難民危機
支援国・機関はシリア難民受入国による危機対応への手助けを
2016年01月29日
| 約8万人の難民が暮らすザータリ難民キャンプでシリアからの難民と会い、難民の直面する幾つかの課題について話し合うガイ・ライダーILO事務局長 © ILO/Awad Tawel |
シリアで内戦が始まってから約5年が経過し、ヨルダンで暮らすシリア難民は登録者数だけでも63万3,000人を上回り、未登録者を含むと100万人を超えると見られます。難民の存在は受入社会のインフォーマル経済を拡大し、賃金の引き下げを招き、公共サービスの利用を妨げ、児童労働を増加させています。
2月4日にロンドンで開かれるシリア・ドナー会合に先立つ1月28日、ガイ・ライダーILO事務局長は、大量の難民の流入が労働市場に与えている影響を現地で確かめ、難民と地元受入社会の双方にとっての雇用選択肢について政府上級幹部職員や労使代表と話し合うためににヨルダンを初めて公式に訪れました。限られた1日の滞在日程の中で、事務局長はアブドッラーII世国王、アブドッラー・アル=ヌスール首相、国会議員、労使代表、そしてヨルダンの危機対応を支援している様々な国連機関と会合を持ち、シリアからの難民流入の影響が最も大きい地区の一つである同国北部マフラク県にあるザータリ難民キャンプを訪れて難民家族と直接対話したほか、地元の人々からも意見を聴取しました。
| アブドッラーII世国王と会談するヨルダンを初公式訪問中のガイ・ライダーILO事務局長 © Royal Hashemite Court |
日程を終えて同日開かれた記者会見にニダル・カタミネ労働大臣と共に臨んだライダー事務局長は、「難民を受け入れているシリアの近隣諸国が難民危機によって提示された経済及び社会に対する課題に対応するのを手助けすることは、第一義的に国際社会の責任事項」と説き、難民のみならず重圧にあえいでいる受入社会にとっての仕事もシリアに対する国際援助努力の中心事項になってきたことを説明し、「ヨルダン政府その他の国々が難民対応の課題により良く対応できるようにし、同時にシリアからの難民に生計を得る手段を見つける可能性を提供するような支援、援助、資金・資源、政策助言の提供」を国際社会側の主な課題に位置づけました。また、援助、仕事、開発支援を難民に提供する義務を、受入国の労働市場を効果的に管理する必要性と両立させることが必要と訴えました。さらに、難民の気持ちとして、自分たちの暮らしが凍結されているように感じていることを紹介した上で、人間として当然に理解できることとして労働市場への参加に関心があるとしつつも、それがヨルダンの労働者の労働市場における展望を脅かしたり、ヨルダンの労働者に置き換わるような状況であってはならないことも承知していると説明しました。
カタミネ大臣は難民の流入があらゆる分野で基盤構造に深刻な重圧を課していること、そしてロンドンの会合に向けてヨルダン経済に対する支援を求めるメッセージを発信する必要があることなどに鑑み、事務局長の今回の訪問は「極めて重要」と評価しました。
ILOは既にヨルダンでシリア難民の働く権利を擁護する難民危機対応活動を実施しており、◇雇用及び生計を得る機会へのアクセス円滑化を目指した受入社会の強靱性構築、◇児童労働に重点を置いた、許容できない労働形態の撲滅に向けた地元社会・地域・全国レベルの調整メカニズムと制度機構能力の強化、◇ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の諸原則に埋め込まれた、雇用を豊かに生む対応を確保する国家政策の策定支援といった活動を展開しています。これを補足するものとして今回、基幹経済部門に目を向けて新たに探求しているのは、同部門の労働力不足が解消され、難民受入地元社会に利益がもたらされ、ヨルダンの経済全体に寄与するような形でシリア難民を労働市場に組み込む実際的な措置を見出すことで、難民がキャンプ外に市場を発掘し、ヨルダンの企業所有者がキャンプ内における活動範囲を拡大できるよう難民と受入社会との合弁事業を提案しています。また、道路や流域などの農村基盤構造の改善に向けて難民とヨルダン国民双方により多くの即時の仕事が創出されるよう労働集約型事業の拡充を提案しています。このような活動はヨルダンの使用者に必要な技能を競合的な価格で入手することを可能にし、難民と受入国社会の間の求職競争や緊張を緩和することによって社会の安定を育み、難民に将来性ある解決策としての生計手段を提供することになると期待されます。
ライダーILO事務局長のヨルダン訪問模様(英語/アラビア語・字幕付)ロンドンの会合では、シリア内における人道主義的な取り組みだけでなく、難民と地元受入住民の双方に対するより良い雇用機会につながる投資の形でシリア近隣諸国に対する支援を増加させるための資金の募集も行われます。
* * *