グリーン経済

雇用創出潜在力を秘めた電気・電子廃棄物の年間廃棄量は5,000万トン

2019年01月25日

 日本の環境省も参加する循環経済加速化プラットフォーム(PACE)の活動の一環として2019年1月24日にダボスで発表された新しい報告書は、電気・電子機器の廃棄量は毎年5,000万トン近くに達し、この重量はこれまでに生産された商用機全てを足したものよりも重く、原材料としての価値は625億ドルとなり、ほとんどの国の国内総生産(GDP)を上回ることを明らかにしています。このうち公式にリサイクルされるものは2割に満たず、代わって世界中で数百万の人々(中国だけでも60万人以上)が非公式に電気・電子廃棄物の回収、修繕、改造、解体、リサイクル、廃棄に携わっており、その多くが健康にも環境にも有害な労働条件下で行われていると指摘しています。

 ILO、電気通信連合(ITU)、国連環境計画(UNEP)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連調査訓練研究所(UNITAR)、国連大学(UNU)、バーゼル条約・ストックホルム条約事務局の7国連機関で構成される電気・電子廃棄物連合が、PACEを主催する世界経済フォーラム及び「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」の後援を得てまとめた、『A new circular vision for electronics: Time for a global reboot(電子機器の新たな循環型未来像:世界的な再起動の時は今・英語)』と題する報告書はさらに、より良い製造物追跡、小売店あるいは製造会社による廃品引き取り制、リースやレンタルなどの新たな事業モデルや新しい科学技術が、電子産業の漸進的な「非物質化」を支援する可能性を説き、今こそ「電気・電子廃棄物を再検討し、電子産業を再評価し、産業、消費者、労働者、人類の健康及び環境のためにこの仕組みを再起動させる時」と結んでいます。

 報告書はまた、今後の生産に必要不可欠になるものとして、原材料の効率性、リサイクル基盤構造、電子機器サプライチェーン(供給網)のニーズを満たすことを目的としたリサイクル材料の質量両方のスケールアップを挙げています。さらに、適正な政策の組み合わせで支えられ、正しい形で管理されたとしたら、電子産業部門は世界中で数百万人分の人間らしく働きがいのある仕事を生み出す可能性を指摘しています。そして、廃棄物が出ないように設計され、環境に対する影響を低減し、数百万人分のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を創出する電子機器循環経済の形成に向けて多国籍企業、中小企業、起業家、学界、労働組合、市民社会、利用者団体との協同を呼びかけています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、何千トンもの電気・電子廃棄物が世界の最も貧しい労働者によって自らの健康や命を危険にさらす最悪の条件下で処分されていることを指摘した上で、人々とこの惑星の両方のために機能する循環経済に向けて、「より良い電気・電子廃棄物戦略、環境基準、政労使間のより密接な協同」の必要性を説いています。

 WBCSDと世界経済フォーラムが後援し、国連の環境管理グループ(EMG)事務局が活動の調整役を務める電気・電子廃棄物連合は、加盟国及び締約国による電気・電子廃棄物の課題に対する取り組みへの、より効率的な支援と協力拡大を目指して誕生しました。

 ILOは今年4月9~11日にジュネーブの本部で政労使三者が集い、電気・電子廃棄物の管理におけるディーセント・ワークについて意見を交わすフォーラムを開催します。

◎電子機器の新たな循環型未来像

ガイ・ライダーILO事務局長及び趙厚麟ITU事務総局長(写真左から)

 ガイ・ライダーILO事務局長は、ILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2019年1月24日付の投稿記事として、国連電気・電子廃棄物連合に共に参加するITUの趙厚麟事務総局長と連名で、2018年の海洋プラスチック汚染に続き、2019年は電気・電子廃棄物に注目することを呼びかけ、今、行動を起こし、機器の再利用及び斬新な方法でのリサイクルによって廃棄物を減らし、持続可能な産業を生み出すことを提案する以下の英文記事を投稿しました。

 電子機器に対する人類の貪欲な要求と消費は世界最速の速さで成長する廃棄物の流れを生み出しています。このうちの幾つかは指数関数的に増加していますが、国連ではこれを「電気・電子廃棄物の津波」と呼んでいます。

 電子機器の増加は問題の一部であるものの、解決策の大きな一部となる可能性も秘めています。デジタル化が進み、より密接につながった世界は、新興国経済にかつてなかったほどの機会を提示し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた歩みを加速させる助けになることが期待されます。正しい取り組みによって、廃棄される貴重な鉱物、金属、資源を大幅に減らすことができ、産業や労働者だけでなく、人々の健康や環境にも多大な利益がもたらされる可能性があります。そのためには、この産業に、より循環型の未来像を至急適用することが決定的に重要です。

 こういった理由から現在、ITU、ILO、UNEPなどの電気・電子廃棄物連合参加機関を始めとした多くの国際機関がこの問題に真っ向から取り組むことを決定的に重要な業務に挙げています。例えば、ITUの加盟国は最近、世界の電気・電子廃棄物のリサイクル率を30%増やす目標を定めました。

