ILO新刊:欧州の中流階級

欧州の中流階級縮小に光を当てるILO新刊

2016年11月23日

 ILOが欧州委員会の任意資金協力を受けて実施しているプロジェクトの成果物としてこのたび発表された刊行物『Europe's disappearing middle class? Evidence from the world of work(消滅する欧州の中流階級? 仕事の世界からの証拠・英語)』は、欧州では所得中央値の80~120%の所得層と定義される中流階級の減少が止まらず、2004~11年の期間に2.3%縮小したことを示しています。エドワード・エルガー出版社との有料共同出版物である本書(概要)はまた、2008~11年の期間を中心とした経済・金融危機時における所得中央値の低下も示しています。しかし、中流階級の縮小が激しいドイツ(年3%減)やギリシャをはじめ、ルクセンブルクやオランダ、英国、デンマークなどでは、中流階級の衰退は危機前から見られ、これらの国ではしばしば労働者はより低い所得階層に移行しています。危機前は増加を示していた中流階級が危機の開始以来縮小を続けているスペインのように、ギリシャ、エストニア、キプロス、ポルトガルなどでは、仕事の世界に対する危機の影響によって中流階級は打撃を受けています。ほとんどの中・東欧諸国でも危機前に見られた中流階級の成長が危機によって停止しています。

 欧州連合(EU)では、中核的な中流階級が全世帯の23~40%を占めています。依然として中流階級が最も分厚いのはデンマーク(全世帯の40%)とスウェーデン(39%)であり、対して最も少ないのはラトビア(23%)とリトアニア(24%)となっています。報告書を編集したILOのダニエル・ボーン=ホワイトヘッド上級経済専門官は、例えば、スペインで見られる1980年代以降の中流階級の急成長は主に女性の大幅な労働力率上昇によって説明できるとして、「世帯内で働く成人の数が多いことと共稼ぎ世帯数の増加」を中流階級の層が厚い国の特徴に挙げ、これはまた、「1人の収入だけではもはや中流階級に留まるには不十分かもしれないことを意味する」と説いています。そして、国によっては、医師や教員のような、一般的に中流階級に分類され、典型的に女性が従事する職業がもはや中流階級に属していない可能性を指摘しています。

 仕事の世界における中流階級の衰退は、女性に対する影響の大きな、公務部門における賃金低下と就業者数の減少、ある種の労働者や職業の国外流出、仕事の質の低下、低賃金部門の成長、団体交渉の仕組みの漸進的な衰退など、様々な要素の複雑な組み合わせによって推進され、この相対的な重要性は国の状況によって異なります。逆にオランダやスウェーデン、ベルギー、フランスで見られるような安定した労使関係は中流階級の安定性を高める方向に寄与しています。

 報告書はバルト諸国、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国についてそれぞれ1章をさいて分析しています。

 ハインツ・コラーILO欧州・中央アジア総局長は、中流階級の衰退はとりわけ若者に打撃を与え、世代間所得格差につながることを指摘して、「懸念すべき」と評し、中流階級の漸進的な衰退と不平等の拡大といった傾向を止めることを目指した具体的な政策行動の必要性を説き、これは「生活水準を高めるだけでなく、持続的な経済成長を後押しするものともなろう」と結論づけています。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。