移民と技能

移民の技能習得は政府、移民労働者当人、使用者の三者に利益をもたらす

2017年07月26日

フォーラムで挨拶するインドのラジブ・プラタプ・ルディ技能開発・起業家精神大臣(右から2人目)

 今年6月にジュネーブで開かれた第106回ILO総会では多くの国で差し迫っている技能不足に直面しての高技能労働力の移住潜在力をてこ入れするために、整合性があり予測可能な労働力移動政策を策定することが、人口動勢の課題によっていかに緊急事項となっているかが議論されました。同じく5月に開かれた主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合でもまた、移民及び帰還移民の就業能力を改善する第一義的な方法は技能の開発と認定であることが特定され、ILOその他の機関に対し、技能認定制度の構築に向けた二国間、地域内、多国間での実効的な国際協力を支援するよう要請が行われました。このような中、2017年7月25~26日にニューデリーで開かれているILOの地域間専門家フォーラムは、技能習得がいかに移民受入国の使用者と送出国の労働者の両者に利益をもたらすかを示すことを目指しています。

 インド、アフガニスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、レバノン、ヨルダン、インドネシア、バーレーン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の12カ国から80人を超える政府職員や労使団体代表が出席し、民間セクターや市民社会、他の国連機関からも講師が参加している「南アジア=中東回廊における技能と移住地域間専門家フォーラム」では、新たな調査研究についての発表が行われ、技能習得が移民の賃金や労働条件に与える影響、中東から帰国した移民が自身の知識や技能を自国に移転できる程度について検討が行われています。フォーラムで見出された事項並びに参加国の幅広い経験及び専門知識から導かれた様々な見解は、国内のみならず二国間及び地域レベルでの協力を通じて進められる様々な実践的な提案を形作り、来年の国連総会で採択が目指されている「安全かつ秩序だった正規の移住に関するグローバル・コンパクト」に関する協議にも資することが期待されます。

 国境を越えた技能認定と技能習得の仕組みは、労働者にとっては就業能力の向上、賃金・労働条件の改善を、そして使用者にとってはより効率的な職務適合、訓練時間の縮小、生産性向上といった様々な利益をもたらす可能性があります。中東では複数の国が知識基盤型経済へと移行しつつあり、これらの国で予想される労働市場の再構築は、移民送出国にもこれに沿った投資を促しています。

 フォーラム初日に出席したインドのラジブ・プラタプ・ルディ技能開発・起業家精神大臣(専管)は、職業訓練と教育制度のより良い統合の必要性が高まってきたことに言及し、インドではとりわけ、見習い研修制度を通じたオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)、技能認定、データ収集の改善、出国前研修、技能証明などのイニシアチブにますます焦点を当てて技能生態系の強化に努めているものの、州間移住や国外移住の点ではまだ多くの課題が残っていることを報告しました。大臣は国家技能資格枠組みの下で7,000近い職能基準と1万5,000件の初心者レベルの技能習得ニーズが特定されていることを報告し、インドはしっかりとした労働管理情報システムの構築に取り組んでおり、その水平・垂直的な統合を目指していることを紹介しました。

 しかし、南アジア出身の移民労働者向けの技能開発がその潜在力を十分に発揮している証拠は限られ、労働者は依然として保有する資格よりも募集・斡旋手数料の支払い能力を元に選ばれる場合が多く、外国で獲得した技能が帰国後に活用されることもほとんどありません。

 デボラ・グリーンフィールドILO副事務局長は、移民労働者向けの技能認定制度の効率性を高める基本的要素は、「さらなる協働と知識共有」であるとして、回廊両端の政策策定に携わる人々による技能ニーズと技能ギャップに関する正確な評価に加え、企業の変化するニーズに関する最新の情報の必要性を説き、さらに技能認定制度の設計、実施、モニタリングには、政府機関と使用者に加え、労働者や訓練提供者、人材募集・斡旋機関を関与させることを提唱しました。

 ネパールに駐在しているスイス開発協力庁(SDC)のバルバラ・ヴェイェルマン事業計画マネジャーは、ネパールにおける訓練の影響力に光を当て、労働者の9割が訓練は自信を強めさせ、新しい知識の習得を助け、就業能力の構築や収入増、出国前費用の低減までもたらすといったように、その有用性を評価していることを報告しています。一方で、提示される給与が期待よりも低く、募集・斡旋費用も高すぎる場合が多く、訓練だけではより良い雇用やより高い賃金が保証されないという課題も指摘しています。ヴェイェルマン・マネジャーはさらに、ネパールが訓練の質の確保に向けてオンデマンド研修や試験・認証の仕組み、成果主義金融の再導入を検討中であり、体系的な追跡・無作為対照試験の実施を計画していることを明らかにしました。

 アラブ首長国連邦スネイズ技能訓練所のラージ・シン所長は自国の経験を披露して、湾岸諸国のニーズに沿った訓練制度の必要性を説き、制度の標準化、そして労働者が一般人を上回れるような等級付が必要であるとして、受入国と送出国の双方において訓練を義務づけることを提唱しました。

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 以上はILO南アジア・ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼インド国別事務所によるニューデリー発英文記者発表の抄訳です。