ILO/ECLAC定期刊行物新刊

新刊『中南米・カリブの雇用情勢』:労働情勢の悪化と都市失業増を報告

2017年05月11日

 2017年5月11日に発表された、ILOと国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の年2回発行の共同定期刊行物『Employment situation in Latin America and the Caribbean(中南米・カリブの雇用情勢・英語)』最新号(2017年5月発行第16号)は、2年連続の国内総生産(GDP)縮小で示される経済危機深刻化を理由として、2016年の中南米・カリブ地域の都市部平均失業率が前年より1.6ポイント増というこの20年間で最も高い上昇率を示して8.9%に達したことを示しています。2016年の中南米・カリブ地域の労働市場の状況を分析した本書は、2017年にも給与労働の創出の弱さを中心とした労働市況の悪さに対抗するには予想される経済成長が1.1%と弱く、都市部平均失業率はさらに0.3ポイント上昇し、9.2%に達すると予想しています。

 2015年には域内8カ国で見られた都市部失業率の上昇が2016年には13カ国で見られ、低下または横ばいが8カ国になっています。また、不安定な低収入を特徴とする自営業者の増加は、雇用成長の鈍化と賃金上昇率の低下にも反映されているように、雇用の平均的な質の悪化を意味しています。

 この地域を悩ませている貧困と深刻な不平等の削減速度が既に低下してきていることを指摘する報告書は、この問題を改善するマスターキーは雇用であることに鑑みると、「このような労働情勢は深刻な懸念理由になる」として、持続可能な開発目標8に掲げられているところの「持続可能で包摂的かつ持続的な経済成長、生産的な完全雇用及びすべての人々のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進」に向けた取り組みの倍加を呼びかけています。

 本報告書は労働市場の状況に加え、域内労働市場への移民流入の概要を記し、労働状況の悪化はとりわけ移民や教育水準の低い若者、女性などを含む脆弱な層に影響を与える傾向があることを指摘しています。2010年前後に域内諸国が送り出した移民の数は総人口の4.8%に相当する2,850万人に及ぶのに対し、受入人数は人口の1.3%に相当する760万人超に留まっています。報告書は移民受入の規模と特徴に基づいて域内諸国を分類し、移民の動きが最近激しい場所では移民の平均収入は自国民よりも低く、労働の非公式(インフォーマル)性が高く、女性を中心に社会保障の適用率が大幅に低いことを示しています。中国及びインドを中心にアジアからの移民が多いブラジル、メキシコ、パナマを除き、ほとんど全ての調査対象国で労働力に参加する移民の8割以上が他の中南米・カリブ諸国の出身者となっています。

 この調査研究から得られた結果は、性差の視点を組み込んだ労働者統合の仕組みを強化することの重要性を強調しています。報告書は生産的な仕事や働きがいのある人間らしい雇用への移民労働者の統合を育むために必要な政策や国際開発課題の分野で最近達成されたこの分野の進展も検討しています。

中南米・カリブの失業者は2,600万人超:新たな成長の原動力が必要と説くサラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長

ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長

 ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO中南米・カリブ総局長は、ILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に2017年5月24日付で投稿した記事で、本書のデータや同総局発行の年次刊行物『Panorama laboral 2016 de América Latina y el Caribe(中南米・カリブの労働概観2016年版・西語)』が都市と農村の両方を足した2017年の合計失業率が前年を0.3ポイント以上上回る8.4%に達すると予想していることを引用し、2017年の中南米・カリブの労働市場は新たな失業増と労働条件の悪化を特徴とすると記しています。

 この地域の2017年の失業者数は2,600万人を超えると見られますが、若者の状況はさらにひどく、失業者はほぼ5人に1人に達すると予想されます。しかし、失業は問題の一端に過ぎず、就業者に占める賃金労働者比率の低下と個人事業主の増加は、劣悪な労働条件や低収入、不安定性、保護や権利の欠如を一般的な特徴とする非公式(インフォーマル)就業者の増加を意味し、全体の47%近い1億3,400万人ほどがこのような低生産性、貧困、不平等と密接に関連した就業状態にあると見られます。さらに、生活水準の向上が期待できない中流階級の欲求不満に加え、より低い収入や権利を受け入れるのを余儀なくされたり、社会給付を伴わないといった新たなフリーランス職の登場を含む新しい職業・生産形態が労働市場の混乱を引き起こしているとの議論など、域内諸国は様々な課題に直面しています。

 近い将来の対策としては、低成長が雇用の質や量に与えるマイナス効果を緩和するために労働市場に焦点を当てた政策や戦略を策定する必要があると思われますが、このパッとしない成長とそれに対応する雇用危機から導かれるべき教訓は、古くから存在する構造的な課題に新たな政策で取り組む必要性です。私たちは20世紀に解決すべきであった多くの課題や問題にまだ直面しつつ、急激な技術改革、人口高齢化、気候変動、なかなか解消されない不平等、人の移動の増加、グローバル化の中での新たな生産モデルといった、21世紀の課題に向き合わなくてはならないのです。このような複雑な状況下では、政府、使用者、労働者、そして社会全体が、伝統的な会話のトーンを変えて、競争力、生産性、人材の育成を許すような、官民連合と社会対話のための強固な制度を基礎とする新世代の生産的な開発政策に向かう道を開く必要があります。この分野における力強く革新的な集団行動なしに、中南米・カリブ地域はより多くのより良い仕事の創出を伴う持続的かつ持続可能で包摂的な経済成長の真のエンジンに点火することはできないでしょう。

 このように説いた上で、サラサール=シリナチス総局長は、生産的な開発、革新、人材に係わる大きな努力なしに、近年の労働市場不振から根本的に脱することはできない、つまり、より良い仕事の未来を達成するには生産及び生産性におけるより良い未来が必要と結論づけています。

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 以上は次の2点の英文広報資料の抄訳です。

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