中東の移民労働者
移民労働者のビザ保証人制度の改革は中東の移民受入国を利する可能性があると説くILO新刊書『中東における移民労働者と雇用主の関係』
2017年05月08日
中東では労働力移動を司るあらゆる法、行政規則、規範、慣習を総称する保証人制度として「カファーラ」が一般的に用いられています。この制度の下では、移民労働者の入国及び合法的な居住資格はその契約期間を通じてカフィールと呼ばれる個々の保証人と結びつけられ、移民労働者は典型的に、雇用主の明示の許可を事前に得ない限り、入国も離職も転職も、そして時には出国さえもできないようになっています。
このたび発表されたILOの新刊書『Employer-migrant worker relationships in the Middle East: Exploring scope for internal labour market mobility and fair migration(中東における移民労働者と雇用主の関係:内部労働市場における流動性の余地と公正な移住の探求・英語)』は、この保証人制度の改革は受入国の経済のみならず移民労働者自身にも利益をもたらす可能性があることを示しています。
現在の制度は労使の力関係を不均等にし、労働者、とりわけ移民家事労働者を強制労働に陥りやすくさせると共に、入国や転職、滞在期間更新などの内部労働市場の流動性に係わる様々な側面の保証人による管理を可能にします。このような取り決めは雇用主にも大きな責任と同時にしばしば負担を課すものとなっています。報告書は、この問題に取り組むために追求できる代替的なあり方として、規制と保護の役割をより明確に政府に付与することを提案し、この改革は労働条件の改善や雇用主のニーズのより良い充足から経済の後押しや労働市場の生産性向上に至る幅広い利益をもたらすだろうと説いています。
既にアラブ首長国連邦では当事者どちらからも雇用関係を一方的に終了することを許す新たな命令が公布され、バーレーンとヨルダンでは一人の保証人の管理下に移民労働者が委ねられることをなくす柔軟なビザが導入されるといったように、明るい進展が見られます。報告書は移民労働者の脆弱性低減に向けて政府が検討できるであろう主要な政策改革として、◇労働者の滞在許可が特定の雇用主に結びつけられないことの確保、◇個々の労働者に自らの就労許可の更新責任を与えること、◇妥当な予告期間をもって雇用契約を終了できる独立性を労働者に与えること、◇現在の雇用主の同意なく転職する自由を労働者に与えること、◇雇用主の許可を得ることなく出国する自由を労働者に与えること、などを提案しています。このような内部労働市場における移民の流動性を高める方向に向けた保証人制度の改革は、より柔軟で動的な労働市場の形成、自国民の民間部門就職促進戦略成功確率の向上、労働者と企業の技能マッチングの改善、非正規移民労働者の削減、全体的な人材募集・斡旋コストの削減及びビザ取引その他の採用に係わる不正行為の低減、パスポート取り上げや賃金未払いなどの労働者の離職防止に向けた雇用主の行為の低減などの多様な利益をもたらすと見られます。このような改革は労使間の力関係の均衡回復を助け、強制労働に対する労働者の弱さを縮小させることになります。
ルバ・ジャラダットILOアラブ総局長は、本日発表された白書が示す中東諸国の移民労働者と雇用主の関係における内部労働市場の流動性水準分析のための5項目の枠組みは、移民労働者が保証人の権力乱用に弱いかも知れない分野や労働市場の流動性を高められるかも知れない分野について政府が把握する助けになると紹介しています。ハンス・バン・ド・グリントILOアラブ諸国担当上級移住専門官は、中東諸国の労働市場と経済は様々な重大な課題に直面していることを指摘した上で、本書は地域の前途有望な慣行などにも依拠して、地域の移民労働者の労働市場における流動性の増大を許す様々な説得力ある実践的な勧告を政府に提示していると紹介しています。
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