2018年国際エイズ会議
相変わらず残るHIV陽性者に対する差別に光を当てる調査結果を国際エイズ会議で発表
2018年07月26日
治療の進歩によってHIV(エイズウイルス)と共に生きる人々は働けるようになっているものの、隔年開催の国際エイズ会議(アムステルダム・2018年7月23~27日)の枠内で26日に発表された調査結果は、職探しや雇用の継続、昇進を阻む差別が相変わらず存在することを示しています。ILOの支援を受けてHIV陽性者国際ネットワーク(GNP+)が世界13カ国10万人以上の陽性者を対象に行った調査を元にまとめられた報告書『HIV stigma and discrimination in the world of work: Findings from the People Living with HIV Stigma Index(仕事の世界におけるHIVに基づく不名誉な取扱いと差別:HIV陽性者不名誉取扱い指数から見いだされた事実・英語)』は、次のようにHIVと職場における差別に関する最新のデータを示しています。
- 下は7%(ウガンダ)から上は61%(ホンジュラス)に至るまで、HIV陽性者の多くの割合が失業中であること
- 調査対象13カ国中10カ国で回答者の失業率は30%以上であること
- 下は11%(韓国)から上は61%(ギリシャ)まで、若者陽性者の失業率はずっと高く、東チモール(50%)、フィジー(56%)、ホンジュラス(60%)などでは50%を超えること
- 女性陽性者の就業率は男性よりも低く、無償のケア責任がその理由として挙げられていること
- 心と身体の性が一致しないトランスジェンダーの陽性者の失業率はどこの国でも高いこと
- 独立した収入源のない女性陽性者も多く、これは女性は男性ほど経済的に自立できていないことを意味すること
- HIV陽性であることを理由(部分的な理由も含む)として職を失う人は相変わらず多く、使用者や同僚による差別の結果として収入源または職を失った人の割合は回答者の13%(フィジー)から100%(東チモール)に及ぶこと。ベリーズ(86%)やギリシャ(80%)、ニカラグア(67%)、コスタリカ(53%)でもこの割合は高いこと
報告書には受けた差別に関する証言も匿名で掲載されています。ウクライナのある陽性者は次のように語っています。「私が陽性であるとの情報が上司に伝わると、部屋に呼ばれました。最初に仕事をあまりやっておらず、勤務成績が悪いと言われ、次に詳しい説明もなく、あたかも自主退職したかのように辞表を提出することを求められました」。このような理由から、陽性者の多くは雇い主や職場の同僚にさえもHIV陽性の事実を伝えたがりません。
カメルーンからの次の証言は職を得ることの困難も示しています。「任命書類を受け取りに行くと健康診断を受けるように求められました。自分が陽性であることは分かっていたのでそのことを人事の人に伝えました。それでも検査を受けるように言われ、陽性の事実が確認されると、職を得るための手続きはそれでおしまいでした。面接は通ったのに採用できないと言われたのです」。HIVに関連した差別はまた、昇進できない主な理由にもなっています。
GNP+のサシャ・ボルギナ計画部長はこの報告書が示すのは、「HIV陽性者に対する職場に関連した不名誉な取扱いや差別をなくすための道のりはまだ遠い」という事実であるとして、「医療機会と雇用機会は切り離せないほど結びついているため、職場におけるHIVに基づく不名誉な取扱いに終止符を打つことを優先事項としない限り、HIV陽性者の安寧を確保し、感染の広がりを食い止めることに向けた意味のある公約は果たせない」と指摘しています。報告書の発表会においてILOジェンダー・平等・多様性・HIV/エイズと仕事の世界部のショウナ・オルネイ部長は、今年5月に発表されたILOの刊行物『The impact of HIV and AIDS on the world of work: Global estimates (仕事の世界に対するHIVとエイズの影響:世界推計・英語)』がエイズ治療は労働者を健康で生産的に保つことができると示したことを挙げ、治療だけでは十分ではないとして、「何年にも及ぶ活動にもかかわらず、不名誉な取扱いと差別がなおも残っているのを目にするのは悲しい」と述べた上で、「職場におけるHIV陽性者に対する不名誉な取扱いと差別を減らすようもっとがんばらなくてはなりません。これらの人々にある働く権利を誰かが否定すべきではありません」と訴えました。さらに、報告書の発表が差別ゼロの目標に向けた歩みを早める助けになることへの期待を示しました。
報告書に含まれる複数の提案の中には、HIV陽性者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、生産的な完全雇用の機会を扱うILOの「HIV及びエイズ並びに労働の世界に関する勧告(第200号)」の遵守に向けた取り組みの拡大を政府及び国際機関に呼びかけるものも含まれています。第200号勧告は、あらゆる利害関係者に向けて就労に係わる人権の保護に関する有用な手引きと共に職場における不名誉な取扱いと差別を無くすために必要な措置を示しています。
以上はアムステルダム発英文記者発表の抄訳です。
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