ILOとレバノン

ライダーILO事務局長がレバノンを初公式訪問

<p> 2017年4月に就任後初めてレバノンを公式訪問したガイ・ライダーILO事務局長は、シリア難民受入社会を視察し、仕事の未来政労使アラブ会合に出席し、アウン大統領と初めて会談しました。</p>

2017年04月03日

ライダーILO事務局長とレバノンのアウン大統領(右)

 ガイ・ライダーILO事務局長は2017年4月3日にレバノンの首都ベイルートで開かれた「仕事の未来政労使アラブ会合」出席のため、就任後初めてレバノンを公式訪問し、会合後にミシェル・アウン大統領と会談しました。

 ルバ・ジャラダトILOアラブ総局長及びヤッセル・ハッサンILOアフリカ・アラブ諸国事務局長上級顧問を伴ってベイルート郊外の大統領官邸を表敬訪問したライダー事務局長は、3日間の滞在期間中にベッカー地方を訪れてシリア難民や難民受入社会と難民危機に照らし合わせた雇用・生活条件に係わる問題を話し合ったことやモハンマド・カッバラ労働大臣及び労働組合・使用者団体の代表と会合を持ったことを大統領に報告しました。アウン大統領は国際社会による支援の必要性を強調し、難民危機によってもたらされた課題への対応を手助けしてくれるよう訴えました。

 シリアで紛争が始まってから6年以上が経ち、レバノンに流入した難民の数は今や同国総人口の約4分の1に膨れ上がっています。公式登録難民100万人を含み、150万人近い難民の多くが暮らすベッカー高原を訪れたライダー事務局長は、地元村落の首長と会談し、テント村や最近開始された雇用集約型投資計画の現場、反児童労働コミュニティーセンターを視察しました。ジャラダト・アラブ総局長をはじめとした複数のILO職員を伴って現地入りした事務局長は、シリア難民危機への国際的な対応に際しては、難民だけでなく、既に高い失業率やしばしば困難な労働市場情勢に苦しんでいる地元受入社会のニーズにも対処すべきことを強調し、それこそが「介入成功のカギ」と訴えました。

レバノンのベッカー高原で暮らすシリア難民と地元受入社会の現状を視察したライダーILO事務局長(英語、アラビア語字幕付)

 地元の村長らとの会合において、ライダー事務局長は「明らかに皆さんの制御が及ばない状況や事象によって形成された現実」としてのレバノン社会の負担、そして既に飽和状態にあった労働市場にかけられたさらなる重圧に対するILOの理解を表明しました。会合後のコメントで、事務局長は、「混じり合う二つの感情」、つまり、難民を受け入れようとの開かれた歓待の気持ちと同時に、地元に流入する人の数や困難な状況のために高まりつつある緊張の存在を指摘し、国際社会からのさらなる支援の必要性に注意を喚起しました。

 非公式に設けられた近隣のテント村を訪れたライダー事務局長は、過去に訪問した域内の他の難民キャンプと比べてもベッカー地方の居住状態は特に悲惨な状態にあり、人々の状況が非常に厳しいことが見て取れるとの感想を述べ、夫と離れて一人で子育てしている多くの女性が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の食糧支援を主たる収入源として暮らしており、散発的な就労機会はあるものの多くはなく、しかもあまり人がやりたがらないような労働条件である状況を報告し、「居住地内部、そして人々の暮らしている状況を大きく改善する必要がある」と指摘しました。

 域内で最も人口密度が高いにもかかわらず、絶対数の点でも限られた国土面積と少ない人口の点でもアラブ地域最大のシリア難民受入国と化したレバノンの、既に飽和状態となっている労働市場、働きがいのある人間らしい仕事の限られた創出、労働基準の悪化は、シリア難民が生き抜くための仕事を探す中、危機の打撃を特に強く受けています。事務局長は危機がレバノンその他の難民受入国の政治、社会、経済の安定性に与える影響の緩和を助けるため、国際社会がさらなる支援を提供する必要性を強く訴え、地元自治体や国際的な援助国・機関、社会的パートナー、その他の国連機関と共に、全ての人に仕事を創出し、危機がもたらした圧力を緩和する支援の提供に向けたILOの引き続きの公約を強調しました。

 ILOは難民と受入社会の両方にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を推進することによってレバノンにおける難民危機に対応しています。最近開始されたILOの雇用集約型投資計画は今回の視察地となった公園建設予定地を含む複数の場所を選定し、レバノン人とシリア人の両方の労働者を正式に採用して、大いに必要とされている基盤構造を構築するプロジェクトです。ドイツ開発銀行から資金拠出を受けているこの事業は、国連開発計画(UNDP)と共同で実施されます。同種のILOプロジェクトはヨルダンでも進行中であり、今後2年間で両国のプロジェクトを合わせて延べ60万人弱のシリア人難民と受入社会住民に日雇い労働の機会が提供される予定です。

 シリア難民危機勃発後、貧困や大人のための仕事の不足、難民に働く権利がないことから、最も搾取的で最悪の形態のものを含み、児童労働が急増しています。ライダー事務局長は、サードナエルの町にあるILOが支援する反児童労働コミュニティーセンターも訪れ、子どもたちと交流しました。この種のものとしては初めてレバノンに設立された三つのセンターの一つであるこのセンターは、児童労働から引き離された子ども及び児童労働に従事する危険性が高い子どもの社会復帰に向けて一連のサービスを提供しています。

 ILOアラブ総局は2017~20年のレバノン危機対応計画の枠内で労働省に技術支援を提供する一方で、シリア難民と受入社会の双方を対象に生計手段や雇用創出、児童労働対策に重点を置いた様々な事業計画を通じてシリア難民危機対応戦略を実行しています。

* * *

 以上はILOアラブ総局による次の2点の英文記者発表の抄訳です。