現代の奴隷制
現代の奴隷制を栄えさせている不安定性の終結に向けて活動する国連安全保障理事会
2017年03月16日
国連安全保障理事会は2017年3月15日に第7898回会合として、紛争状況における人身取引、現代の奴隷制、強制労働、その他類似の慣行に関する公開討議を行いました。日本を含む15の理事国以外にも多数の政府やILOなど国際機関の代表も参加した討議では、防止、保護、訴追の重要性が強調されました。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は強制労働被害者の規模や加害者が得ている不当利得といったILOの推計値なども引用して、「奴隷制は過去のものではなく」、「現代の表現形態であるこの労役は、私たち全てに関わりがあるかも知れない」と訴え、「グローバル・サプライチェーン(世界規模の供給連鎖)は多くの暮らしを向上させたものの、代償を伴わなかったわけではない」として、被服や食品、スマートフォンや宝石その他の消費財も故意であるにせよなきにせよ、搾取の痕跡を残しているかも知れないことに注意を喚起しました。そして、国連の国際組織犯罪防止条約とその議定書、ILO条約、国連の人身取引撲滅グローバル行動計画などを紹介して、訴追、保護、防止に焦点を当てることを加盟国に呼びかけました。
国連の持続可能な開発目標のターゲット8.7の下、国際社会は、「強制労働の根絶、現代の奴隷制と人身売買の終結に向けた即時の効果的な措置を実施し、児童兵士の募集と使用を含む最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保し、2025年までにあらゆる形態の児童労働に終止符を打つ」ことを約しています。この目標の達成に向けて世界の主な関係者が手を結んだ地球規模のパートナーシップとして、「8.7連合(Alliance 8.7)」が誕生しましたが、複数の発言者が、強制労働、児童労働、現代の奴隷制、人身取引の撤廃に向けた活動の加速化と強化においてこの連合が演じ得る重要な役割に注意を喚起しました。
国連安全保障理事会の討議模様(英語)理事会議長国である英国のマシュー・ライクロフト大使は、労働を強制され、搾取されている数百万の人々の揺るぎないメッセージは、「取り組み不十分」というものであろうとし、「人身取引、現代の奴隷制、強制労働に向けた国連の取り組みの強化・統一」の必要性を訴えて、今年11月に出される予定のこのテーマに関する国連事務総長の報告書に対する期待を表明し、人身取引対策機関間調整グループを含む既存の体制の、より効果的な機能に焦点を当てることを提案しました。英国は2015年に現代の奴隷制の防止と訴追、そして被害者の保護に焦点を当てた同国初の法律として、現代の奴隷制法を制定することによって、この問題に関する指導的立場を世界に示しました。
英国のケビン・ハイランド反奴隷制長官は、ダーイッシュ(イスラム国)のようなテロ組織が戦いの策略として公然と奴隷制を主唱しており、少数派集団に標的を定めて奴隷市場を設けていることを紹介し、紛争によって現代の奴隷制が栄える環境が形成されていることや、法の支配の衰退が国境を越えた人身取引ネットワークが罰されずに行動できる状況を作り出していることを指摘しました。
米国のニッキ・ハーレー新国連大使は、現代の奴隷制及び強制労働に立ち向かうことは米国の外交政策の一つの要素であるだけでなく、人間の尊厳の前進に向けた取り組みであるとして、現代の奴隷制の終結を目指す、変化をもたらすようなプロジェクトに資金を拠出する新たな事業計画を設けたことを紹介し、官民双方から資金を募る予定であることを明らかにしました。
オーストラリアのミカエリア・キャッシュ女性・雇用・公務大臣は、国際社会には現代の奴隷貿易と性暴力を粉砕し、その根本原因に取り組む共同の責任があることに注意を喚起し、「国家や組織単独ではそれを成し遂げることはかなわず、個々の努力が重要ではあるものの、成功のカギを握るのは地域協力・国際協力」と強調しました。そして、脆弱な労働者の搾取の撲滅を目指して、戦略を立て、改善を図る機構として、移民労働者作業部隊を最近設けたことを紹介しました。
日本の別所浩郎特命全権大使もダーイッシュによる資金源及び人集めの仕組みとしての性的搾取と人身取引の利用を「全く許容できない」と強く糾弾し、このような忌むべき慣行に理事会が積極的に取り組むことを呼びかけました。また、避難民がますます標的にされている状況を指摘してその保護と支援提供の重要性を説き、そのような取り組みが人身取引の根本原因に対処する助けになることへの期待を示し、開発機関、人道機関、人権機関間の協力の重要性を強調しました。
ILOを代表して発表したフータン・ホマユンプール強制労働上級専門官は、移民労働者を中心とした労働者の保護に向けた国際法枠組みの強化など、強制労働に対するILOの取り組みを紹介しました。そして、「現代の奴隷制との闘いにおいては、一人一人に演じるべき役割があり、皆が団結し事に当たらない限り、苦しい戦いに直面することになる」として、強制労働、現代の奴隷制、人身取引、児童労働に対する戦いの加速化を約し、ILOもその立ち上げを促進した8.7連合の存在や、サプライチェーンに奴隷労働が浸透しないよう確保するために現在進められている「強制労働・人身取引グローバル・ビジネス・ネットワーク」企画を紹介しました。
2017年10月に開かれる国連の人身取引撲滅グローバル行動計画の実施における進展状況点検のためのハイレベル会合に向けた準備活動として、現在、国連をはじめとした世界各地で現代の奴隷制、強制労働、児童労働、人身取引の問題を扱った様々な活動が展開されています。
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