シリア難民危機
新刊:過酷な労働条件を甘受するシリア人難民のインフォーマル就労がさらなる負担となっているヨルダンの労働市場
2015年05月18日
ヨルダンで暮らすシリア人労働者はヨルダン人よりも低い賃金、過酷な労働条件を甘んじて受け入れ、一部の産業部門でヨルダン人と職を奪い合い、同国労働市場のインフォーマル性を増大させており、これは最低賃金、労働時間、職場における安全などに関する労働基準の執行に向けた圧力をヨルダン当局にかけています。このたび発表されたオスロにあるFafo応用国際研究所とILOの共同刊行物はこのように結論づけています。ヨルダン在住シリア人難民62万8,000人の4分の3を受け入れている首都アンマンと北部のイルビド、マフラク両県で行われた4,000近いヨルダン人及びシリア人世帯の調査を元にまとめられた新刊書『Impact of Syrian refugees on the Jordanian labour market(ヨルダンの労働市場に対するシリア人難民の影響・英語)』は、ヨルダンで暮らすシリア人難民の就労状況に関する理解の促進に資することを目指し、難民と受入社会とが雇用と生計手段の探求において直面している課題に取り組むための戦略を提案しています。
シリア人難民はほとんど誰も就労許可を持っていないため、就労者の99%までが労働法規制の枠外にあるインフォーマル経済で働いています。就労者の約半分を占めると見られるインフォーマル経済で働くヨルダン人労働者も多くが同じ課題に直面しているものの、報告書は一般にシリア人労働者の方が低賃金で労働時間も長いことを示しています。月収が200ヨルダン・ディナール(約3万4,000円)に満たないヨルダン人は就労者の15%であるのに対し、難民キャンプの外で働くシリア人難民の場合、44%がこのラインに達していません。月収がヨルダン国民の最低月額賃金である190ヨルダン・ディナール(約3万2,000円)を下回るヨルダン人は就労者全体の13%であるのに対し、キャンプの外で働く難民の25%、キャンプ内で働く難民の61%までが非ヨルダン国民対象の最低月額賃金である150ヨルダン・ディナール(約2万5,000円)を下回る賃金を得ています。週労働時間が60時間を上回るヨルダン人は調査対象者の14%に過ぎなかったものの、シリア人難民の場合は全体の約3割に達し、80時間超も16%に上ります。労働契約についても、一般にシリア人の契約内容は同じ産業部門で働くヨルダン人のものを下回っています。
15歳超のシリア人難民の6割が基礎教育を修了しておらず、15歳超のヨルダン人の42%が修了している中等教育の修了者はシリア人難民では15%程度に過ぎません。大半の難民が新たに創出された低技能の低賃金職に就いていますが、前からあった仕事に就いている難民もおり、職を巡る受入社会住民との競争も増しています。キャンプ外で働く難民の4割以上が建設業に従事しています。見出された主な事項の一つとして、2011年3月のシリア危機発生前に比べ、建設業と農業で働くヨルダン人労働者は3割減となっており、この二つの産業はシリア人に限らず、移民労働者を多く受け入れています。次に難民が多いのは(キャンプ外で働く難民の23%が従事)、ヨルダン人も多く働く(就労者の18%)卸売・小売業です。
児童労働に関しては、9~15歳層のシリア人少年の8%、15~18歳層の37%が経済活動に従事しています(ヨルダン人の場合は前者が1.6%、後者が17%)。
2011年に14.5%であった調査対象地域の失業率は2014年に22.1%に上昇しています(女性は約30%→40%、男性は約10→17%)。現在、キャンプの外で暮らすシリア人難民男性の約51%が労働市場に参加していますが、この57%が求職中です。一方、女性の労働力率はわずか7%に留まっています。シリアにおける紛争が解決し、難民が故郷に帰還できる兆しがなく、人道支援が枯渇し始めれば、働く必要が出てくる難民が増えるため、これはヨルダンの労働市場にとって将来的に深刻な脅威となる可能性があります。
今年3月にアンマンで開かれた協議会で国際機関や地元非政府組織(NGO)に報告書の内容が紹介された際、国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所のカレン・ホワイティング上級保護官は、「若者の失業率とシリア人児童の低就学率」を人道計画立案・対応のために緊急に検討する必要がある事項に挙げ、加えて、ヨルダンの労働法について難民の意識を高める必要性を指摘しました。
ヨルダン政府は既に、2015年ヨルダン対応計画の一環として、労働市場におけるこういった課題に取り組む協調的な取り組みを国際社会の支援を受けながら展開しています。しかしながら、報告書は、規則に従い、特定の産業部門における正式な就労許可をシリア人難民に与えることを提案し、この問題に取り組まない限り、無規制のインフォーマルな就労が続き、ヨルダン人にもシリア人にも悪影響を与えるであろうとし、1)難民が集中している地域における即時の緊急雇用などの雇用の創出、2)労働市場の管理や労働法の遵守の強化を通じて、拡大するインフォーマル就労に焦点を当てた仕事の質の改善、3)人道支援の規模縮小に伴う多数の難民の労働力化に対応した不測事態対応計画の立案の三つの分野における具体的な行動を提案しています。
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