環境・社会政策
世界銀行の環境・社会政策についてILOが声明を発表
2016年08月08日
2016年8月4日に世界銀行の理事会で採択された「環境・社会フレームワーク(ESF)」改訂版は、世界銀行が今後資金を拠出する投資プロジェクトに適用される保護(セーフガード)政策について定めています。ILOを含む世界中の利害関係者が参加した3年半に及ぶ熱心な協議プロセスを経てまとめられたこの文書に関し、ILOは8月8日に要旨次のような声明を出し、労働者を保護する労働基準が含まれたことを大きな前進として歓迎する一方で、若干の失望と懸念を表明しました。その上で、プロジェクト参加者に具体的で意味のある手引きを提供することの重要性を強調し、借入国の行動を導くことになる、ESF中の「労働者及び労働条件に関する環境・社会基準2(ESS2)」実行のための指針策定プロセスに参加する意欲を表明しました。
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世界銀行の出資国、借入国、利害関係者間の多様な見解における共通の地歩の発見が求められたフレームワークの協議過程において、ILOは借入国の国際的な義務との整合性が確保されるよう、労働安全衛生など主要な分野において労働者の権利に関して助言を提供してきましたが、フレームワーク中でILOの中核的労働条約に対する直接的な言及を避けようという世界銀行の決定には当初から懸念を示してきました。「労働における基本的原則及び権利に関する1998年ILO宣言」が掲げるこれらの条約は、他の多国間銀行におけるリスク管理の枠組みや、国連及び数多くの貿易協定における国際的な統治の仕組みの重要なベンチマークになっており、ほぼ全世界的に受容されていることから、職場における公正待遇に関する世界的に受容された基本線、そして労働と開発の問題に取り組む際の最低限の出発点と化しています。フレームワークが国際的に認められた基本的な原則と権利に言及することを求める私たちの呼びかけは、ILO加盟国政労使、市民団体、他の国連機関など、他の多くの組織に支持されています。この条約をフレームワークに含むことによって借入国の行動についての適切な期待値が定められ、世界銀行による新しいセーフガードの現場における実施を容易にするのみならず、この実施に関するILOと世界銀行の将来的な協働関係が円滑化されるとILOでは考えています。
ILOでは環境・社会基準2ができるだけILOの基準に沿ったものとなるようその確保に努め、実際、その目的や適用範囲、労働者保護、労働条件、労働安全衛生の点で当初原案から第二次案に向けて非常に大きな前進が見られました。したがって、最終的な採択文書がプロジェクトに係わるすべての労働者へのこの適用と一貫した保護を確保する上で残されていた溝に対処していないだけでなく、幾つかの重要な労働者保護を大幅に弱める形で主要な規定が変更されたことに失望を感じ得ません。とりわけ、「結社の自由及び団体交渉の原則支持」の目標に「国内法に従った形で」の制限が付されたことは、ILOの加盟国全187カ国が従っている普遍的な原則を切り下げ、このような目標を盛り込んだ意図そのものが危うくされかねません。1998年のILO宣言ではあらゆる権利・原則が等しく重要とされ、すべてのILO加盟国に適用するものとされています。ILOと世界銀行の加盟国はほとんど重なっているため、これは加盟国による基本的な権利及び原則の整合的な適用を困難にする可能性があります。環境・社会基準2には、このような制限が付されている目標は他に見当たりません。これはまた、例えば、労働者の団体加入権、団体交渉権、自らの権利を守る権利についての規定の解釈を困難にするといったように、環境・社会基準2の他の規定にも悪影響を与えることになります。
世界銀行のプロジェクトに携わる一次供給業者の労働者について強制労働・児童労働のリスクを特定し、安全面に係わる重大な問題を緩和する責任が世界銀行及び借入国から供給業者に移行されたことも基準の遵守や監督機能を弱める結果を招きかねません。
国際金融公社(IFC)との共同事業であるベターワーク(より良い仕事)計画をはじめ、ILOと世界銀行グループは労働基準の尊重が開発面での成果を高め、極度の貧困の終焉と繁栄の分かち合いの促進という世界銀行の二重の目標に寄与することを明確に示す共同事業を多数手がけてきました。ウズベキスタンの綿花収穫における児童労働・強制労働のモニタリングに係わる協力もまた、世界銀行のプロジェクトの枠内で国の労働基準実施能力の構築を支援するために協力し合う方法に関する有用なモデルを提供しています。ILOは世界銀行とのパートナーシップと協力関係の拡充を高く評価しており、この協同活動を続けたいとの精神から、世界銀行がセーフガードの開発潜在力を最大化し、借入国に対する今後の手引き、手続き、能力構築が持続可能な開発を推進し、各国の持続可能な開発目標達成に寄与するというフレームワークの意図の強化を希望するものであります。とりわけ、1)IFCの労働者及び労働条件に関するパフォーマンス基準2のように、就労における基本的な原則及び権利のすべての労働者への適用に特に注意を払いつつ、環境・社会基準の要求事項がILOや国連のものを含む国際条約その他の文書に反映されている国際的に認められたベンチマークに導かれていることの認識、2)借入国自体の国内政策、法制度の枠組みの使用が実際に環境・社会基準と同等以上の成果を達成させるであろう場合に、フレームワークが不注意に保護を引き下げないことの確保、3)ILOが権限を有する分野や開発に関連したILOの協力に影響する手引きその他の補足的な資料を作成するに当たり、ILOと協働すること、などを求めたいと思います。ILOはこういった点における協同活動の継続を期待するものですが、この点で共通の目的の追求におけるセーフガードの実行に関するものを含み、既に素晴らしいものであるところの両機関のパートナーシップをさらに強めたいとのジム・ヨン・キム世界銀行総裁の公約はガイ・ライダーILO事務局長と共有されています。
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以上は2016年8月8日付英文声明の抄訳です。