ILO新刊:労働力移動

ILO新刊『中南米・カリブの労働力移動』:労働力移動統治の仕組みを改善する時は今

2016年08月30日

中南米・カリブの主な移民の流れ(西語)

 2015年に発表されたILOの推計によれば、世界全体で1億5,000万人を数える移民労働者の27%に相当する4,100万人近くが米州(北米3,700万人、中南米・カリブ430万人)で暮らしているとされます。8月30日にメキシコシティで発表されたILOの新刊書『中南米・カリブの労働力移動(La migración laboral en América Latina y el Caribe・西語)』は、過去6年間に320万人から430万人に増えた域内移民労働者に加え、さらに多くが他の地域に流出しており、これは緊急に取り組むべき課題と機会を意味すると記しています。中南米・カリブには、域内諸国間に九つ、米国及びスペインに向かう流れが二つといった、計11の移民の主な流れが存在します。この流れは経済の相互依存関係と労働市場の変化に伴って絶えず進化し、その数、動き、複雑さは増してきています。米国の移民4,500万人中2,100万人以上が中南米の出身です。スペインには同国在住外国人の22.6%に当たる130万人近い南米出身者が住んでいます。

 報告書の発表に当たり、ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長は、移住の主たる動機は仕事の機会を求めてのものであるのは確かであるにもかかわらず、移民政策は国境管理と国の安全保障の観点から見られることが多く、労働の側面が考慮に入れられていないこと、そして、雇用政策と労働力移動政策が明らかに分離していることを指摘して、相互に補完させることの緊急性を訴えました。

 域内には移民の動きから排除されている国はほとんどなく、送出国、経由国、受入国が混在する複雑な状況が存在します。総局長は、「これは課題を意味し、しばしば懸念や不安を生むものの、利用すべき機会でもある」として、「労働力移動をうまく扱えれば、受入国における包摂的な経済成長の維持・増大、送出国における貧困軽減が可能」と説き、緊急に優れた統治の仕組みによって労働力移動を正しく処理すると共に、この動きを仕事の世界のニーズと動きに結びつけることを提案しています。

 報告書は中南米・カリブ地域における移民の流れの特徴として、◇半分以上を女性が占めるという労働力移動の女性化、◇非正規・非公式移民労働者の高い割合、◇社会的保護適用の低さ、◇しばしば問題のある労働条件、◇虐待や搾取、差別にあう労働者の多さを指摘しています。

メキシコシティで報告書を発表するホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長(中央)

 「診断、戦略、地域におけるILOの活動路線」の副題を掲げる報告書の目的は、得られる乏しい情報を用いて、中南米・カリブの主な移民の流れに係わる公共・統治政策の弱点と課題を分析することです。報告書は地域の移住協定のばらつきと空隙、移民関連の制度や統治機構における労働や権利の視点の弱さ、移民政策と雇用政策の整合性の欠如を示し、移民戦略の策定に労働担当省庁や労使団体といった仕事の世界の利害関係者がもっと積極的に参加する必要性を説いています。また、移民労働者が組織化や団体交渉に十分に参加していないことを問題視しています。

 報告書は中南米・カリブ諸国に対して以下のような活動路線を提案しています。

  • 正規の安全で公平な移住の促進
  • 公正な募集・斡旋プロセスの促進
  • 移民労働者の公式化・労働条件改善
  • より良い移住の統治、より堅固な社会対話の促進
  • 権利の視点を用いた移住問題への取り組み
  • 雇用政策と労働力移動政策の関連性強化
  • ジェンダーの視点の促進、児童移民の保護、児童移民の労働防止
  • 移民労働者の開発に対する貢献についての啓発活動

 中南米・カリブ地域の移住問題を専門とするギエルモ・デマILO専門官は、多面的で大きな課題の存在を指摘した上で、様々な不備にもかかわらず人々は移動し続けているとして、この現実に関する情報と統計の改善がこの問題に対する取り組みのカギを握るとしています。サラサール=シリナチス総局長は、「移住の流れは何をもっても止められないのは歴史が示している」として、「労働者の到来に適応するのは受入社会にとって楽でないことも分かっている」としつつ、「この人的資源が我々の社会にとって表す機会と潜在力を活用する必要がある」と説いています。

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 以上はメキシコシティ発英文記者発表の抄訳です。