ILO新刊:不平等と仕事の世界

ILO新刊『仕事の世界と不平等:労使関係と社会対話の役割』:欧州の不平等の理解と縮小

2017年02月23日

 2017年2月23~24日にベルギーの首都ブリュッセルで開かれるILOと欧州委員会(EC)共催の「仕事の世界と不平等:労使関係と社会対話の役割」会議に提出される同名のILOの報告書は、団体交渉慣行を下支えする労使関係制度と労働市場政策が欧州連合(EU)加盟国で観測される不平等水準に重要な影響を与えていることを見出しました。

 欧州全体の傾向に加え、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、バルト諸国、オランダ、英国に関する個別の章を含む報告書は、賃金だけでなく、労働時間や就職機会、訓練、昇進機会、社会的保護などの他の分野における不平等も分析し、複数の欧州諸国で団体交渉の衰退が低賃金職の増加と労働力内における不平等の拡大をもたらしていることを明らかにしています。逆に、スウェーデンやベルギーなどのように、より中央集権的なあるいは高度に調整された団体交渉制度がある国は、低賃金職や不安定雇用の増加、不平等拡大の防止に成功しています。

 報告書の編者を務めたILOのダニエル・ボーン=ホワイトヘッド上級経済専門官は、所得不平等が小さい国では社会対話の仕組みが強い傾向があり、これは男女賃金格差の縮小と非標準的な雇用形態にある従業員の労働条件の改善につながっていることを指摘しています。

 最低賃金も賃金不平等の制限に寄与する可能性がありますが、それもまた効果的な団体交渉と組み合わせられた場合に限ることも見出されています。例えば、英国やバルト諸国では、最低賃金が最底辺の賃金の引き上げに寄与したものの、労使関係制度のために賃金や労働条件を全体的に改善する波及効果は生まれませんでした。他方、方法はそれぞれ異なるものの、ベルギーやアイルランドのみならず、フランスやオランダにおいても、下限を定める最低賃金と強い社会対話の枠組みの組み合わせによって賃金や労働条件の観点から見た分散が抑えられてきました。低賃金職の増加と不平等拡大を阻止できた点でベルギーの成績は他の欧州諸国と比べて際立っていますが、他のほとんどのEU諸国よりも高いこの国の最低賃金は、底辺部分の縮小を助ける一方で、複層的な団体交渉の仕組みが賃金の全体的な分散の制限に寄与しています。

 ハインツ・コラーILO欧州・中央アジア総局長は、一部諸国で見られる社会対話の衰退を「懸念すべき」と指摘し、強い政策課題の必要性を訴えています。そして、経済成長と社会の結束を維持したいと望むならば、不平等を抑制するよう団体交渉を強化する必要があると説いています。

 会議にはギリシャ、アイルランド、ルクセンブルク、ポルトガルの労働大臣に加え、雇用・社会問題担当欧州委員も出席し、仕事の世界における不平等縮小に向けた社会対話と社会的パートナー(労使)の役割、より一般的には労使関係の可能な役割の探求を目指し、さらなる不平等を生むことなしに必要な改革を進めるのに成功している国やこの点でどんな種類の労使関係制度がより良い結果を出しているように見えるかなどといった事項を話し合います。

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 以上はILO欧州連合・ベネルクス諸国事務所によるブリュッセル発英文記者発表の抄訳です。