、今の農村部は20、30年前から大きく変化したことを指摘した上で、様々な進展にもかかわらず、大きな格差が残り、農村部に貧困、排除、非公式就労が集中している現状を説明し、この地域の労働者の所得の多くが勤労所得である以上、農村部の福祉と発展は労働市場、所得、就労状況における出来事に左右されることは明らかとしています。そして、農村部への投資割合が低いことが生産・社会インフラの様々な格差の一因であり、これは重要な生産性格差につながることを強調し、大きな遅れを避けるためにも労働者や自営業者を生産的な形で農村の労働市場に組み込むことに向けて公共政策の努力を倍加する必要性を説いています。

 報告書は土地所有や物理的基盤構造への投資、地域的な取り組みによる生産的な開発と多角化、農村部の小規模生産者を世界的サプライチェーン(供給網)と結びつける行動などを強調して、生産的な開発政策や教育・職業訓練への投資を含む一連の政策提案を行っています。農村労働者の訓練に関しては、技能認定、職能を基盤とした修了証書の授与、起業家研修などに加え、就労に関する公共政策の都市部への偏りを是正することを提案しています。労働者の保護、社会的保護に関しては、社会保障加入率の引き上げ、最低賃金政策の遵守、雇用契約の書面による公式化、労働監督の強化、労使団体の促進が提案されています。

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 以上は次の2点の英文記者発表の抄訳です。