G20労働・雇用大臣会合

G20労働・雇用大臣会合の仕事の未来に関する公約をILO事務局長も評価

2018年09月07日

 2018年9月6~7日の日程でアルゼンチンのメンドサ市で開かれていた主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合は、仕事の世界に影響を与えている急速な変化に加え、生涯学習の再形成や社会的保護の強化の必要性、誰も置き去りにしない必要性を巡る議論を行い、包摂的な未来のためにディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進することを約す宣言に合意して閉幕しました。「公正かつ包摂的で持続可能な仕事の未来のための機会の醸成」と題する宣言は、革新的な技能政策の促進、社会的保護の強化、労働市場をより公平で包摂的なものとするために必要な公式(フォーマル)化に向けた公約を改めて示しています。宣言の付属文書として、「仕事の世界における現代の奴隷制、人身取引、強制労働、児童労働の根絶に向けたG20戦略」が承認され、障害者の労働市場参加の促進に向けた公約がなされ、女性が平等にデジタル経済に参加できるようにする必要性が認められました。

 会合に参加したガイ・ライダーILO事務局長は、「こういった課題にはグローバルな解決策が求められる」として、複数国が参加する機構は依然として世界で最も急を要する問題の多くを解決するのに比類なきほど適している強力な力であることを挙げた上で、G20のような複数国による話し合いの場は経済成長政策のみに限定されず、不平等に対する対応を優先させる必要があることを指摘し、「私たちは一緒に、成長と開発に賛同し、貧困と失業に反対する新たな国際的な合意を形成することが出来るし、そうしなくてはならない」と訴えました。

 宣言はまた、仕事の未来に創出されるであろう機会から誰もが利益を得るよう確保することを呼びかけ、これを達成する上で社会的保護が演じる決定的に重要な役割を認め、持続可能な成長に向けた国内戦略の先頭に人と仕事を据える必要性を強調しています。さらに、公正かつ包摂的で持続可能な仕事の未来を確保するために経済政策と社会政策の整合性を促進する必要性を強調し、ディーセント・ワークや包摂性、男女平等、就労に関わる基本的な原則と権利を保護する必要性を明記し、こういった目標を達成するカギを握るのは政府と社会的パートナーである労使との実効性ある社会対話であると記しています。

 ライダー事務局長は、宣言が誰も置き去りにしないような公平で包摂的な仕事の未来を形成する努力を強調している点を特に歓迎し、革新的な雇用・社会政策、とりわけ急速に変化する仕事の世界において男女平等に向けた進歩を加速し、技能ギャップに取り組む政策に向けた強い公約の存在を評価しました。

 今回はG20歴史上初めて、労働・雇用大臣と教育大臣の合同会議が6日に開かれました。成果文書である共同宣言には、企業が求めているものに労働者の技能が対応するよう確保するには、教育政策と雇用政策の調整が必須と記されています。また、人々が職場の変化にうまく適応できるよう職業人生を通じて技能再習得や技能向上の機会を促進することの重要性が強調され、教育と技能習得の機会における男女格差の縮小に向けたG20諸国の公約が再言されています。

 この共同宣言に対応してライダー事務局長は次のように指摘しています。「今後の技能開発ニーズを満足するには、伝統的な教育訓練制度の大幅な調整が必要です。もはや最初に取得した資格だけでは職業人生全体を過ごすには不十分であり、このことは私たちの望む仕事の未来を形成するために生涯学習モデルを再検討することを要請しています」。

