ILO新刊:中南米・カリブの労働概観2015年版
ILO新刊『中南米・カリブの労働概観』2015年版:2015年に域内失業者数は170万人増
2015年12月10日
| 報告書記者発表会模様 |
12月10日に発表されたILOの年次刊行物『Panorama laboral de América Latina y el Caribe(中南米・カリブの労働概観・西語)[英語翻訳版]』2015年版は、労働市場に対する景気減速の影響を反映するものとして、2015年に中南米・カリブ地域の失業率が5年ぶりに上昇に転じたことを示しています。景気減速と雇用創出速度低下の程度は国によって異なり、中米・メキシコのように失業率が低下したところもあるものの(2014年5.2%→2015年4.8%)、ブラジルを中心とした南米(2014年6.8%→2015年7.6%)、カリブ諸国(2014年8.2%→2015年8.5%)で上昇した結果、地域平均では6.7%(2014年6.2%)に上がり、失業者数は少なくとも170万人増え、約1,900万人に達したと見られます。中南米・カリブ地域の景気減速は今後数年は続くと見られるため、2016年の平均失業率はさらに6.9%に上昇すると予想されます。
報告書をまとめたILO中南米・カリブ総局のホセ・マヌエル・サラサール総局長は、3、4年前から始まり、2015年に深く落ち込んだ景気減速の累積効果を「スローモーションの危機」と表現し、懸念されるこの状況は域内諸国に数々の政策課題を提示していると述べています。仕事の質に関し、総局長は、得られる最新の統計ではインフォーマル(非公式)就業者数が1億3,000万人を数えることに言及した上で、賃金成長の鈍化、劣悪な労働条件と関連づけることができる自営業者の増加と雇用労働創出速度の低下を示す兆候があるとして、インフォーマル就業が増加している可能性を指摘しました。
新規失業者の半数以上を女性が占め、その失業率は2015年に男性の1.4倍の速度で8.2%に上昇しました(2014年7.7%)。報告書はこの説明として、女性の労働力率が上昇に転じたのに対して就業率が低迷していたことを挙げて、労働市場に参加する女性が増えたせいではないかとしています。数年間にわたって下降傾向にあった若者の失業率も上昇に転じ、中南米・カリブの平均失業率は2015年に15.3%(2014年14.5%)に達しました。ただし、こちらも全体の失業率の場合と同じく、国による違いが大きく、域内諸国の約半数では依然として改善が認められます。報告書は若者の就労の質と量を押し上げる政策が講じられない限り、新たな経済情勢によって状況がさらに悪化する可能性を警告しています。
報告書は、失業者とインフォーマル就業の増加傾向は、短期的には仕事と収入の保護を目指した社会・労働市場政策をもって管理すべきと記していますが、サラサール総局長は、今回の景気減速について、「中南米・カリブ諸国が世界経済の動きに過度に依存し続けており、したがってなおも域内で経済成長の源泉を育む必要があることを改めて示す証拠」と指摘し、「長期構造的問題に取り組む措置も求められる」として、中・長期的には、「生産構造の多角化、生産性上昇・企業成長の促進に向けた生産的な開発政策を設計・実行して、包摂的な成長のためにより多くのより良い仕事を創出する必要がある」と説いています。そして、この方向に向けた進歩を達成するには、様々な国で「政労使間の社会対話」を促進することが必要不可欠として、ビジョン共有の産物である「対話を通じた解」の必要性を強調しています。
報告書はほとんどの国について今年第3四半期までに得られるデータを収録しています。従来は主要都市の失業率を元に作成されていましたが、2015年版より全国データが用いられています。地域・世界の経済状況を踏まえた2015年の中南米・カリブ地域の労働市場の情勢に加え、特別テーマとして、この地域における家事労働フォーマル(公式)化の経験をまとめています。
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以上はILOカリブ・ディーセント・ワーク・チーム兼国別事務所によるリマ発英文記者発表の抄訳です。