SCORE

中小企業の生産性を最大1.5倍伸ばすILOの事業計画SCOREが第3期に突入

2017年12月05日

 実務訓練と工場内での相談対応を通じて、中小企業の生産性向上と従業員の労働条件改善という労使双方に利益をもたらす状況の達成を支援する事業計画として、スイス経済省経済事務局(SECO)とノルウェー開発協力庁(NORAD)の任意資金協力を得て2009年に開始されたILOの「競争力と責任ある企業を支える(SCORE)計画」が2021年までの財源を確保して2017年11月から第3期に突入しました。この発表は2017年12月4日にバーゼルで開かれた外国貿易協会(FTA)スイスとスイス・グローバル・コンパクトによる「持続可能な生産とサプライチェーン(供給網)」に関するイベントの中で行われました。

 ILOはSCORE第1期及び第2期には、SCORE訓練方法論を企業開発のための国内戦略に組み込むことを目指して、アフリカ、アジア、中南米の新興国の政府機関、訓練提供機関、産業団体や労働組合による企業に対するSCORE研修の提供を支援してきました。第3期の重点は、多国籍企業や主導的仕入れ業者、ブランド連合と革新的な連携関係を育み、供給業者の開発戦略にSCORE研修が組み込まれるよう奨励することに置かれます。これまでにザラ・ブランドを擁するスペインのアパレルメーカーであるインディテックス、ドイツのスポーツ用品メーカーであるアディダス、英国に本部を置く倫理的な貿易を推進するキャンペーンであるエシカル・トレーディング・イニシアチブ(ETI)と実施したパイロット計画は成功裏に進められ、好結果が達成されています。ILOの最終的な目標はSCORE研修が独自に提供されるよう訓練提供機関の能力構築を図ることです。

 SCORE研修は、職場内協力、品質管理、クリーン生産、人材管理、労働安全衛生の五つのモジュールで構成され、利益共有に結びつく協力的な労働関係の育成に焦点が当てられています。モジュール毎に、管理職と労働者を対象とした2日間の座学を受けてもらった後、産業専門家に現場で相談しつつ、その助けを借りながら、研修内容を職場で実践するようになっています。

 第1、第2期に提供されたSCORE研修の受益者は、世界15カ国の企業1,400社以上の延べ従業員数30万人以上に及び、SCORE研修モジュールを一つ以上取り入れた企業では、生産性が最大1.5倍に伸び、不良品は64%減、廃棄物48%減、労働関連災害29%減、欠勤率22%減といった企業改善が達成されています。製造業及びサービス業における最善の国際的な慣行を表すSCORE研修は、中小企業のグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)への参加を手助けしています。職場の状況と生産性の同時改善を通じて、この研修はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を支持する企業の論拠を示すものとなっています。

 SECOのモニカ・ルビオロ貿易促進部長は、SCORE計画について、「良い労働条件のビジネス的根拠、つまり、持続可能なサプライチェーンは労働者、供給業者、仕入れ業者、社会といったすべての人に利益をもたらすことを実務的に示すもの」と評価し、新たな段階に歩を進めることへの期待を表明しています。ETIに参加する供給業者の一つである中国の特変電工デヤン・ケーブル社のシャン・ルンシェン保安本部長は、「SCORE研修は社員の所有者意識と達成感を高めさせ、企業資源のより経済的な構成を助け、企業の競争力、実効性、操業管理機能を持続可能な形で改善した」と報告しています。

◎中小企業における労働条件改善に向けた協同の取り組みがいかに生産性を高められるかを示す中国における経験

ETI東南アジア事務所のガオ・ユン代表とILO・SCORE計画のエルキン主任技術顧問(左から)

 規制を受けていないか長い労働時間、法に従っていない賃金率や給付といったように、中小企業は国内労働法の遵守レベルが低く、労使関係は緊張的で、労働者の健康保護も十分でない傾向があり、これは生産性の低さにつながっている可能性があります。

 良好な職場慣行と企業の好結果との間には、例えば、従業員の定着率の向上、収益性の改善、顧客満足度の上昇といったような、正の関係があることを私たちは知っています。ILOのSCORE計画は、これを訓練で達成できることを明確に示しています。

 国内産業生産高の6割を占める中小企業が8割近い雇用の受け皿となっている中国にSCORE計画が初めて導入されたのは2009年のことです。最初は機械、自動車部品、被服といった製造業などを対象に、中国企業連合会(CEC)と協力し、大連、重慶、成都、上海の4都市で活動を始めました。

 2017年3月、ILOはSCORE計画の下、ETI、そして、企業、労働組合、世界中で労働者の権利の尊重を促進している非政府組織(NGO)の連合体と連携して、広州市、広東省、上海市で生産性と労働条件の改善に向けた新たなプロジェクトを開始しました。今度のプロジェクトは中小企業ネットワークよりもむしろ仕入れ業者を対象とし、倫理的な生産に向けた上からの道を設定しました。この共同プロジェクトには、衣類、スポーツ用品、靴、ハンドバックなど様々な産業に代表される、ボーデン、インディテックス、マトリックス、マザーケア、ニュールック、オルセー、レガッタ、ホワイトスタッフといったETIのメンバーが参加し、中国における供給業者向けのSCORE研修の財源を供給しています。

 SCORE研修は、企業業績向上を目指すイニシアチブを支えるよう労働者を密接に関与させ、経営陣との協力体制を構築することの重要性を強調しています。また、良い慣行が研修後も続くよう確保するために、持続可能な管理システムの確立に重点を置いています。究極的な受益者は雇用創出潜在力が高くともディーセント・ワークが相当に不足している場合が多い中小企業です。協力関係を育むことによってSCORE研修は貧困削減のみならず、経済発展・社会開発にも貢献するといった双方が受益する状況を形成する助けになっています。

 新しいプロジェクトが始まってからまだ6カ月しか経っていませんが、参加者からは既に肯定的なフィードバックが届いています。例えば、ある人事マネジャーは、以前は工場の労働者と監督者が互いに分かり合えず、改善に向けて協力する意思がなかったものの、SCORE研修によって労働者の参加が奨励され、研修からわずか1カ月後に既に作業場に変化が見られ、大きな改善が達成されたことを報告し、「言われたことを実行していただけの労働者が能動的に動くようになった」と評価しています。

 このILOとETIのイニシアチブには、ドイツ経済協力開発省の事業計画の一つであり、ドイツのみならず欧州の企業が事業慣行と開発政策目標を組み合わせた長期事業を行うのを支援するdeveloPPP.deからも資金拠出が行われています。

 以上は次の2点の英文広報資料の抄訳です。