 二つの宣言は11月30日~12月1日にブエノスアイレスで開かれるG20サミットに提出されます。

◎ライダー事務局長の発言

 ライダーILO事務局長は、教育・雇用大臣会合と雇用大臣会合の両方に出席し、生涯学習男女平等社会的保護について発言しました。

 教育・雇用大臣会合では生涯学習に絞った演説を行い、新たな概念の必要性を訴えました。今年6月に開かれたILOと経済協力開発機構(OECD)の合同作業部会用に準備された背景報告書『Global skills trends, training needs and lifelong learning strategies for the future of work(技能に関する世界的な趨勢、訓練ニーズ、仕事の未来のための生涯学習戦略・英語)』を元に、ライダー事務局長は、科学技術や人口構造、グローバル化、気候変動など、労働市場に変革的な変化をもたらしている主な要因は雇用構造や業務内容、必要な技能に影響を与えているため、私たちが望む仕事の未来を形成するに当たり、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保する政策を実行するという集団的な課題が存在し、これが最も顕著なのは技能開発の分野であるとして、労働力の効果的な技能再習得や技能向上には政府の強力なリーダーシップのみならず、労使を中心とする様々な利害関係者を共通の土台の上に結集させるために様々な省庁の集結が必要と説き、その点で今回の教育大臣と雇用大臣の合同会議の開催を正しい方向に向けた重要な一歩として評価しました。

 読み書き・計算能力といった基礎的な技能やさらなる学習の基盤として初期教育は決定的に重要ですが、G20諸国全体を通じて教育到達度の上昇が見られます。中程度の技能水準に対する需要は減少してきましたが、高技能労働力に対する高い需要は今後も続き、低技能労働力についてもある程度の需要増が見込まれます。認知力、容易に適応できる労働力に対する需要が増しつつあり、これは業務内容の複雑化に伴う強い中核的なスキル、そして職業人生を通じて学び、適応する意欲が高い人材に対する需要を増すことになると思われます。G20諸国では既に、高い認知力と社会的技能を有する人材の不足が指摘されています。

 このような展開は生涯学習に対する取り組み方の再考を促しています。もはや初期学習だけで一生通用することはなく、職業人生を通じて技能を補充する必要があり、私たちの望む未来を形成するには生涯学習のモデルと概念の再検討が要請されています。現在は成人学習への参加は限られており、企業や社会による費用負担は多くありません。その上、パートや派遣などの非標準的な雇用形態の増加が予想されますが、フルタイム勤務でない有期契約の労働者の訓練には企業が熱心でないことを示す調査結果も出ています。誰も置き去りにしないためには学習機会の活用と財源を個人だけに任せておいてはいけません。成人が訓練を続けられるよう公的財源を確保する緊急の必要性があります。労働者の訓練受講や使用者による訓練提供を後押しし、労働市場のニーズに沿った訓練提供が確保されるよう金銭的奨励措置も大切です。

 十分な資金を備え、学習者を中心に据え、権利に根ざした生涯学習制度を実行する公的政策が必要です。そのためには政府が一丸となって以下のような方策に取り組む必要があります。

  • 転職期間中の労働者を支援する積極的・消極的労働市場措置の実施
  • 正しい訓練を選択するための職業指導や子供のいる労働者が技能訓練を受けられるための保育サービスなどといった関連する支援制度の強化
  • 伝統的に訓練を受けることが少ない中小企業の労働者や低技能労働者に標的を定めた施策
  • 1)役割、責任、意思決定権限、目的の明確化、2)制度機構的なものを含む強固な相談の仕組み、3)資金配分に関する決定に対する影響力の行使、という三つの成功要素を基盤として、あらゆる政府レベルにおける調整に、より重点を置くこと
  • 政策が公正なだけでなく妥当で実践的であるよう確保するために統治の取り決めに社会的パートナー(労使)を関与させ、政労使の社会対話を確保する必要性

 このように説明した上で、事務局長は、生涯学習に対する新たな取り組み方として、総合的な統治・財源モデルを導入し、労働者個人と使用者のより良い関与を確保する地元及び地域レベルの調整に重点を置いた取り組みの必要性を説き、勤労生涯のどの時点でも訓練を受けられるような、権利に根ざした取り組み方が必須と結びました。

 以上はメンドサ発英文記者発表及び事務局長発表内容の抄訳です。