 これには強力な経済的論拠もあります。新たに出された世界電気・電子廃棄物報告によれば、世界全体の使用済み機器の原材料価値は世界全体の銀鉱の年間生産高の3倍に当たる625億ドルに達するとされています。年間国内総生産(GDP)が、日々膨れ上がる世界の電気・電子廃棄物の山の価値を下回る国は120カ国以上に上ります。この貴重な資源の収穫によって排出される二酸化炭素量は、地殻を掘って新たな鉱物を得るよりも格段に低くなっています。これは意味のあることでもあります。携帯電話1トンに含まれる金の量は金鉱石1トンの100倍にもなります。作動する機器の方が明らかにそこに含まれる原材料よりも価値があるため、電子製品の寿命延長や電気部品の再利用ははるかに高い経済的利益をもたらします。資源の採取、利用、廃棄を行うのではなく、何度も再利用する循環電子機器の仕組みは持続可能で働きがいのある人間らしい仕事を創出し、産業に保留される価値を高めます。

 2018年に世界がようやく悟った大きな環境上の課題の一つが海洋プラスチック汚染であったなら、2019年には世論の流れを電気・電子廃棄物に向けることができるでしょうし、そうすべきです。毎年、5,000万トンという驚異的な数量の電気・電子廃棄物が生まれており、放っておけば、これは2050年までに2倍以上に増えて1億2,000万トンに達する可能性があります。5,000万トンがどのくらいの規模であるか想像するのは難しいかもしれませんが、これは人類がこれまでに建造した商用機を全て足した重量あるいはパリのエッフェル塔4,500基分に相当し、敷地面積でいうとニューヨークのマンハッタンがすっぽり入るほどになります。しかもこれは1年分に過ぎません。

 多くの場合インターネットにつながっている、電子機器をこよなく愛する私たちの思いが、モニター、ケーブル、チップ、マザーボードの山をますます急速に積み上げているのです。電子機器は今や地球上の人間の数を超え、価格の急落と需要の増加を反映し、2020年までに250~500億に増えると予想されています。

 世界全体で公式にリサイクルされている電気・電子廃棄物量は全体の2割に過ぎません。残りの8割は多くが焼却されるか埋め立てられています。世界中を駆け巡って世界で最も貧しい労働者の手で引きちぎられたり、焼かれたりしているものも数千トンに及びます。この粗雑な形の都市鉱業は人々の福祉に影響を与え、密かな公害を形成しています。

 解決策は既に分かっています。問題はそれを効果的に実施することです。まず第一に、電気・電子廃棄物のより良い管理戦略とグリーン基準がこの課題に取り組む助けになり得ます。この地球上の舞台に皆が集結することによって、機器の再利用あるいは斬新なリサイクルを通じて生成される廃棄物量を減らす持続可能な産業を作り上げることができます。これは新しい形態の雇用や経済活動、教育、貿易も生むことでしょう。

 自分たちが生み出す電気・電子廃棄物を扱う法律を制定した国は既に67カ国に上ります。アップル、グーグル、サムスン、その他多くのブランドが野心的なリサイクル目標、再利用・再生材料利用の目標を立てています。今こそ電子産業の非物質化を考える時です。機器をサービスとして扱うビジネスモデルがその一つの道かもしれません。これは消費者が高い初期費用なしに最新技術にアクセスするのを希望する場合に用い得る現行のリースモデルを拡張したものです。新たなオーナーシップモデルはメーカーが機器のライフサイクル全体を通じてあらゆる資源が最適に利用されることを確保するインセンティブとなるでしょう。クラウド・コンピューティングやモノのインターネット(IoT)などの技術変化も非物質化を助けることができます。消費者が信頼できる、より良い製品追跡の仕組みや引き取り制度も循環型グローバル・サプライチェーン(世界的供給網)に向けた重要な最初の一歩を構成します。

 広く行き渡っている直線的な「投入、生産、廃棄」モデルの方向を変えることが、私たちの望む循環経済の未来に向かう第一歩ですが、これには大胆な解決策、専門知識、奨励策、政策が今必要です。循環経済を機能させるには、企業家、投資家、学者、実業界及び労働界の指導者、立法関係者の全てが必要です。考えられる未来像の中には、革新的なビジネスモデルや逆向きのサプライチェーンモデル、循環設計、電気・電子廃棄物回収業者の安全性、非公式(インフォーマル)に働く電気・電子廃棄物処理業者を公式(フォーマル)化し、力を付ける方法なども含む必要があります。

 貴重な鉱物や金属が新たなプラスチックになることを私たちは望んでいません。これは公害ではなく、廃棄物でもないのです。これは私たちがようやくその全面的な価値を評価し始めたに過ぎない貴重な資源なのです。

 以上は次の2点の英文広報資料の抄訳です。